近年、RPAの導入を検討する企業が増えています。
RPA導入にまつわる失敗例も多数あることから、「失敗しないようにするにはどうしたらいいのか…」と考える方は多いかと思います。
この記事ではRPAの導入における「失敗しないためのポイント」に焦点を当てて詳しく解説します。
ぜひ最後までご覧ください。
RPAとは?はじめに仕組みや基本的な使い方を理解しよう
RPA(Robotic Process Automation)の使い方を解説する前に、RPAとは何なのか、RPAはどのような仕組みでできているのか、RPA導入の主なメリットは何なのかを順にご紹介します。
RPAとは工程が決まった業務の自動化ツール
RPAは、工程が決まった業務を自動化するためのツールです。
RPAを導入することにより、本来人が行っていた定型業務を自動化することができるようになり、人は会社のコアな業務に集中することができるようになるなど、業務の効率化を進める上で大きな効果をもたらしています。
そのため、現在では多くの企業で導入が進められています。
RPA導入によって自動化できる業務の例をいくつかご紹介します。
- データの入力作業・分析
- レポート・日報の自動作成
- 勤怠登録・管理の自動化
- 経理管理業務の自動化
- その他バックオフィス業務の自動化
RPAの仕組みは開発・実行・管理の3ステップからなる
RPAの仕組みは、大きく分けて「開発」「実行」「管理」3つのステップからなります。
まず「開発」では、自動化する業務のフローを「シナリオ」という形で作成します。シナリオはロボットがどのように動作し、どのように業務を進めるかをまとめた設計書になります。
次に「実行」では、作成したシナリオに従ってロボットが自動で業務を行います。
最後に「管理」では、自動化された業務の進捗や結果を確認し、必要に応じてシナリオの調整を行います。何らかの問題が発生したり、アップデートが入った場合に対応するのもこの段階となります。
RPAのシナリオについては下記の記事で詳しく解説しています。こちらも是非ご覧ください。
RPAの役割や導入のメリットは主に業務効率化とミス削減の2つ
RPAの主な役割は、業務の効率化とミスの削減の2つです。
繰り返し行われる単純な業務を自動化することで、人が行うタスクの絶対量を減らすことができ、それによって会社のコアな業務により多くのリソースを割けるようになることから、会社全体での業務の効率が向上します。
また、データ入力などの単純作業を人が行うとどうしてもミスが生じる場合がありますが、RPAで自動化すればそのようなミスも削減することができます。これにより、人件費の削減ができるというメリットや、業務品質の均一化というメリットも出てきます。
RPAのメリットを解説した記事もあるので、こちらも是非ご覧ください。
RPAの基本的な使い方とその手順
RPAを導入することで、日々の繰り返し行われる業務を効率的に自動化することができます。
しかし、RPAを最大限に活用するためには、その基本的な使い方を理解することがとても重要なので、ここで詳しく解説します。
RPAの使い方①:RPA導入の目的を明らかにする
まず、そもそも何のためにRPAを導入するのかという目的を明らかにしましょう。
必要ない機能が多数搭載されたツールを導入しても無駄になりますし、逆に必要な機能が揃っていないツールを導入しても無駄になってしまいます。
こうした事態を避けるため、RPA導入によって、
- どのような業務を自動化・効率化したいのか
- 自動化・効率化によってどのようなメリットが考えられるのか
これらを具体的に考えておく必要があります。
RPAの使い方②:RPAとExcelマクロの違いを理解する
定型業務の自動化という目的の場合、Excelマクロを使用できるケースもあります。
RPAとExcelマクロはともに定型業務の自動化ができるツールで、大まかな役割はかなり似ていますが、対応できるソフトやツールに大きな違いがあります。
ExcelマクロはExcel内の作業の自動化のみに対応しているのに対し、RPAはExcelをはじめ、コンピューター上で動作するあらゆるアプリやツール、ブラウザ上での作業を自動化することができます。
もし自動化を考えている作業でExcelしか使わないのであれば、Excelマクロの導入も考えてみましょう。
ただし、Excelとその他ツールとの連携をする場合にはExcelマクロでは対応できず、RPAを使用する必要があります。
自動化に対応できる範囲 | 導入可能な場面 | |
Excelマクロ | Excel内での処理のみ | ・Excel内での作業で完結する場合 |
RPA | Excel、あらゆるアプリ・ツール・ブラウザ上での処理 | ・Excel内での作業で完結する場合 ・Excelと他ツールを連携して使用する場合 ・Excel以外のツールのみを使用する場合 |
RPAの使い方③:RPAを定型業務の自動化に利用する
RPAを導入する目的を明らかにし、Excelマクロとの違いを理解したら、いよいよRPAの導入に移りましょう。
RPAは定型業務の自動化に向いているので、社内で大きなリソースを必要としている業務のうち、下記のような定型業務があれば、積極的に導入を進めていきましょう。
- データの入力作業・分析
- レポート・日報の自動作成
- 勤怠登録・管理の自動化
- 経理管理業務の自動化
- その他バックオフィス業務の自動化
また、上記業務の他にもRPAを導入できるケースは多くあるため、自動化したいと考える場合は一度手順に従って検討してみるといいでしょう。
RPAの基本的な操作方法
詳細な操作方法はツールごとに異なりますが、RPAツールの操作においてプログラミングの知識や経験は必要なく、簡単な文字の入力作業とクリック操作によって作業が完結します。
RPAツールを提供するベンダーによってはシナリオのサンプルを提供しているものもあるため、一からシナリオを設計する必要がなく、よりRPAの導入がしやすくなっています。
ただし、プログラミングの知識や経験がなくてもRPAの導入を進めることは可能ですが、担当者にITリテラシーがあった方が活用の幅が広がったり、トラブル時に柔軟な対応が可能になります。
そのため、社員のITリテラシーを高める、ITリテラシーの高い人材を確保するなどの対策ができるといいでしょう。
他にも、ベンダーが提供する勉強会やサポートを受けられる場合もあります。知識や経験がないためにRPAの導入を躊躇してしまう企業は多いですが、このようなサポートを利用してみるのも一つの手です。
RPA導入でダメな方法と失敗しない方法
RPAの基本的な使い方を見てきましたが、RPAでの自動化に失敗しない方法を知りたいという方に向け、RPA導入で失敗しない方法を、ダメな方法と合わせて3つご紹介します。
失敗しない方法①:属人的な業務を自動化しない
属人的な業務とは、会社内の特定の人にしかできない業務を指します。
そのような業務は多くの場合、業務内容が明確化されておらず、個人の裁量によるところが大きいため、RPAを用いて自動化できる部分が少なくなります。そのため、無理にRPAを導入しても多くの場合で失敗してしまうことになります。
ただし、属人的な業務をマニュアル化し、将来的に汎用性が高い業務へと改革が進んだ場合、RPA導入による自動化を検討できるようになるため、将来的な業務改善や生産性向上を念頭においておくことには大きな意味があります。
失敗しない方法②:運用リソースに見合わない運用をする
自社の運用リソースに見合った運用をしなければ、運用に失敗する可能性が出てきます。
RPA導入時には通常、プログラミングの知識や経験は必要ありませんが、より複雑なシナリオを作成する必要がある場合や規模の大きい運用をしたい場合には、プログラミングの知識が求めらる場合があります。
しかしその際、社内に適任者がいなければ運用がうまくいきません。
そのため、RPAツールの導入を検討したい場合、最低限のスキルのある人材を確保しておいたり、本当にRPAを活用するべき業務の選定を念入りに行うなど、最低限のリソースやスキルを揃えておくようにしましょう。
失敗しない方法③:システム選定で妥協をしない
システムの選定をする上では、
- 自社のプロジェクト
- 規模の大きさ
- 社員のITリテラシー
- 自動化したい業務領域
このあたりをよく考えてRPAツールを選定しなければ、想定通りに機能せず、失敗してしまう可能性が出てきます。
RPAツールには大きく分けて「デスクトップ型」「サーバー型」「クラウド型」の3つの種類がありますが、運用の難易度はそれぞれ異なりますし、プロジェクトの規模によって選ぶべき種類は変わってきます。
そのため、自社の業務をさまざまな要素に分解し、自社にあったツールを選定して導入するようにしましょう。
RPAを活用できる業務とできない業務の違いとは
では、RPAの導入に向かない業務にはどのようなものがあるのでしょうか。
RPAは定型業務の自動化には向いていますが、判断が必要な業務やパターンが多い業務など、「定型業務と言えない複雑な業務」には向きません。
そのため、RPA導入に向かない業務にRPAを導入して失敗するという事態を回避するため、RPAを導入する業務の選定を念入りに行うことが必要です。
具体的にどのような業務がRPAの導入に向いているかを解説した記事もありますので、こちらもぜひご覧ください。
RPAの実際の活用事例2選
では、実際にRPAを活用した事例を2つご紹介します。
事例①:運輸・旅行会社における月231時間の業務時間の削減に成功
高速バスWILLER EXPRESS運行を行うバス事業をはじめ、鉄道事業、日本全国の高速バス、フェリー、タクシー、鉄道、ホテルやそれらを含むツアーが予約できる移動ポータルサイト「WILLER TRAVEL」を運営する株式会社WILLERでRPAの導入が行われました。
同社の日々の業務のうち、繰り返し行われている作業を自動化することで、人にしかできないコアな業務に集中することを目的としてこの自動化が行われています。
自動化が行われた業務の例として、「Webサイトに掲載されている商品のうち、予約受付期限を過ぎたものの販売停止処理」があります。元々人が1日に40分程度かけて行っていた業務ですが、RPA導入により人の作業時間は0分にできました。
RPAによる自動化により、月231時間もの効率化を実現し、人にしかできない業務に集中しやすい環境づくりが進められました。
出典:RPA Robo-Pat DX(ロボパットDX) リモート環境での運用成功、ロボ活参加者56名に
事例②:愛知県における最大95%の作業時間削減に成功
愛知県では、行政事務の効率化のため、2018年11月から2019年3月にかけて民間事業者と共同でRPAの導入の実証実験を行いました。実験の対象となった業務は以下の4つです。
- 請求書をOCR(文字認識ソフト)で読み取り、財務システムで調書を自動作成し、Excelに自動入力
- メールの件名に応じて添付ファイルとPDF化したメール本文を各担当フォルダに自動で格納
- 毎月、人事管理システムから出力した帳票を自動でExcelに集計
- 毎月、総務管理システムから出力した帳票を自動でExcelに集計
これらの業務を自動化することにより、最大で95%の作業時間削減につながったという結果が出ました。
特にメールの振り分けは対象人数と実施頻度の多さから、実用化すれば大幅な削減が期待できます。
出典:「RPA導入による行政事務の効率化の実証実験」の結果について
まとめ:RPAの正しい使い方を理解し、積極的に取り入れよう!
いかがでしたでしょうか。
この記事では、RPAの基本的な使い方と導入に失敗しない方法について解説しました。
RPAは、繰り返し行われる業務を自動化することで、業務の効率化やミスの削減が期待できる強力なツールです。
しかし、その効果を最大限に引き出すためには、RPAの基本的な使い方を理解し、失敗しやすいポイントも踏まえた上で、自社の業務に適した形で導入することが重要です。
この記事を参考にしていただき、RPAの導入を検討いただければ幸いです。