AI技術が躍進する昨今では、さまざまな仕事がAIに代わられつつあります。単純作業や肉体労働だけではなく、専門性の高い頭脳労働までもがAIに取られることも。
将来的に働き方が変化するであろう職業の一つが、薬剤師です。
今回は、薬剤師の仕事をAIに取られるかどうかや、薬剤師におけるAIとの役割分担についてご紹介します。薬剤師の仕事内容やAIの特徴を学びながら、薬剤師の働き方の変化について考えていきましょう。
そもそも、薬剤師の仕事内容とは?
薬剤師の仕事がAIに取られるかどうかを考える前に、薬剤師の仕事内容をあらためて学んでみましょう。
薬剤師の仕事は、以下の3つに大別されます。
- 調剤業務……病院で発行された処方箋に従い、薬を調合する業務。
- 服薬指導……処方した医薬品の服用方法を、患者に説明する業務。
- 薬剤管理……患者の処方状況や調剤時期などのデータを保存・管理する業務。
上記の業務はお互いに関連性があります。たとえば適切な服薬指導をおこなうためには、正しい薬剤管理によって過去の記録が保存されている状態が必要です。
そのほかにも、薬に合った適切な環境で保存する業務や、一部医薬品の販売などが挙げられます。また製薬会社に勤務している薬剤師にとっては、薬の開発や研究も重大な業務の一つです。
薬剤師の仕事が「AIに取られる」といわれる2つの理由

ここでは、薬剤師の仕事が「AIに取られる」といわれる理由をご紹介します。
医療は、私たちが安心して暮らすために欠かせないインフラです。そして医師や看護師と同様に、薬剤師も適切な医療の提供のために重要な存在。そんな薬剤師がなぜ、AIの台頭によって不要といわれてしまうのでしょうか?
理由①現場の効率化が重視されている
薬剤師の仕事がAIに取られる理由として、現場の効率化が重視されていることが挙げられます。これは薬剤師の仕事自体の問題ではなく、少子高齢化の影響を受けた人手不足によるものです。
日本の平均年齢が段階的に上がるなかで、出産率は減少傾向にあります。医療や薬を必要とする人口は増え続けているのに、働き手は不足しているのです。「限られた人材資源でいかに現場を回すか」が重視されつつある昨今、現場の薬剤師にとってAIは大きなサポートとなっています。
実際に現在でも、AIによる管理や記録の効率化が進んでいます。一人ひとりの業務タスクが減少しつつあるため、将来的に人口比率が落ち着いた後でも、雇用機会が減るリスクがあるでしょう。
理由②数字やデータの管理はAIのほうが向いている
「薬剤師の仕事がAIに取られる」とはいえ、すべての仕事がAIに代わられるわけではありません。薬剤師の仕事のなかでも、人間よりAIのほうが向いている業務とそうでない業務がそれぞれ存在しています。
AI向けの業務の代表格が、薬剤管理です。薬剤管理では、患者が安全に薬を使用するために、過去のデータから投与量・相互作用・重複投与などを確認します。多くの人間の情報を整理・管理する作業は、AIの得意分野です。
AIが薬剤管理をすればヒューマンエラーが防げるため、より安全性の高い環境で服薬指導につなげられます。すでに一部の現場では、予測変換機能のある薬歴システムや音声入力などを通して、AI技術が導入されています。
業務のAI化自体は悪ではなく、前向きな変化
AIが話題になると、まるでAIが悪者のような意見を見かけることもありますよね。たとえば「AIは人の仕事を奪う」、「AIによって失職する人がいる」……。確かに、すでに人間からAIに置き換わっている仕事も少なくありません。
しかし、そもそも「時代によってなくなる職業・増える職業がある」のは当たり前のことです。技術が進歩すれば社会が変わり、企業や大衆のニーズが変わり、求められる職業や働き方も変わっていきます。
たとえば江戸時代に盛んだった飛脚の雇用は、自転車や自動車の登場によって無くなりました。ですがその代わりに、乗り物の開発や整備、製作、運転手などの雇用は増えましたよね。
薬剤師や医療の業界においても同様のことがいえます。現在の業務の一部がAIに代わられる可能性は高いですが、今後薬剤の分野で新しい雇用が生まれる可能性も十分に考えられます。
AIは、薬剤師の仕事をより効率的にしてくれる存在です。だからこそ、今後の社会ではAIを使いこなせる人材が求められます。「仕事が奪われる」と危惧するのではなく、社会や業界に求められるAIリテラシーを身につける姿勢が大切だといえるでしょう。
薬剤師の仕事で「AIにできないこと」はある?

ここでは、薬剤師の仕事における「AIにできないこと」をご紹介します。
データ管理や情報整理はAIで代用できますが、人間ならではの非認知能力を使った業務はAIには再現できません。薬剤師の仕事をより深く掘り下げながら、人間が携わるべき業務について学んでいきましょう。
創造性が求められる仕事
AIにできない薬剤師の仕事として、創造性が求められる業務が挙げられます。薬剤師と一言で言っても、勤務先や働き方はさまざまです。創造性が重要な職場としては、製薬会社が挙げられます。
病院や処方箋薬局勤務の薬剤師とは異なり、メーカー勤務の薬剤師には「研究開発職」としての側面があります。研究開発は製薬会社にとって、まさに利益の源泉。人々の健康や治療の可能性を広げる開発職では、人間ならではの創造性や発想力が求められます。
患者への安心感を与えるコミュニケーション
薬剤師の仕事では、患者とのコミュニケーションが必要です。病気や疾患に悩む患者に安心感を与えるためには、気持ちのこもったやり取りが求められます。どれほど有能なAIでも、機械やロボットである限り、相手の心を満たすような思いやりは与えられません。
また患者との会話のなかで、既往歴やアレルギー、服用中の薬などの情報を聞き出せることも。設定通りの質疑応答しかしないAIでは、柔軟性のあるコミュニケーションは難しいでしょう。もちろん、医師や看護師などとの連携においても、コミュニケーション能力が活用されます。
薬剤師の仕事がAIにすぐに奪われない3つの理由
ここでは、薬剤師の仕事がAIにすぐに奪われない理由をご紹介します。
薬剤師の現場にはAI技術が確実に拡大しつつあるものの、近い将来にすべての仕事をAIに奪われるわけではありません。人間の薬剤師が重宝される理由を学んでみましょう。
理由①「人間ならではの対応」を求められやすい職業
前項でも触れたように、薬剤師は「人間ならではの対応」を求められやすい職業の一つです。なぜなら薬剤師が薬の服用に関する指導をおこなう際は、患者一人ひとりの属性やライフスタイルに沿った対話が重要になるからです。
たとえば高齢者・子ども・外国人・精神的に不安定な患者などに指導をする場合、たとえ同じ薬であっても言葉選びやニュアンスが異なりますよね。患者との信頼関係を築いたり論理的判断を下したりするためには、やはり人間ならではのコミュニケーション能力が求められます。
理由②導入・運用コストがかかる
薬剤師の仕事がAIにすぐに奪われない理由として、導入・運用コストがかかることが挙げられます。たとえば専用デバイス・ソフトウェア・初期設定・データ連携の設備など、AIシステムを薬局や病院に導入するコストは大きいものです。
AI導入では、各業界においてコストが大きな課題となっています。とくに薬剤師は人間の健康や命に直結する仕事であるため、AIの精度や安全性を継続的に管理・検証する必要があります。金銭的なコストだけではなく、人員的なコストも考えると、全国的な早期導入は難しいのが現状です。
理由③情報漏洩のリスクの徹底が必要
AIの導入のためには、情報漏洩のリスクの徹底が必要です。薬剤師が扱う情報は、患者の健康状態という非常にパーソナルなもの。住所や氏名はもちろん、病歴・処方内容・服薬などのデータは、慎重に取り扱うべき個人情報です。
これらの管理をAIに任せる場合、通信の暗号化やアクセス制限など、高度なセキュリティ対策が不可欠といえるでしょう。AIが薬剤師の業務全般を担うためには高いハードルが存在しており、人間による情報管理の信頼性が重視されるケースも少なくありません。
薬剤師以外にも…AIに取って代わられる仕事の例

昨今ではIT技術の躍進により、薬剤師以外にもAIに代わられやすい仕事が増加傾向にあります。
- 単純作業の仕事……ライン工場・レジ打ち業務など
- 音声やチャットボットによる自動化が容易な仕事……クレーム対応・カスタマーサポートなど
- 肉体的負担や危険が大きい仕事……土木作業員・高所や閉所での作業が必要な業種
- 創造性の低い仕事……データ入力・清掃業務など
ほかにも、一般事務職のような数字を扱う仕事や、運転手のような自動化が推進されている仕事などは、AIの煽りを受けやすいといえるでしょう。
薬剤師は不要ではない!AIとの役割分担が進んでいく
今回は、薬剤師の仕事とAIの関係性についてご紹介しました。
薬剤師の業務の一部は、AIで効率化が可能です。今後の薬剤師の働き方では、AIが担う「データ処理や管理」と人間が担う「患者とのコミュニケーション」の役割分担が重要になるでしょう。
患者とのコミュニケーションでは薬学の見識が求められるため、現状で薬剤師に求められる知識に違いはありません。そのうえで、今後ますます導入が見込まれるAI技術を使いこなすために、AIに関連する知識やリテラシーが必要になっていきます。
AIと共生する力を手に入れることで、今以上に優良な職業として評価される可能性がある薬剤師。AI技術の発展やトレンドの流れにも注目しながら、AIを活用するための力を磨いていきましょう。
romptn aiが提携する「SHIFT AI」では、AIの勉強法に不安を感じている方に向けて無料オンラインセミナーを開催しています。
AIを使った副業の始め方や、収入を得るまでのロードマップについて解説しているほか、受講者の方には、ここでしか手に入らないおすすめのプロンプト集などの特典もプレゼント中です。
AIについて効率的に学ぶ方法や、業務での活用に関心がある方は、ぜひご参加ください。
\累計受講者10万人突破/