1950年頃に生まれた、AI(人工知能)の概念。AIは技術の進化とともに社会に拡大し、今や私たちの生活において身近な存在になりました。AIに関連するさまざまな職業が誕生していくなかで、いま注目度が上がっているのが「プロンプトエンジニア」です。
今回は、プロンプトエンジニアの仕事内容や、プロンプトエンジニアになるには何が必要なのかをご紹介します。プロンプトエンジニアの働き方や推奨資格などを学び、自身のキャリアの幅を広げていきましょう。
プロンプトエンジニアとはどんな仕事?
プロンプトエンジニアとは、AIから精度の高い答えやコンテンツを引き出すスペシャリストです。プロンプトとは、AIへの指示文のこと。高品質なプロンプトをつくることで、企業の求める回答を生成します。
プロンプトエンジニアの業務内容は、以下の3つに大別されます。
- プロンプトの設計
- AIモデルの分析
- プロンプトの最適化
AIが生成するテキストや画像は、AIがゼロから創造しているわけではありません。Web上に蓄積された膨大なデータをもとに、AIが継ぎはぎのように「関連情報同士を足したり混ぜ合わせたりして生成したもの」です。
AIに的確なプロンプトを指示することで、AIの返答はより精度が高くニーズに合ったものに変化します。プロンプトエンジニアは、AIのモデルや思考などを踏まえたうえで、最適なプロンプトを入力して生成物を取得する仕事です。
プロンプトエンジニアに求められる能力・知識

ここでは、プロンプトエンジニアになるにはどのような能力・知識が必要なのかをご紹介します。
プロンプトエンジニアには、AIに関する知識はもちろん、ITに関連するさまざまなリテラシーが必要です。プロンプトエンジニアの仕事内容と照らし合わせながら、必要な技能を学んでいきましょう。
自然言語処理の基礎知識
プロンプトエンジニアにもっとも必要なスキルといえるのが、自然言語処理の基礎知識です。自然言語とは、人間の言葉そのもの。自然言語処理とは、コンピュータが人間の言葉を理解し、内容を処理する技術です。
プロンプトエンジニアはAIの自然言語処理能力を効率的に使用する必要があります。AIが実行すべきタスクを厳選しやすいよう、適切な自然言語を用いたプロンプトの入力が求められます。自然言語処理を担う言語モデル(LM)に関する知識は、プロンプトエンジニアの専門領域といえるでしょう。
プログラミングの基礎スキル
プログラミングの基礎スキルを学ぶことで、プロンプトエンジニアの仕事の幅はぐんと広がります。なぜならすべての生成AIは、プログラミングによって動いているからです。「なぜAIがこの指示でこう動くのか」の仕組みを理解していれば、より最適なプロンプトの発見につながります。
またプロンプトエンジニアの仕事には、プログラミングにおけるコードの生成におけるコードの生成も含まれます。コードの意味(例:条件分岐:if、繰り返し:for/whileなど)を理解することで、上質かつニーズに合った生成物を生み出しやすくなるでしょう。
幅広い領域におけるAIツールの知識
プロンプトエンジニアとして活躍するためには、幅広い領域におけるAIツールの知識が必要です。AIツールは種類やモデルごとに向き不向きがあります。企業が求める成果物を生み出すためには、適材適所のツールを選択し、組み合わせるプロセスが大切です。
またプロンプトエンジニアにはツールだけではなく、自然言語処理に関連するライブラリやフレームワークの知識も求められます。AI関連の知識を深めるほど、生産性の向上や開発コストの削減、高度な自然言語処理タスクの実行が可能になるでしょう。
語彙力・言語化力・表現力
プロンプトエンジニアには、語彙力・言語化力・表現力などの非認知能力も必要です。AIの種類やモデルに合わせ、的確な言葉や文章構造を入力することで、より高品質の生成物を引き出せます。
たとえば「リンゴを書いて」と入力するよりも、「秋の陽光を浴びて艶めく、熟しきった真紅のリンゴを描写してください。表面はわずかに光を反射し、果皮には自然な斑点が浮かび、摘みたての生命感と甘やかな香気を感じさせるように」と表現したほうが、よりニーズに合った画像を出力してくれそうですよね。
プロンプトエンジニアは、仕事と並行しながら自身の感性を磨き、語彙力を増やしていく習慣が大切なのです。
創造性・発想力
創造性や発想力も、プロンプトエンジニアに必要な能力です。目的に沿った生成物をAIから引き出すためには、シンプルなプロンプトだけでは足りないシーンがあります。独自性のある文章や、意外な観点を用いたプロンプトは、AIの力を最大限に発揮させるためのきっかけになるでしょう。
プロンプトに意図的に余白を与えることで、思わぬ価値やインスピレーションに出会えることも。自分ならではのニュアンスを込めた指示文を生み出せるプロンプトエンジニアは、単純な数値では換算できない価値を持つ存在といえます。
プロンプトエンジニアになるには|キャリアのルートを解説

ここでは、プロンプトエンジニアになるためのルートをご紹介します。
キャリアのルートに正解はないため、自身の経歴やライフスタイルに合わせた学習方法の選択が重要です。「プロンプトエンジニアになるには何から始めればいい?」と考えている人は、ぜひ参考にしてくださいね。
1.プログラミングや自然言語処理の知識を身につける
プロンプトエンジニアになるためには、自然言語処理やプログラミングの学習から始めます。適切な学習方法はライフスタイルによってさまざま。教材としては専門書籍・学習サイト・スクールなどが一般的です。
とはいえゼロからプロンプトエンジニアの学習を始める場合は、挫折を防ぐために「不明点を質問できる環境」をつくることが推奨されます。書籍やサイト以上に費用はかかりますが、無理なく通える範囲のスクールを探してみるとよいでしょう。スクールでは課題として成果物の提出があり、ともに学ぶ仲間とも出会えるため、モチベーションの維持に直結します。
2.ポートフォリオを作成する
プロンプトエンジニアとしての知識や技能を身につけてきたら、ポートフォリオを作成しましょう。ポートフォリオでは、成果物をユースケース別(要約・データ分析・コード生成・記事生成など)にまとめるとアピールポイントがわかりやすくなります。
記載する際は入力プロンプトだけではなく、出力された成果に対する工夫のプロセスや、改善ごとの出力結果の差異をセットで記すとよいでしょう。プロンプトエンジニアとして狙いたい企業を絞り、実務に近い成果を記載できると尚良しです。
3.勉強をしつつ求人を探す
ポートフォリオが完成したら、学習を継続しつつプロンプトエンジニアの求人情報をチェックしていきます。条件に合う求人を見つけたら、学習中や資格勉強中であっても応募するのが吉。「現在〇〇〇の資格を取るために勉強している」という事実は、向上心のアピールになります。
プロンプトエンジニアの就労先としては、IT企業・AI企業・コンサルティング会社・マーケティング会社などが代表的。一般的な事業会社でも、生成AIの導入・活用を検討している企業であれば、プロンプトエンジニアの求人情報を出す場合もあります。ほかにも行政・公共機関や教育・研究機関など、幅広い領域をチェックしていきましょう。
プロンプトエンジニアになるために取得したい資格
ここでは、プロンプトエンジニアになるために取得が推奨される資格をご紹介します。
プロンプトエンジニアは無資格でも仕事を始められますが、企業やメーカーに属する場合は、資格の所持が大きな自己アピールになります。AI・ITに関連する資格を取得し、自身のキャリアの幅をさらに広げていきましょう。
基本情報技術者試験
基本情報技術者試験は、プロンプトエンジニアを含む「ITエンジニアの登竜門」といわれている資格。高度なIT技術を使いこなすために必要な基本的知識・技能の所持を証明できます。
プロンプトエンジニアにとっては、プロンプト設計に必要なITリテラシーを身につける資格ともいえるでしょう。学習のプロセスでは、アルゴリズムやネットワーク、セキュリティなど幅広い知識を学べます。
Python3エンジニア認定試験
プロンプトエンジニアの仕事に関連するプログラミング言語は、おもにPythonです。Python3エンジニア認定試験では、Pythonの基本文法やライブラリへの理解を深められます。
とくにデータ分析に特化したプロンプトエンジニアを目指す人は、ぜひ取得したい資格です。データのグラフや表形式での出力をAIに依頼する際に、的確に設計できるようになります。
AI実装検定
AI実装検定は、プロンプトエンジニアのような「AI技術者」として、ビジネスで活躍できる能力をアピールできる資格です。ディープラーニングに関連する実装能力や知識を問われる内容となっており、3段階のレベルでスキルを検定します。
基本情報技術者試験の合格率は約40%ですが、AI実装検定の合格率は約70%程度。難易度が特別に高いわけではないため、プロンプトエンジニアの関連資格におけるスタートとしても適しています。
G検定
G検定は、AIの幅広い領域を体系的に学べる試験です。AIの基礎から応用、ディープラーニングの仕組み、自然言語処理の理論など、プロンプトエンジニアとして働くために必要な知識を学習できます。
表面的な知識だけではなく、AIの細かな仕組みや構造、使いこなすための思考力なども身につけられるため、生成AIの応用力に説得力が生まれます。
E資格
プロンプトエンジニアとして活動する際に、ぜひ取得したいのがE資格です。E資格ではおもに機械学習や深層学習の領域を学べ、プロンプトエンジニアに欠かせない自然言語処理やニュートラルネットワークに関する知識も深められます。
学習過程では、AIがプロンプト通りに生成する仕組みや根拠を把握できるため、AIの回答の精度を向上させられるでしょう。
プロンプトエンジニアになった後のキャリアパス

ここでは、プロンプトエンジニアとしての働きを踏まえたうえで、さらに広がっていくキャリアについてご紹介します。プロンプトエンジニアでAI・IT関連の実績をつけた後は、同業種の異なる職種にチャレンジするのも良いでしょう。
データサイエンティスト
データサイエンティストとは、企業のさまざまな意思決定のシーンにおいて「意思決定者をサポートする仕事」です。意思決定者が合理的な判断をおこなえるように、統計解析やITスキルを駆使しながら助言をします。
統計学やデータ処理に関する知識はもちろん、市場のトレンドや社会情勢の変化など、幅広い知識が求められる仕事です。
AIエンジニア
AIエンジニアとは、AIの研究開発をする仕事です。豊富なAI知識をもとに、AIの設計・開発・実装・システムの構築などをおこないます。
AIエンジニアは「AIのスペシャリスト」であり、人工知能に関する専門知識やスキルが必要です。プロンプトエンジニアで知識の基盤を構築した後にこそ、チャレンジしがいのある職業といえるでしょう。
プロンプトエンジニアのニーズはどんどん増えていく!
今回は、プロンプトエンジニアの仕事内容や、プロンプトエンジニアになるには何が必要なのかをご紹介しました。子どもから高齢の方までAIの恩恵を受けている現代では、AIに関わる仕事のニーズが増加傾向にあります。
今後の社会において、AIはより身近かつ必須な存在になっていくでしょう。ぜひこの機会にAIやプロンプトエンジニアについて学び、新しいキャリアの第一歩を踏み出してくださいね。