Stable Diffusionを使っていると、生成画像の色味やディテールに違和感を感じることはありませんか?特にSDXLモデルを使用する場合、適切なVAEを使うことで画質が大きく向上します。
VAEとは変分オートエンコーダー(Variational Auto-Encoder)の略で、画像をコンピューターが扱いやすい形に変換し、鮮明な画像生成をサポートする技術です。SDXLモデル専用のVAEを使うことで、色のくすみやボヤけを解消し、より鮮やかで高品質な画像を生成できるようになります。
本記事では、SDXL VAEの基本から設定方法、おすすめのVAEモデルまで、画質向上のための情報を徹底解説します!
- VAEとは?
- SDXL VAEのインストール方法
- SDXL VAEの設定と使い方
- おすすめのSDXL VAEモデル
- VAEをモデルに焼き込む方法
- SDXL VAEのエラーと解決方法
※Stable Diffusionの使い方については、下記記事で詳しく解説しています。
VAEとは?画像生成における役割を理解しよう
VAE(変分オートエンコーダー)は、簡単に言うと、高次元の画像データを低次元の潜在表現(ベクトル)に変換し、処理後に再び高次元の画像データに戻す仕組みです。
Stable Diffusionでは非常に多くの計算処理が必要となります。そのため、高次元の画像データをそのまま扱うと処理量が膨大になり、時間がかかってしまいます。VAEによってデータを圧縮することで、計算量を減らして効率的に処理できるようになります。
VAEなしの生成画像
全体にモヤがかかっている

VAEありの生成画像
画像全体がハッキリする

特にSDXL VAEは、画像の鮮明さを向上させる効果があります。SDXLに合ったVAEを導入することで、同じプロンプトでも画質が良くなり、くすんだ色味や暗い部分、ぼやけた箇所が鮮やかになります。
VAEの種類とSDXLの特徴
VAEには大きく分けて2種類あります。
- 汎用VAE:Stability AI社が公開している「stabilityai/sd-vae-ft-mse」のように、どのモデルでも使用できるVAE
- モデル専用VAE:特定のモデル専用に設計されたVAE(他のモデルと組み合わせても効果がない)
SDXL専用のVAEは、SDXL 1.0モデルの特性に最適化されており、より高品質な画像生成をサポートします。ただし、SDXL自体がSD 1.5と比較して基本的に高画質なため、VAEの違いがわかりにくい場合もあります。
SDXL VAEのインストール方法
ここからは、SDXL専用のVAEをStable Diffusion Web UIに導入する方法を順番に解説します。
VAEファイルのダウンロード方法
VAEファイルは主に以下の2つのサイトからダウンロードできます。
- Hugging Face
- メニューバーから[Models]をクリック
- 検索窓に「stabilityai/sdxl-vae」などのVAE名を入力
- 詳細ページで[Files and versions]をクリック
- safetensors形式のファイルをダウンロード
- メニューバーから[Models]をクリック
- Civitai
- Civitaiで「SDXL VAE」などで検索
- 目的のVAEモデルページにアクセス
- Downloadボタンからファイルをダウンロード
- Civitaiで「SDXL VAE」などで検索
VAEファイルの拡張子には.ckptと.safetensorsの2種類がありますが、セキュリティの観点から.safetensors形式をおすすめします。
VAEファイルの配置先
ダウンロードしたSDXL VAEファイルは、以下のフォルダに配置します。
- Windows/Mac/GPUSOROBANの場合:
[stable-diffusion-webui] > [models] > [VAE]
- Google Colabの場合:以下のコードを実行してください。
#フォルダに移動 %cd /content/stable-diffusion-webui/models/VAE
# VAEファイルをダウンロード
!wget https://huggingface.co/stabilityai/sdxl-vae/resolve/main/sdxl_vae.safetensors
- Stable Diffusionのプロンプトの見本が知りたい
- 画像生成が思ったようにできない
- 色々なプロンプトを探したい

SDXL VAEの設定と使い方
VAEファイルを配置したら、Stable Diffusion Web UIで設定を行いましょう。
①Stable Diffusion Web UIを起動
②上部メニューから[Settings]タブを開く

③左側メニューから[VAE]を選択

④[SD VAE]の更新アイコンをクリックし、プルダウンメニューから配置したVAEファイルを確認

VAEセレクターの設定(おすすめ)
毎回設定画面を開くのは面倒なので、VAEセレクターを表示させる方法がおすすめです。
①[Settings]ページを開く
②左側メニューから[User Interface]を選択

③[Quicksetting list]に「sd_vae」と入力

④候補に表示される[sd_vae]をクリック

⑤[Apply Settings]→[Reload UI]でWeb UIをリロード

これにより、メイン画面にSDXL VAE選択用のドロップダウンメニューが表示されるようになります。
VAEを切り替える方法
モデルによって適したVAEが異なる場合は、簡単に切り替えることができます。
- VAEセレクターの更新アイコンをクリック
- プルダウンメニューから使用したいVAEを選択
- 設定後、画像生成を行うと選択したVAEが適用される
おすすめのSDXL VAEモデル
続いては、SDXL用のおすすめVAEモデルを紹介します。モデルごとの特徴や生成画像の違いを解説しますので、ぜひ参考にしてください!
Stability AI公式のSDXL VAE

Stability AI公式のSDXL VAEは最も基本的なモデルです。
- ダウンロード先:Hugging Face/Civitai
- 特徴:標準的な色味とディテールを維持しつつ、スキントーンをより自然に表現
- データサイズ:約335MB
低メモリ対応のSDXL VAE

VRAM不足で処理が遅い場合におすすめのモデルは、「FIX FP16 Errors SDXL – Lower Memory use」です。
- ダウンロード先:Civitai
- 特徴:FP16形式に最適化され、低メモリで高速処理が可能
- 画質:標準VAEとほぼ同等の結果
アニメ特化のSDXL VAE

アニメ風イラスト生成に適したVAEモデルは、「XL_VAE_F」です。
- ダウンロード先:Civitai
- 特徴:コントラストが強調され、アニメイラストの発色が良くなる
- データ形式:safetensors
その他の特徴的なSDXL VAE
①FlatpieceXL (flatpiecexlVAE_baseonA1579)

- 特徴:標準のSDXL VAEより明るい画像を生成
- 適した用途:明るく鮮やかな風景や人物画像

- 特徴:彩度の高い画像が生成される
- 適した用途:鮮やかな色彩が必要なイラスト
VAEをモデルに焼き込む方法
毎回VAEを設定するのが面倒な場合は、少し上級ですが、モデルにVAEを焼き込むこともできます。
①Stable Diffusion Web UIの「CheckpointMerger」タブを開く

②焼き込む対象のモデルをAとBの両方に指定(同じモデルを指定)
③Custom Nameに新しいわかりやすい名前を設定

④Interpolation Methodは「Weighted sum」を選択

⑤Checkpoint formatは「safetensors」を選択

⑥Bake in VAEで焼き込みたいVAEを指定

⑦Mergeボタンをクリックして焼き込み開始
こんな感じの画像を生成できるようになります!



これにより、VAEが焼き込まれた新しいモデルファイルが生成され、毎回VAEを設定する手間が省けます。
※詳しい使い方については、下記記事を参考にしてください!
【FAQ】SDXL VAEのエラーと解決方法
SDXL VAEを使用する際によくあるエラーと解決方法について、FAQ形式で分かりやすく解説します。
- QSDXL VAEを使うと「CUDA out of memory」エラーが出ます。どうすれば解決できますか?
- A
このエラーはVRAMが不足している場合に発生します。以下の方法を試してみてください。
- FP16対応のVAEモデル(「sdxl-vae-fp16-fix」など)を使用する
- バッチサイズを1に減らす
- 生成する画像の解像度を下げる(768×768など)
- 「–medvram」や「–lowvram」オプションでStable Diffusion Web UIを起動する
- 不要な拡張機能を無効化する
- QVAEを選択したのに「VAE has incorrect dimensions」というエラーが表示されます
- A
このエラーはSDXLモデルとSD 1.5用のVAEを組み合わせようとした場合などに発生します。モデルに合った適切なVAEを選択しましょう。
- SDXL modelには「sdxl-vae」などのSDXL用VAE
- SD 1.5モデルには「vae-ft-mse-840000-ema-pruned」などのSD 1.5用VAE
- QVAEを設定しても画質に変化が見られません。なぜですか?
- A
以下の原因が考えられます。
- VAEファイルが正しく配置されていない → models/VAEフォルダに配置されているか確認
- 「Automatic」設定になっている → 明示的にVAEを選択する
- SDXLモデル自体が既に高画質 → SDXLはVAEの効果が分かりにくい場合もある
- VAEとモデルの相性が悪い → 別のVAEを試してみる
- QSDXL用のVAEを使うと画像が緑色になってしまいます
- A
これはVAEとSDXLモデルの互換性の問題です。
- 別のSDXL用VAEを試す(特に「sdxl-vae-fp16-fix」を試してみる)
- VAEの設定を「None」に戻し、デフォルトのVAEを使用する
- 最新版のStable Diffusion Web UIにアップデートする
- QVAEを使うと「Failed to load VAE」というエラーが出ます
- A
ファイルの破損や互換性の問題が考えられます。
- safetensors形式のVAEファイルを使用する
- Stable Diffusion Web UIを再起動する
- モデルと同じバージョン向けのVAEを使用する
- Qfp16形式のVAEでも「FP16のエラー」が出る場合の対処法は?
- A
以下の方法を試してください。
- 設定画面から「Stable Diffusion」→「Precision」を「Full」に変更
- 「–no-half-vae」オプションを追加してStable Diffusion Web UIを起動
- 最新の「madebyollin/sdxl-vae-fp16-fix」を使用する
- VRAM 8GB以上のGPUを使用する
- QVAEセレクターが表示されません。どうすれば表示できますか?
- A
以下の手順で設定してください。
- 設定画面を開く
- 左側メニューから「User Interface」を選択
- 「Quicksetting list」欄に「sd_vae」と入力
- 「Apply Settings」をクリック
- 「Reload UI」でWeb UIを再起動
- QVAEを変えると生成時間が長くなりました。対処法はありますか?
- A
VAEの計算負荷が原因です。
- 軽量化されたFP16対応VAEを使用する
- 「Use CPU for VAE」のチェックを外す(Settings → Optimizations)
- VAEの使用を控える、または重要な画像生成時のみ使用する
- より高性能なGPUを使用する
- QVAEを使うと保存した画像のメタデータにVAE情報が記録されません
- A
メタデータに記録されるよう設定する方法は、以下の通りです。
- 設定画面で「Saving images」→「Add VAE info to metadata」をチェック
- 「Apply Settings」後「Reload UI」で再起動
- Qモデルに焼き込んだVAEが正しく機能しません
- A
焼き込み処理に問題がある可能性があります。
- CheckpointMergerで同じモデルを指定したか確認
- Interpolation Methodが「Weighted sum」になっているか確認
- モデルサイズによっては焼き込みがうまくいかない場合もある
- 別の方法でVAEを焼き込む(Advanced設定から「Bake VAE into .safetensors」機能など)
上記の対処法を試しても問題が解決しない場合は、Stable Diffusion Web UIのバージョンアップや、別のVAEの使用を検討してみてください。
※Stable Diffusionの更新方法は、下記記事で詳しく解説しています。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
SDXL VAEの基本から設定方法、おすすめモデル、さらに発生しがちなエラーと解決方法まで詳しくご紹介しました。
この記事で紹介したことをまとめると次のようになります。
- SDXL VAEは画像の鮮明さを向上させる技術で、色味やディテールを改善する
- VAEファイルはHugging FaceやCivitaiからダウンロードして[models]/[VAE]フォルダに配置する
- VAEセレクターを設定すれば、簡単にVAEを切り替えながら画像生成ができる
- SDXL用のVAEは「sdxl-vae」「sdxl-vae-fp16-fix」「XL_VAE_F」などがおすすめ
- VRAM不足エラーはFP16対応のVAEを使ったり、解像度を下げたりして解決できる
- 頻繁に同じVAEを使用する場合は、モデルに焼き込むと便利
SDXL VAEの設定がうまくいかず悩んでいる方や、より高品質な画像を生成したいという方に、かなり助けになる情報だったのではないでしょうか?
ぜひ、皆さんの環境に合ったVAEを導入して、Stable Diffusionでより魅力的な画像生成を楽しんでみましょう!