生成AI(人工知能)による学術論文の捏造が深刻な問題となっています。今月、森林総合研究所の著名な研究者の名を騙った偽の学術論文が、海外の学術誌サイトに掲載される事案が発生しました。専門家による分析では、これらの論文は生成AIによって作成された可能性が高いとされています。
事案の詳細
森林総合研究所の藤井一至主任研究員(43)が、自身の名を騙られた英文論文2本を発見したことで、この問題が明るみに出ました。藤井氏は2019年に河合隼雄学芸賞を受賞した実績を持つ土壌研究の専門家です。
発見された偽論文の特徴として、以下の点が挙げられます。
- 藤井氏の過去の研究テーマに関連した内容
- 東京大学や名古屋大学の実在しない組織を所属先として記載
- 論文の引用がないなど、学術論文としての基本的な体裁に不備
生成AIによる捏造の証拠
国立情報学研究所の越前功教授による分析では、問題の論文は生成AIによって作成された可能性が高いことが判明しました。越前教授の研究グループは、AIによって作成された論文を検出するシステムを開発しており、このシステムによる判定で、両論文とも生成AI製と判定されました。
問題の深刻さ
科学・政策と社会研究室の榎木英介代表理事は、この問題について「生成AIの登場により論文の捏造が容易になっており、学術界全体が汚染される危機に直面している」と警鐘を鳴らしています。
特に懸念される点として、以下の3点があげられます。
- 実在する研究者の信用の悪用
- 学術論文の信頼性の低下
- 若手研究者や学生が偽論文を真正な研究として参照してしまう危険性
対策と今後の課題
この問題に対処するためには、学術界全体での取り組みが必要とされています。具体的には、論文の真正性を確認するためのAI検出システムの導入、国際的な監視体制の強化、そして研究者コミュニティでの啓発活動などが求められています。
また、生成AI技術の発展に伴い、今後さらに精緻な偽論文が作成される可能性も指摘されており、継続的な対策の更新が必要とされています。