トランプ大統領が2025年1月20日に就任し、「アメリカ合衆国連邦政府の機関やオフィスに深く根付いた、不人気でインフレを起こし、違法で過激な慣行を撤廃する」として、バイデン政権時の大統領令および覚書78件を撤回すると発表しました。
その一つに2023年10月30日に発令された「安全でセキュアかつ信頼できる人工知能の開発と利用に関する大統領令14110号」があります。
この大統領令は、以前の政権が発令したものであり、今回の新しい大統領令によって取り消される対象となっています。
今回の大統領令の主な目的は、「連邦政府に常識を取り戻し、アメリカ国民の潜在能力を解き放つことである」としています。
以前の大統領令によるAI規制の内容
2023年10月30日に、バイデン政権は「安全でセキュアかつ信頼できる人工知能の開発と利用に関する大統領令14110号」を発令しました。
この大統領令は、AIのメリットを把握しつつ、そのリスクを管理することを目的としており、連邦政府機関と民間企業を含む様々なセクターを対象としていました。
主な内容
- AI技術の安全・安心の確保
- デュアルユース基盤モデルに関する報告義務
- IaaS業者による外国ユーザー報告義務
- 重要インフラのサイバーセキュリティ強化
- AIによる生成コンテンツのウォーターマーク検討
- AIシステムの安全性、セキュリティなどを確保する標準制定
- AIを使用して危険な生物学的物質を製造するリスクから保護するための新しい基準の開発
- AIのアウトプットに関する認証基準とベストプラクティスの確立
- サイバーセキュリティの向上を促進するAIツールの開発
などです。
AI規制撤廃のきっかけとなった内容と今後
トランプ大統領のこの決定の背景には、AI分野でのイノベーションを促進し、規制による技術革新の妨げを取り除く意図があります。
2024年の共和党の政策綱領では、バイデン氏の大統領令がAIのイノベーションを阻害するとして、その撤廃を公約していました。
参考:ロイター通信
また、米国商工会議所も、企業への規制緩和とAIの力を活用したイノベーション推進を新政権に求めており、産業界からも規制緩和への期待が高まっていました。
トランプ大統領にはイーロン・マスク氏を始め、AI推進を進める多くの企業や起業家からの献金も多いため、AIのイノベーションを進めていきつつ、米国が存在感を示せるような新たな枠組みが作られる可能性があります。