AIでエンジニアの仕事はなくなる?AI時代に消えないエンジニアの条件

AI副業

生成AIの技術は、年々進化し続けています。従来と比べ、テキストや画像・動画だけではなく、プログラミングコードも実用的かつ正確な内容を生成できるようになってきました。そこで気になるのが、エンジニアはプログラマ―の職業的な価値の変化です。

今回は、AIに「エンジニアやプログラマーの仕事が奪われる」といわれる理由や、AI時代でもエンジニアが求められる理由などをご紹介します。エンジニアがAIと協働する際のポイントも紹介していきますので、ぜひ参考にしてくださいね。

監修者プロフィール
森下浩志
日本最大級のAI情報プラットフォーム「romptn ai」編集長。著書に「0からはじめるStable Diffusion」「0からはじめるStable Diffusion モデル・拡張機能集編」など、AmazonベストセラーのAI関連書籍を多数執筆。AIにおける情報の非対称性を解消するための社内研修や出張講義も行う。

AIに「エンジニアやプログラマーの仕事が奪われる」といわれる理由

ここでは、エンジニア・プログラマーの仕事がAIに奪われるといわれる理由をご紹介します。さまざまな職業や仕事が、AIに代わられつつある現代。IT職の代表格ともいえるエンジニア・プログラマーにとっても、AIの躍進は他人事ではありません。

データの入力や操作はAIの得意分野だから

エンジニア・プログラマーの仕事がAIに奪われかねない理由として、AIの性能の特徴が挙げられます。そもそもデータの入力や操作は、AIの得意領域。クライアントとの要件調整や構造設計をするエンジニアはともかくとして、プログラマーの仕事は少しずつAIに奪われるかもしれません。

とくに「ただコードを書くだけ」が仕事になっているプログラマーは要注意。テストコードの作成やログの解析、バグの修正などの一部の作業は、すでにAIが担当しているケースもあります。最近では自然言語からコードを生成する技術も上がったため、人間に求められるプログラマーのスキルは年々増加しています。

エンジニアの仕事自体がAIに代わられやすいから

エンジニアもプログラマーと同様に、うかうかしてはいられません。エンジニアの仕事のなかには、AIに奪われやすい内容も存在しています。たとえば「業務効率化ができるツールの作成」や「バグを発見できるシステムの作成」は、すでにAIだけで代用可能です。

ツールやシステムを一度作ってしまえば、仕様の改善すらもAI任せに。今まで「作る」「維持する」「守る」はエンジニアの業務でしたが、作業の大半をAIに任せられる時代もそう遠くはありません。より高性能なAIが登場すれば、運用はもちろん保守の業務ですら、スピーディーな原因特定と解決が期待できます。

AIを導入したほうが人的コストが少ないから

エンジニア・プログラマーの仕事がAIに奪われかねない理由としては、コスト面の問題もあります。AIにも導入費用や運用費用はもちろん必要ですが、一度業務にフィックスさえしてしまえば、人間よりも遙かにコスパ良く成果を挙げてくれます。

AIに置き換えられれば、人件費なし、ヒューマンエラーなし、24時間対応可能、もちろん上司への反抗やストライキもなし。さらに作業スピードは人間よりも何倍も速いのですから、エンジニア・プログラマーの仕事が奪われるのはある意味自然なことなのかもしれません。

知識をアップデートし続ける必要があるから

エンジニア・プログラマーを含むIT職は、知識のアップデートの必要性が高い仕事です。最新の知識やツールが、数カ月後には使えなくなっていることも珍しくありません。業務にかかわるスキルだけではなく、トレンドのキャッチアップや学習時間などが求められます。

人間だと学び直しにコストがかかりますが、AIであれば最新データのインストールやOSのアップデートをするだけ。現在よりもAI機能自体のアップデートが簡単になれば、人間の立場はますます危うくなるでしょう。そもそもアップデートについていけないエンジニアや、知的好奇心の低いエンジニアなどは、すぐに仕事を失ってしまうかもしれません。

AI時代でもエンジニアが必要な理由

ここでは、AI時代においてもエンジニアが必要な理由をご紹介します。AIが業務を請け負う機会も増えた昨今ですが、今すぐにエンジニアが不要になるわけではありません。人間のエンジニアならではの強みに焦点を当て、今後の働き方につなげていきましょう。

人間とAIの「橋渡し役」だから

そもそもエンジニアは、コードの作成だけに没頭する仕事ではありません。クライアントのニーズを引き出してサービスを提案したり、チーム全体の業務を調整したりなどもエンジニアの仕事。また、コミュニケーションによって得た情報を「システムの仕様」に落とし込む役割も欠かせません。

AIはまだ、人間の曖昧な意図や、業界特有の事情を完全に理解することは困難です。クライアントやチームの意見を聞きつつ「言葉を設計や仕様に翻訳する力」は、人間ならではの重要な能力といえるでしょう。

システム全体を俯瞰して設計する力を持つから

エンジニアは業務のなかで、「どんな技術を組み合わせるか」「どんな構成にすれば安全か・効率的か」といった全体の構成を考えます。最適な答えを出すためには、分野横断的な思考が必要です。

複数の分野の知識を組み合わせる思考や、複雑で論理的な嗜好は、AIの不得意分野。AIは1つの部品(コードや文章など)は作れても、全体を見据えた最適な設計や調整はまだ苦手です。とくに複数のシステムが絡む大規模な開発や、企業間の連携においては、人間ならではの判断力が不可欠といえるでしょう。

関係者との「調整力」が求められるから

コミュニケーション能力や洞察力も、人間のエンジニア特有の強みといえます。エンジニアの仕事では、クライアント・営業・開発・運用など、さまざまな関係者の立場を考えたうえで、仕様や優先度などを決定します。

予算や日程のような定量的な要素であれば、AIにも整理できるかもしれません。しかし人間関係やストレス耐性、感情や組織の事情まで考慮した判断は、AIには不可能といえるでしょう。さまざまな非認知能力を集結させた「調整力」も、エンジニアの価値を高めています。

システムエンジニアvsプログラマー、どちらが先にAIに代替される?

ここで気になるのが、「システムエンジニアとプログラマー、どちらのほうがAIに代替されやすいの?」という点ですよね。

実際にコードを作成するプログラマーの仕事は、早い段階でAIに置き換わる可能性が高そうです。実際にAIにも聞いてみたところ、「プログラマーの一部業務の方が、システムエンジニアより先にAIに代替されやすい」とのことでした。

以下に、ChatGPTの回答を記載します。

とはいえ、システムエンジニアも油断はできません。今後のAIの進化次第では、要件定義補助ツールや設計サポートツールも拡大し続けていくでしょう。

システムエンジニアの業務も、AIと協働する時代は確実に近づきつつあります。AI共存時代でシステムエンジニアが生き延びるためには、どのような能力が必要なのでしょうか?

AI共存時代のエンジニアの新しい働き方

ここでは、AI共存時代における「エンジニアの新しい働き方」をご紹介します。これからの時代、人間とAIとの協働は避けられません。AIと戦うのではなく、AIと手を合わせて新しい働き方を模索することで、エンジニアの未来は開けていきます。

AIが作業をするための環境構築

AIと協働するスタイルとして「AIが作業をするための環境構築」が挙げられます。たとえばAIが効率的に作業を進められるように、AIのモデルに合わせたデータを準備しておきます。通信環境やインストールするツール・ソフトなども、AIに合わせたものになるでしょう。

AIから良質な回答を得るためには、事前設定やプロンプトも重要。効率的に作業を進めるために、事前にAIにプログラムを設定するのも環境構築の一つです。

感性やユーモアに関連するアイデアの創造

AIは「もっと面白くして」や「もっと人の興味をひくようにして」のような、創造性が求められるリクエストが苦手です。ドキッとする、クスリと笑える、のような人間ならではの微細な心の動きをAIは理解できません。

ユーモアやジョークを交えた「人間の心の琴線に引っかかるものづくり」は、まだしばらくは人間の専門分野になるでしょう。AIと協働する未来では、感性や美意識のセンスなども磨く必要があります。

AIとの対話による共同作業

AI時代のエンジニアは、AIとの対話による共同作業が求められるでしょう。「人間 vs AI」の単純な役割分担だけではなく、対話による協働が必要になる可能性があります。

たとえば、「自分かAIのどちらかがやる」ではなく「AIにどうやってやらせるか」。より正確性の高い回答や、ニーズに合った良質な回答をAIから引き出すためには、プロンプトエンジニアリングとしての能力が求められます。

AIの出力した品に対する管理・チェック

AIが人間と同等以上の正確性を担保できるようになっても、エンジニアの仕事は完全には失われないでしょう。そもそもAIは自分で思考しているわけではありません。膨大なデータをもとに関連性のある情報を見つけ、継ぎはぎのようにつなぎ合わせています。

どれほど高性能なAIが作った生成物でも、ミスや抜け穴がある可能性は十分考えられるのです。そのため「AIの出直した品に対する管理・チェック」の仕事は、今後のAI時代でも失われないプロセスだと考えられます。

AIの生成物には「誤り」だけではなく「偏り」や「倫理的問題」が潜む可能性もあります。エンジニアは、「AIを信頼しすぎないブレーキ役」としての立場も求められ、検証・監査・説明責任が重要になるでしょう。

来たるAI時代で生き残るためにエンジニアがやるべきこと

ここでは、来たるAI時代で生き残るために、エンジニアが備えておきたいことをご紹介します。技術が変われば社会が変わり、社会が変われば求められる働き方も変わります。時代の変化に対応するための術を身につけ、AI時代を乗りこなしましょう。

トレンド察知能力を鍛える

AI時代でエンジニアが生き残るためには、トレンド察知能力を鍛える必要があります。AIは膨大なデータをもとに情報を分析する力に特化しています。しかし多くのユーザーはサイレントマジョリティーであると同時に、Web上で収集できない情報に対してAIの分析力は無力です。

人間ならではの情報収集力や洞察力などを駆使することで、トレンド背景や、トレンドの変化によって動く感情などを予想できます。「なぜ流行しているのか」を考えつつ、表面的なトレンドに隠された深層心理や社会の変容などを察知できるのは、人間ならではの強みです。

トレンドのキャッチアップや技術や知識の習得の方法として、実際にAIツールを触ってみるのも、協働の形といえるでしょう。

AIに特化した技術や知識の習得

AI時代のエンジニアは、プログラミングやシステムの構造だけではなく、AIに特化した技術や知識を習得することも求められます。代表的なものが、自然言語処理に関する知識です。

自然言語で明確に指示を出し、最大の利益を引き出すための回答をAIから引き出せれば、それは理想的な協働の形といえるでしょう。またAI開発に適したプログラミング言語の習得も、これからの時代で活躍するために重要になります。

仕事に対するモチベーションを維持するための工夫を考える

モチベーションや情熱は、人間だからこそ持てる強みです。もちろん気持ちだけでは成果につながりませんが、「社会をどう変えたいか」「企業をどう変えたいか」「何を実現したいのか」というモチベーションは非常に大切です。

なぜならモチベーションや情熱を持っている人は、AIを「使う側」に回れるから。モチベーションは明確な目標設定につながり、持続的な推進力にも影響を及ぼします。工程をAIに任せる側でいるためには、情熱や発想力、創造性、知的好奇心のすべてが必要なのです。

分野横断的に活躍する「ハイブリッドなスキル」を身につける

今後のAIは、単機能的な役割をさらに補っていくでしょう。そのためエンジニアやプログラマーにおいては、「一つのことしかできない人材」は自然と淘汰されていくと考えられます。

AI時代で生き残るためには、ハイブリッドなスキルを身につけることが重要です。ば「ITと教育」「AIとデザイン」「開発と娯楽」などのように、複数の分野を「つなぐ人材」として活躍できる状態を目指しましょう。

エンジニアの仕事は、すぐになくなるわけではない!AI時代への対応力が大切

今回は、AI時代におけるエンジニアの働き方の変化についてご紹介しました。

「エンジニアやプログラマーの仕事はすぐにAIに奪われる」と噂されることもありますが、決してそんなことはありません。AIと協働するための能力を身につけることで、よりニーズの高い人材として活躍できます。

とはいえ向上心を失ってしまえば、AIに置き換わられかねないのも事実。ぜひこの機会にスキルや働き方を見直し、長期的なキャリアプランを考えていきましょう。