最近、AI技術は目覚ましい進化を遂げており、特にコールセンターの分野でその効果が大きく期待されています。AIとコールセンターの相性は抜群で、さまざまな業務改善に役立てられています。
しかし、AIがコールセンター業界に革命をもたらす一方で、導入にはいくつかの課題もあります。たとえば、AIが人間のオペレーターとどのように協力していくか、また顧客からの複雑な問い合わせにどう対応するかなど、まだまだ問題が山積みです。
この記事では、AIとコールセンターの関係性を深く掘り下げ、AI技術がコールセンターにどのような影響を与えるのか、またそれに伴う課題と機会について、実例を交えながら詳しく解説していきます。
コールセンターが抱える課題・問題点
コールセンターとは、頻繁に鳴り止まない顧客からの電話にサービススタッフが懸命に答えているイメージではないでしょうか?
「このスマホどうやって使うの?」「金融商品を勧められて解約したいんだけど・・・」など、もしあなたがスタッフの経験者ならば様々な対応に追われて、終わる頃には疲弊しているのではないでしょうか。
「あーもうやってらんない!」「今日電話応対したお客様の態度が嫌でしょうがなかった!」など、悩みを抱えていらっしゃるかと思います。
実は、コールセンター業界にはいろいろな課題点があります。では、ご紹介いたします。
課題①:離職率が高く、慢性的に人材不足である点
コールセンターの課題の1つとして、離職率の高さが上げられます。厚生労働省の「令和3年上半期雇用労働調査結果」によると、全業種の中で3番目に多い業種となっています。
- 飲食サービス業:15,6%
- 教育・学習支援事業:12,4%
- サービス業:9,7%
なぜ、これほどまでに離職率が高いのか気になりますよね。次は、コールセンターの離職が高い原因について解説していきます。
課題②:新人教育に時間がかかる点
未経験の新人オペレーターは、応対する能力はないに等しいです。マニュアル通りに対応していない、顧客によって返答が変わるなど、様々な問題が生じます。
問題に対処するため、教育制度が設けられており、新人研修を行います。座学での研修もありますが、基本的には顧客に電話応対する姿勢やコミュニケーションを直接学ぶ研修が多いです。
しかし、マニュアルは企業ごとに違いがあり、経験のあるオペレーターでも得意なジャンル、苦手なジャンルによって身につけるまでに時間がかかる場合があります。
先輩オペレーターもマンツーマンで教育できればこのような課題もクリアできると思いますが、現状は顧客応対に追われ教育に割く時間が確保できないのではないでしょうか。
課題③:オペレーターごとのレベル差が生じやすい点
みなさんも一度は経験したことがあると思うのですが、対応するオペレーターによって、返答内容がバラバラな方や、異様に早口言葉で話してくる方もいますよね。
自分たちはAIじゃないので、キャリアや教育によって差が生まれるのはごく自然なことなんです。次のリストに詳細を記しましたので見てみましょう。
- 経験の差:新人オペレーターとベテランオペレーターとでは、仕事の知識やスキルに大きな違いがあります。ベテランは複雑な問題に対処する能力が高く、顧客とのコミュニケーションも円滑です。
- 研修と教育の質:オペレーターに提供されるトレーニングの質や内容が不十分な場合、知識や技術の不足が生じ、パフォーマンスに影響を与えます。
- 個人の能力:個々のオペレーターのコミュニケーション能力や問題解決スキルなど、個人の能力にも差があります。
- モチベーションの維持:業務へのモチベーションや職場への従順の度合いが異なることも、オペレーター間のパフォーマンスに差が出ます。
上記のような条件を満たせるオペレーターは、よほど経験を積んでいるオペレーター以外はいないのではないでしょうか。
コールセンターは人対人で成立する業務なので、どうしても仲介に入る際は人手が必要となります。しかし、離職率の高さから、圧倒的に人手不足に陥っています。
そのような問題を解決するため、業務にAIを導入したコールセンターが増えつつあります。AI導入のメリットとはなんでしょうか?次の章で詳しくみていきましょう。
コールセンターでAIを活用するメリット
コールセンタでAIを活用するメリットについて、以下の4点をご紹介します。
- オペレーターの負担軽減
- 顧客満足度の向上
- 業務の属人化の防止
- 運営管理・マーケティングの改善
いずれも業務負担軽減やサービスの質の向上に注目されていますが、詳しく内容を見ていきましょう。
メリット①:オペレーターの負担軽減
1. 自動化による効率化
- 反復的な問い合わせの自動応答:AIはよくある質問に対して自動応答が可能です。例えば、料金プランの詳細、営業時間、アカウントの状況確認など、繰り返しの問い合わせに対し、AIが担うことで、オペレーターの反復作業を大幅に減らします。
- 高速処理と情報提供:AIは大量のデータを瞬時に処理し、わかりやすい情報を与えてくれます。つまり、顧客への迅速な対応が可能となり、オペレーターの業務効率が向上します。
2. ストレス軽減とワークライフバランス
- ストレスの軽減:単純で繰り返しの業務をAIが担うことで、オペレーターはストレスを感じやすい反復作業から解放されます。そうすると、職場のストレスが低下し、モチベーションの維持につながります。
- 専門スキルの活用と成長:AIによる基本的な問い合わせ対応に加え、オペレーターは専門的な問い合わせや複雑なケースに集中できるようになります。結果スキルアップとキャリアの成長につながり長く会社に勤めようと思うようになります。
- ワークライフバランスの改善:作業効率の向上は、業務時間の短縮や自由な勤務体制の導入を可能にし、ワークライフバランスが改善されます。
3. オペレーター満足度と企業の恩恵
- 従業員の満足度向上:オペレーターの仕事の質が向上し、ストレスが減少することで、職場の満足度が高まり、離職率の低下につながります。
- 企業へのプラス効果:オペレーターの満足度向上は、直接的にサービス品質の向上にも繋がり、顧客満足度の向上に貢献します。企業全体のブランドイメージの向上とビジネスの成長が期待できます。
AIの導入によるオペレーターの負担軽減は、単に業務効率の向上に留まらず、従業員の満足度、ワークライフバランスの改善、そして企業全体の成長へと繋がりますよ!
メリット②:顧客満足度の向上
1. 迅速かつ正確な応答
- 即時対応の提供:AIチャットボットや自動応答システムは、顧客からの問い合わせに対して即座に反応し、待ち時間を削減します。これにより、顧客は迅速なサービスを受けることができ、満足度が高まります。
- 正確な情報提供:AIは膨大なデータベースから最適な情報を抽出し、正確な回答を提供することが可能です。このことから、顧客は必要な情報を正確に、迅速に入手することができます。
AIチャットボットとは?
人工知能(AI)を基盤として開発された自動応答システムのことです。
人間のように自然言語を理解し、対話を通じてユーザーの質問に答えることができます。
自動応答システム(IVR)とは?
コンピューターが電話やインターネットで質問に自動で答える仕組みです。
例えば、電話にかけると「1を押してください、2を押してください」と案内するシステムになります。
人が直接応対することなく、質問に答えたり情報を提供したりできるため、忙しい時でもすぐに対応できる便利なツールです。
2. パーソナライズされた対応
- 顧客履歴の活用:AIは過去の顧客の問い合わせ履歴や購買履歴を分析し、個々の顧客に合わせた対応を行うことができます。これにより、顧客はよりパーソナライズ(ユーザーの趣味嗜好を分析すること)された体験ができます。
- ニーズの予測と提案:AIは顧客の行動パターンを分析し、未来のニーズを予測することができます。この情報を基に、顧客に有益な情報が提供できます。
3. 24/7のサービス提供
- 時間に制約されないサービス:AIシステムは時間の制約を受けず、24時間365日、いつでもサービスの提供が可能です。緊急な時、必要に応じて顧客はいつでもサポートを受けることが可能となります。
4. フィードバックと改善
- 顧客フィードバックの収集と分析:AIは顧客からのフィードバックを収集し、分析することでサービスの改善点を特定できます。改善点を見直し、継続的なサービスの質の向上が可能となります。
AIによる顧客満足度の向上は、コールセンターのサービス品質を大きく変革することができます。顧客の期待に応え、満足度を高めることは、企業のブランド価値と顧客獲得の向上につながりますよ!
メリット③:業務の属人化の防止
1. 情報共有とアクセスの容易化
- まとまった知識ベース:AIシステムは、まとまった知識を利用して情報を提供します。そうすることで、全てのオペレーターが同じ情報にアクセスし、整理された高品質なサービスを提供できるようになります。
- 最新情報の自動更新:AIシステムは常に最新の情報を保持し、必要に応じてデータベースを自動更新します。情報のアップデートによりオペレーターが古い情報を基に対応するリスクを減らすことができます。
2. サービス品質の均一化
- 一貫した応答品質:AIによる自動応答やチャットボットは、応答のクオリティが一貫しています。なので、オペレーター個人のスキルや経験に依存することなく、全顧客に対して均質なサービスの提供が可能となります。
3. オペレーターの役割と能力開発
- オペレーターの専門性向上:AIが基本的な問い合わせに対応し、オペレーターはより専門的な問題解決や高度な顧客対応に集中できます。時間的な余裕が生まれ、オペレーターのスキルと専門性も向上します。
- 柔軟な役割分担:AIのサポートにより、オペレーターはより多様な業務に携わることができ、役割の柔軟な分担が可能になります。その結果、職場内でのキャリア向上につながります。
4. 効率的なトレーニングと適応トレーニング
- 新人オペレーターの迅速な研修:AIによるトレーニングツールを活用することで、新入社員の研修を効率的かつ迅速に行えます。短期間でサービスのレベル向上も視野に入れることができます。
AIの導入による業務の属人化(一人に任せきり)の防止は、コールセンターにおけるサービス品質の安定化、オペレーターの能力開発、効率的な運営に成長できます。
メリット④:運営管理・マーケティングの改善
1. データと連動した意思決定
- 詳細なデータ分析:AIはコールセンターの運営データをリアルタイムで分析し、詳細なレポートを提供します。このデータを活用することで、より効果的な意思決定が可能になります。
- トレンドとパターンの特定:顧客の行動パターンや傾向を特定し、これを基にサービスの改善や新しいやり方が見えてきます。
2. パフォーマンスの最適化
- 品質管理の強化:サービス品質をモニタリングし、問題が発生した場合に即座に対応を促すことができます。これにより、一貫したサービス品質を維持し、顧客満足度を高めることができます。
3. マーケティング戦略の強化
- パーソナライズされたマーケティング:顧客の過去の行動や好みに基づいて、顧客の動向などの情報が作成できます。より高いコンバージョン率(購入率)を実現することが可能になります。
4. 顧客体験の向上
- 顧客フィードバックの活用:顧客からのフィードバックを収集、分析してサービス改善に役立てたりします。これにより、顧客のニーズに合わせたサービスを提供し、顧客体験を向上させることができます。
AIの活用によって、コールセンターの運営管理とマーケティングは効果的なものになります。コールセンターの効率性、顧客満足度、ビジネスの向上に繋がることになります。
コールセンターでのAIの導入事例
以下でコールセンターで活用されているAIを紹介していきます。
AI導入事例①:対話型AIの導入(損害保険ジャパン)
導入企業名 | 損害保険ジャパン株式会社 |
事業内容 | 損害保険事業 |
従業員数 | 21,705名 |
AI導入前の課題 | ・大規模災害時に、事故サポートセンターへの問い合わせが集中し、対応が困難になる。 ・交通機関の乱れにより、コールセンターのオペレーターが出社できない場合がある。 |
AI導入成果 | ・1時間あたり最大3000件の保険金請求連絡を受け付けられるようになり、災害時の対応力が向上。 ・対話型AIによる効率的な情報収集と登録により、業務の自動化と迅速化を実現。 |
損害保険ジャパンは2023年1月、NTTコミュニケーションズの対話型AI「COTOHA Voice DX Premium」を導入し、コールセンターの運用を開始した。この対話型AIは、オペレーターが対応できない場合や顧客が選択した場合に、保険金請求の手続きに必要な情報を聞き出し、システムに登録する。将来的には、顧客からの被害写真の送信なども可能にする予定である。
対話型AIをクラウドサービス上で実装することで、首都直下地震などの大規模災害時にも、平時の100倍以上の連絡に対応できるようになった。損保ジャパンは、WebやLINEでの連絡受付も用意しているが、多くの顧客は電話を選ぶため、大量の電話に対応可能な仕組みが必要不可欠だった。
この導入により、1時間あたり最大3000件の保険金請求連絡を受け付けられるようになり、災害時の顧客対応力が大幅に向上した。また、対話型AIによる効率的な情報収集と登録は、業務の自動化と迅速化にも貢献している。損保ジャパンは、AIを活用した革新的なサービスで、顧客満足度の向上と業務の最適化を実現している。
AI導入事例②:生成AIでコールセンター業務の自動化(ソフトバンク株式会社)
導入企業名 | ソフトバンク株式会社 |
事業内容 | 移動通信サービスの提供、携帯端末の販売、固定通信サービスの提供、インターネット接続サービスの提供 |
従業員数 | 54,986名 |
AI導入前の課題 | ・コールセンターでの多様な問い合わせに対し、オペレーターの対応に時間がかかり、お客さまの待ち時間が長くなる。 ・オペレーターによって対応の質にばらつきがあり、均質な顧客対応が困難。 |
AI導入成果 | ・生成AIを活用したLLM自律思考型のシステムにより、お客さまの待ち時間を短縮し、スピーディーな対応が可能に。 ・AIによる最適な回答の提供により、対応の均質化を実現し、顧客満足度の向上を目指す。 |
ソフトバンクは、日本マイクロソフトと共同で、生成AIを活用したコールセンター業務の自動化を加速するプロジェクトを開始しました。2024年7月以降、ソフトバンクの自社コールセンターに順次導入し、お客さまの待ち時間短縮と対応の均質化を図ることで、顧客満足度の向上を目指すとのことです。
- ソフトバンクのコールセンターでは、1万以上の業務が存在するが、問い合わせ内容の案内や契約内容の照会、変更手続きなどを中心に、生成AIを活用していくとのこと。具体的には、LLMがお客さまの問い合わせ内容を判断し、データソースから情報を収集して最適な回答を行う、LLM自律思考型のシステムを開発する予定です。
- また、ソフトバンクのサービス内容やオペレーターの対応パターンなどの大量の情報を基にプロンプティングを行い、Azure AI Searchを活用してRAGでの連携により、社内のデータベースを参照し、お客さまへの最適な回答を素早く導き出すことにも努めるそうです。
将来的には、効果検証の結果を踏まえ、ソリューション化および法人顧客向けの提供も検討していく方針のようです。
AI導入事例③:AI電話サービス()
導入企業名 | 日本電信電話株式会社 |
事業内容 | 総合ICT事業、地域通信事業、グローバル・ソリューション事業など |
従業員数 | 338,651名 |
AI導入前の課題 | ・人手による電話応対は、時間とコストがかかり、業務効率が低い。 ・電話業務の自動化が困難で、バックオフィス業務まで自動化できない。 |
AI導入成果 | ・AIによる自然な発話で電話応対を行い、業務の効率化とコスト削減を実現。 ・RPAを通じて既存システムとも連携可能なため、バックオフィス業務まで自動化が可能に。 |
NTTドコモは、独自の音声認識技術を用いた電話業務自動化ボイスボット「AI電話サービス」を提供しています。このサービスは、AIによる自然な発話で電話応対を行い、RPAを通じて既存システムとも連携可能なため、自動応対後のPC操作などのバックオフィス業務まで自動化できます。
- AI電話サービスの特長は、50種類以上の音声を用意しており、利用シーンに合わせた音声UIの実装が可能な点だ。また、クラウドサービスのため保守費が不要で、Amazon Connectやお客様の既存システムとの連携も可能なため、導入がスピーディーでかんたんである。
- 利用シーンは多岐にわたり、金融、オフィス、インフラ、飲食・ホテル・美容・不動産、物流、医療、自治体など、さまざまな業界で活用できる。具体的には、口座変更手続きの送付、店舗案内、代表電話取り次ぎ、面接の日程調整、サービスお申し込み、変更、解約手続き、お支払い状況の確認、来店予約・変更・キャンセル、予約日前日のリマインド、荷物の再配達、予防接種・健診予約、診療時間案内、ワクチン、地域サービスの予約、粗大ごみのお申し込み、高齢者のみまもり電話、災害時の一斉連絡など、多様な業務に対応可能だ。
AI電話サービスは、業務の効率化とコスト削減を実現し、顧客満足度の向上にも貢献します。NTTドコモの音声認識技術とAIを活用したこのサービスは、電話業務自動化の新たな可能性を切り開いているのです。
AI導入事例④:カスタマーサポートにAI導入(東京ガス株式会社)
導入企業名 | 東京ガス株式会社 |
事業内容 | [エネルギー・ソリューション] 都市ガスの製造および販売、LNG販売 電気の製造・供給および販売 エンジニアリングソリューション事業 ガス器具、ガス工事、建設等 [ネットワーク] ガス導管事業、都市ガス供給事業 [海外] 海外における上流事業、中下流事業等 [都市ビジネス] 不動産開発、土地・建物の賃貸・管理等 |
従業員数 | 15,963名 |
AI導入前の課題 | ・事業拡大に伴う電話対応・フローの複雑化により、顧客対応が難しくなっていた。 ・顧客対応時に必要な情報が見つけづらく、オペレーターの経験値によって対応レベル差が発生していた。 |
AI導入成果 | ・AIの音声認識と高度な検索機能により、適切な情報を自動的に提示し、業務効率化と意思決定のサポートを実現。 ・オペレーターから管理者へのエスカレーション率を14%削減、応答時間を平均10秒短縮。 |
東京ガスカスタマーサポートでは、低コストで正確な対応を追求し、将来的にはグループの利益向上における重要な戦略ポジションを担うことを目指しています。しかし、事業拡大に伴う電話対応・フローの複雑化や、顧客対応時に必要な情報が見つけづらいなどの課題が発生し、オペレーターの経験値によって対応レベル差が出ていました。
- この課題解決のため、参照する情報の一元管理やAIを活用したツールを導入し、情報が見つけやすく、活用しやすい仕組みづくりを開始した。具体的には、AIの音声認識と高度な検索機能を活用し、会話内容をAIに判断させ、自動的に適切な情報を提示、ワンクリックで検索できるようにした。
- AIツールの導入により、オペレーターから管理者へのエスカレーション率を14%削減、オペレーター応答時間は平均10秒短縮、年間1万1000時間の応対時間削減とお客さま満足度の向上という成果を達成した。また、未経験者のOJTや教育の時間の軽減にもつながっている。
- 将来的には、AIが定型のお問い合わせの受付対応を担い、オペレーターがより付加価値の高い業務に専念できる環境の構築を目指している。独自のアレンジ機能の追加や検索精度の向上を図り、企業が持つデータの価値を最大化し、最新のデータを現場の最前線で活用していく取り組みを継続していく方針だ。
東京ガスグループでは、新たな技術を積極的に採用し、お客さま価値向上を目指していくとのことです。AIを活用した業務効率化と顧客満足度の向上は、コールセンター運営における重要な戦略となっています。
AI導入事例⑤:AI音声ボットの導入(株式会社みずほ銀行)
導入企業名 | 株式会社みずほ銀行 |
事業内容 | 預金業務. 預金 · 貸出業務. 貸付 · 商品有価証券売買業務. 国債等公共債の売買業務 |
従業員数 | 24,652名 |
AI導入前の課題 | ・相場変動による繁閑差が大きく、つながりにくい時があった。 ・休日・夜間の対応や、電話での簡単な手続きを求めるお客さまのニーズに応えられていなかった。 |
AI導入成果 | ・24時間365日の対応が可能となり、お客さまの利便性が向上した。 ・導入当初は月82件だった利用が、2023年4月には月4,000件の応対を達成し、コールセンターの効率化を実現。 |
みずほ証券のコールセンターでは、お客さまの利便性向上とコールセンター運用の効率化を目指し、2021年に人工知能(AI)を実装した自然言語処理システム「AI音声ボット(ボイスボット)」を導入しました。ボイスボットは、音声合成技術を活用し、お客さまからの質問に対して柔軟に応える自然な会話を実現しています。
- 導入当初は書類送付受付業務から開始し、お客さまの実際の声をもとにボイスボットを継続的にアップデートしてきた。具体的には、会話音声データを分析して離脱ポイントを特定し、エラー対策を検討・実装するサイクルを繰り返した。その結果、導入当初は月82件だった利用が、2023年4月には月4,000件の応対を達成した。
- ボイスボットの導入により、24時間365日の対応が可能となり、お客さまの利便性が向上した。特に、電話を好むシニア層にとって使いやすいサービス設計が評価され、「コンタクトセンター・アワード2022」のストラテジー部門で最優秀賞を受賞した。
- 現在も、より複雑な問い合わせに対応できるよう、ボイスボットの機能拡充に取り組んでいる。また、WEB上での操作に困っているお客さまへ能動的にサポートを提案するプロアクティブなツールの対象ページ拡大や回答の質の向上にも挑戦している。
みずほ証券は、お客さまが快適にサービスを利用できるように、ボイスボットをはじめとするAIツールのアップデートを継続的に行い、お客さま満足度の向上とコールセンター運用の効率化を実現していく方針とのことです。
AI導入事例⑥:AIオペレーターの導入(株式会社ジェーシービー)
導入企業名 | 株式会社ジェーシービー(JCB Co., Ltd.) |
事業内容 | クレジットカード業務、クレジットカード業務に関する各種受託業務、融資業務、集金代行業務、前払式支払手段の発行ならびに販売業およびその代行業 |
従業員数 | 4,421名 |
AI導入前の課題 | ・従来の自動音声応答システム(IVR)では、メニュー番号選択の操作が必要で、お客様の利便性に課題があった。 ・オペレーターに繋がるまでの待ち時間が長く、着信後のオペレーター間での転送もあり、お客様にストレスを与えていた。 |
AI導入成果 | ・AIオペレーターとの自然な会話から適切な専門デスクのオペレーターや自動完結IVRに素早く振分けることで、待ち時間の大幅な短縮を実現。 ・オペレーター間での転送を回避することで、お客様の利便性向上とストレスの軽減を達成。 |
株式会社ジェーシービー(JCB)は、お客様満足度やサービス品質の向上を目的として、IBM Watsonを活用した対話型自動音声応答システム「AIオペレーター」の提供を開始しました。AIオペレーターは、音声認識技術と自然言語処理、合成音声技術を組み合わせたシステムで、お客様との自然な会話のやり取りが可能となる。
- JCBではインフォメーションデスクにAIオペレーターを導入し、クレジットカード業界では先進的な取り組みとなる。お客様がJCBへお電話された際、AIオペレーターとの自然な会話から適切な専門デスクのオペレーターや自動完結IVRに素早く振分けることで、待ち時間の短縮やオペレーター間での転送を回避し、利便性向上とストレスの軽減を実現する。
- 当面はインフォメーションデスクの一部回線で導入し、AIの精度を高めたうえで、年間190万件のお電話を対象に順次拡大をめざす。
- 本AIオペレーターは、日本アイ・ビー・エム株式会社(日本IBM)がIBM Watsonの機能をIBM Cloud上で提供し、キンドリルジャパン株式会社(キンドリル)がコールセンターのシステム構築における豊富な実績と業界知識を生かして、AIを活用したシステムの構築を支援した。
JCBは、今後もお客様により便利で使いやすいサービスを提供できるよう、取り組んでいく方針です。このAIオペレーターの導入により、JCBはお客様サービスの革新を進め、業界をリードする存在としての地位を強化していくようです。
AI導入事例⑦:通話内容をAIで要約(JR西日本)
導入企業名 | 西日本旅客鉄道株式会社 |
事業内容 | 運輸業/流通業/不動産業/その他 |
従業員数 | 44,897名 |
AI導入前の課題 | ・オペレーターによる応対記録の要約作業に大きな労力がかかっていた。 ・オペレーターごとに要約品質にばらつきがあり、VOC(顧客の声)分析が難しかった。 |
AI導入成果 | ・音声認識で書き起こしたテキストを貼り付けるだけで、自動で要約結果を出力できるようになり、オペレーターの負荷が軽減された。 ・要約品質が均質化され、VOC分析がしやすくなった。 |
JR西日本カスタマーリレーションズ(JWCR)は、コンタクトセンターでの通話内容を要約する用途で生成AIを導入し、本番運用を開始しました。これにより、オペレーターによる要約作業やスーパーバイザーによるチェック作業にかかる負荷が減り、要約品質も均質化することでVOC分析がしやすくなるそうです。
- JWCRのコンタクトセンターでは、月間約7万件の問い合わせを電話で受け、応対記録をテキストで保存しているが、要約作業に大きな労力がかかり、オペレーターごとに要約品質にばらつきがあった。新たに導入したAIシステムでは、音声認識によって書き起こしたテキストを貼り付けるだけで、自動で要約結果を出力できる。
- 2023年5月~8月の検証では、後処理時間が長い3つの業務領域(問い合わせ、意見・要望、介助申込)において、電話要約AIを利用することで後処理時間が18%~54%短縮された。
- 生成AIには、ELYZAがAzure OpenAI ServiceのGPTをベースに開発したものを使用し、問い合わせ内容によってGPT-3.5とGPT-4を使い分けることでコストを抑えている。また、要約処理の前に音声データからフィラー(不要語)を除去する前処理システムと、要約出力後にJWCRの表現や表記のルールに従って記載を修正する後処理システムも開発された。
この生成AIの導入により、JWCRのコンタクトセンターでは業務効率化と品質向上を実現し、より良い顧客対応を目指しています。
コールセンターにAIを導入する際の注意点
AIというのは様々な情報やネットワークから網羅した情報を提供しているだけなので、顧客が違う事柄を問い合わせたときに、もしインプットしたマニュアルから提案できない場合、違った対応をしてしまう恐れもあります。
なので、人間による取り扱い方が非常に重要になります。
次はコールセンターにAIを導入する際のポイント・注意点についてお話しします。AIの導入はただ技術を取り入れるだけでなく、その活用方法や対応策をしっかり理解しておく必要があります。では、解説していきます。
AIを導入する目的を明確にしておくこと
コールセンターでのAI導入において、その目的を明確にすることは成功への第一歩です。明確な目的があることで、AI導入の方向性が決まり、その効果を最大限に活用できます。以下に、目的の明確化の重要性と具体的なアプローチを深掘りしてみましょう。
1. サービス品質の向上を目指す
- 顧客体験の改善:AIを導入する主な目的の一つは、顧客体験の向上です。迅速で正確な応答は、顧客の満足度を高めることに繋がります。
- 問題解決の効率化:AIは複雑な問題を迅速に解決する手助けをします。これにより、顧客からの問い合わせに対する迅速かつ的確な対応が可能となります。
2. オペレーターの負担軽減
- 労働環境の改善:AIの導入はオペレーターの労働環境を改善することも目的です。反復的な業務の自動化により、オペレーターはやりがいのある業務に集中できます。
- ストレス軽減とモチベーションの向上:日々の業務負担の軽減は、オペレーターのストレスを減らし、職場のモチベーション向上につながります。
3. 効率的な業務運営
- コスト削減と効率化:AIの導入はコールセンターの運営コストを削減し、業務の効率化を実現します。これは、長期的な経済的メリットにつながります。
- 業務プロセスの最適化:AIは業務プロセスの分析、改善を行い、業務の流れの最適化と効率的なリソース配分を可能としています。
トラブル発生時の対応マニュアルを定めておくこと
コールセンターでのAI導入においては、技術的な障害や予期せぬ問題が発生する可能性もあります。
このような状況に効果的に対応するためには、具体的な対応の仕方を確立する必要があります。
1. トラブルの種類と対応策の特定
- トラブルの予測:AIシステムの導入において考えられるトラブルの種類を特定し、それぞれに対する具体的な対応策を準備します。これには、システムのダウンタイム、誤った情報の提供、顧客とのコミュニケーションの不具合などが含まれます。
- 対応手順の策定:各種トラブルに対して、ケースバイケースの対応手順を策定します。
2. オペレーターのトレーニング
- トラブル対応のトレーニング:オペレーターに対して、トラブル発生時の対応手順を徹底的にトレーニングします。例えば、顧客がAIの機械的な応答に対し、クレームをつける時など、顧客とのやり取りを遠隔的に管理して、早急に対応に移るなど。
- 上司に解決策を求める:トラブルがどうしてもオペレーターの対応範囲を超える場合は上司に報告する癖を日頃から訓練することで、迅速に対処することができます。
3. 継続的な改善
- 詳細の分析:発生したトラブルを詳細に記録し、その原因と対応の有効性を定期的に分析し、将来的なトラブルを未然に防げたりします。
- フィードバックの活用:オペレーターや顧客からのフィードバックを活用し、マニュアルの改善を行うことで、柔軟なトラブル対応に役立ちます。
定期的なメンテナンスを行うこと
コールセンターでのAI導入における成功は、定期的なメンテナンスによって大きく左右されます。メンテナンスはAIシステムを最適な状態に保つために大事なことです。
1. システムの定期的な更新と最適化
- ソフトウェアのアップデート:ソフトウェアのアップデートを定期的に行い、セキュリティの向上や新機能の追加を図ります。
- パフォーマンスの監視と最適化:AIシステムのパフォーマンスを継続的に監視し、必要に応じて最適化を行います。
2. データの管理と分析
- データクレンジング:AIシステムの効果は、使用されるデータの質に大きく依存します。定期的にデータクレンジング(破損したデータの修正)を行い、誤った情報や重複データを排除します。
- データ分析の実施:収集されたデータを定期的に分析し、より精度の高い応答とサービス提供が可能になります。
3. ユーザー体験の改善
- フィードバックの収集と活用:AIシステムのユーザー体験を評価するために、定期的にフィードバックを収集し、システム改善に活用します。
- インターフェースの改良:ユーザーインターフェースを定期的に見直し、使いやすさを向上させ、オペレーターの操作負担の軽減に貢献します。
4. 技術サポートとトレーニング
- 技術サポートの提供:AIシステムの効果的な使用を支援するために、定期的な技術サポートを提供します。
- オペレーターの継続的なトレーニング:新しい機能や変更点についてAIを使いこなせるようにオペレーターを継続的にトレーニングします。
定期的なメンテナンスや、オペレーターのAIシステム管理は柔軟な対応を行うためにも必要なことですね。
自分たちの業務で精一杯で、AIの管理となると複雑な点はいっぱいあると思いますが、顧客のアフターケアなど細かい部分を人間で行い、よくある質問など簡易的な部分はAIに任せるといった役割が確立できれば、業務負担がもっと減ることでしょう。
まとめ
いかがでしたでしょうか?これからの時代、AIを活用したシステムはもっと多くなってくるでしょう。今の自分の会社に導入しているシステムは果たして、業務効率化のために最善を練ったシステムでしょうか?
今回はコールセンターのAI導入のメリットと課題点を見てきました。チャットボットやIVR(Interractive Voice Response=音声自動応対システム)などが取り入れて、様々な業界に変革をもたらしています。他にも、ボイスボット(AI自動応答)や声紋認証など、コールセンターにはAIを活用してる事例があります。
もちろん、AIを取り扱う上では、人間による定期的見直しが必要なので、扱うためのスキルは身につけないといけませんが、1人ひとりが正しくAIと向き合い、同じ会社の良きパートナーとして業務改善や離職率低下のために、AIの導入を取り入れてみてはいかがでしょうか。
この記事が会社のシステム改善の一役になれば幸いです。