保育業界におけるAI・ChatGPTの活用事例を紹介!AI導入のメリット・デメリットも詳しく解説 | romptn Magazine

保育業界におけるAI・ChatGPTの活用事例を紹介!AI導入のメリット・デメリットも詳しく解説

AI×業界

保育業界では、AI技術の発展に伴い、保育の質の向上や業務効率化を目的としたAIの活用が注目を集めています。特に、自然言語処理AI「ChatGPT」は、その高度な対話能力から、保育現場での活用が期待されています。

本記事では、保育業界におけるAIやChatGPTの具体的な活用事例を紹介するとともに、AI導入がもたらすメリットとデメリットについて詳しく解説します。AIを効果的に活用することで、保育士の負担軽減や子どもたちへのきめ細やかな対応が可能になる一方で、AIに過度に依存することのリスクについても考察します。

保育現場でのAI活用に興味をお持ちの園長先生、保育士の方々、また、AIや保育業界の動向に関心のある読者の皆様にとって、本記事が有益な情報源となることを願っております。それでは、保育業界におけるAI・ChatGPTの活用について、具体的に見ていきましょう。

本記事は、2024年4月時点での情報となります。

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保育現場でAIが導入・活用される理由とメリット

保育現場でAIが導入・活用される主な理由・メリットは、業務の効率化、保育の質の向上、保育士の専門性向上、保護者とのコミュニケーション改善、および客観的なデータに基づく意思決定の5点が挙げられます。

メリット①:業務の効率化ができる

AIを活用することで、保育士の事務負担を大幅に軽減できます。書類作成や記録管理などの事務作業をAIが自動化することで、保育士がより多くの時間を子どもとの直接的な関わりに充てられるようになります。

また、AIによる保育計画の作成支援により、保育士の計画立案にかかる時間を短縮できます。

さらに、子どもの出欠管理や保護者とのコミュニケーションをAIが補助することで、連絡漏れを防ぎ、円滑な情報共有が可能となります。

メリット②:保育の質の向上につながる

AIを活用することで、保育の質を向上させることができます。AIによる子どもの発達状況の詳細な分析や、一人一人に合わせた個別の学習計画の提案により、きめ細やかな保育を実現できます。

また、保育士の経験や知識をAIに学習させることで、ベテラン保育士のノウハウを共有し、全体の保育の質を底上げできます。

加えて、AIによる危険予知や事故防止の支援により、子どもの安全をより確実に確保できるようになります。

メリット③:保育士の専門性向上につながる

AIの導入は保育士の専門性向上にも寄与します。AIが事務作業を代行することで、保育士が子どもとの関わりや保育の質の向上により多くの時間を割けるようになり、自身の専門性を高める機会が増えます。

また、AIを活用した研修プログラムにより、保育士の知識やスキルを効率的に習得できます。これにより、保育士の専門性を継続的に向上させ、より高度な保育サービスの提供が可能となります。

メリット④:保護者とのコミュニケーション改善につながる

AIの活用は保護者とのコミュニケーション改善にも役立ちます。AIを活用したアプリやシステムにより、保護者との連絡をスムーズに行えます。子どもの園での様子をAIが分析し、保護者に分かりやすく伝えることができます。

また、AIによる子育て相談の対応により、保護者の不安や悩みに24時間365日対応できるようになります。これにより、保護者との信頼関係を築き、円滑な協力体制を構築できます。

メリット⑤:客観的なデータに基づく意思決定ができる

AIの導入により、客観的なデータに基づく意思決定が可能となります。AIが蓄積した子どもの発達状況や保育の質に関する定量的なデータを分析することで、園運営における意思決定を客観的な根拠に基づいて行えます。これにより、PDCAサイクルを効果的に回し、保育の質の継続的な改善を実現できます。

保育業界でのAI活用のデメリット・問題点

保育業界でのAI活用には、いくつかのデメリットや問題点が存在します。

デメリット・問題点①:プライバシーとセキュリティの懸念

AIを活用する上で、子どもや保護者の個人情報を大量に収集・分析する必要があります。この際、個人情報の適切な取り扱いやセキュリティ対策が不可欠です。万が一、データ漏洩や不正アクセスが発生した場合、子どもや保護者のプライバシーが侵害され、深刻な被害につながる可能性があります。

また、AIによる子どもの行動分析や評価が、プライバシーの観点から倫理的な問題を引き起こす可能性もあります。したがって、AIを導入する際は、個人情報保護法の順守や、厳重なセキュリティ対策の実施、倫理的な配慮が求められます。

デメリット・問題点②:人間的な関わりの減少

AIの導入により、保育士の事務作業が軽減され、子どもとの関わりに多くの時間を割けるようになる一方で、AIに過度に依存することで、保育士と子どもとの直接的なコミュニケーションが減少する恐れがあります。保育において、人間的な関わりや情緒的な交流は非常に重要です。AIにはこうした人間的な温かみを提供することは困難であり、子どもの情緒的発達に悪影響を及ぼす可能性があります。

また、AIによる画一的な対応では、子ども一人一人の個性や特性に合わせたきめ細やかな配慮が難しくなる恐れもあります。したがって、AIを活用する際は、あくまでも保育士の支援ツールとして位置付け、人間的な関わりを大切にすることが肝要です。

デメリット・問題点③:コストと導入の難しさ

AIを導入するには、初期費用や運用費用、メンテナンス費用など、多額のコストがかかります。特に、中小規模の保育園にとっては、AIシステムの導入は大きな経済的負担となります。

また、AIを効果的に活用するには、保育士のAIリテラシーの向上や、園全体のIT環境の整備が必要です。こうした体制づくりには、時間と労力を要します。

さらに、AIシステムの導入や運用には、専門的な知識を持ったIT人材が不可欠ですが、保育業界ではIT人材が不足しているのが現状です。したがって、コストや人材、体制面での課題をクリアできなければ、AIの導入は難しくなります。

保育現場でも活用されるAI技術

保育現場でも活用されるAI技術には、おもに以下の2つがあります。

①保育士に代わって子どもの安全を確保する「子ども見守り機能」

子ども見守り機能は、AIを活用して子どもの安全を確保するシステムです。具体的には、カメラやセンサーを用いて子どもの行動を常時監視し、危険な状況を検知した際に保育士にアラートを送信します。

例えば、子どもが一定時間動かない場合や、通常の活動範囲から外れた場合、転倒したり、高所から落下しそうになった場合など、AIが異常な状況を察知すると、即座に保育士のスマートフォンやタブレットにアラートが送られます。これにより、保育士は迅速に対応できるため、事故を未然に防ぐことができます。

また、AIが子どもの行動パターンを学習することで、個々の子どもの特性に合わせた見守りが可能となります。例えば、多動傾向のある子どもに対しては、より注意深く見守ることができます。

さらに、こうした見守り機能は、保育士の目が届きにくい場所や時間帯でも有効です。例えば、午睡時や園庭での活動時など、保育士が全ての子どもを同時に監視することが難しい状況でも、AIが子どもの安全を確保することができます。

②保育士の事務作業の負担低減・労働環境の改善「ICTシステム」

保育現場では、子どもの成長記録や保護者とのコミュニケーション、各種書類の作成など、多くの事務作業が発生します。ICTシステムは、これらの事務作業をAIやデジタル技術を用いて効率化するものです。

例えば、子どもの出欠管理や保育日誌の作成、保護者への連絡などをICTシステムで一元管理することで、手作業による事務負担を大幅に減らすことができます。また、AIを活用して、子どもの成長記録を自動的に分析・評価することで、保育士の観察力や評価力を補完できます。

さらに、ICTシステムを導入することで、保育士間の情報共有がスムーズになります。子どもの成長記録や家庭での様子など、保育に必要な情報をデジタルデータとして蓄積・共有できるため、保育士間の連携が強化されます。

また、保護者とのコミュニケーションにおいても、ICTシステムが活用できます。例えば、子どもの園での様子を写真や動画で共有したり、連絡帳をデジタル化したりすることで、保護者との情報共有を円滑に行えます。

ICTシステムの導入により、保育士の事務作業が効率化され、労働環境の改善につながります。これにより、保育士はより子どもとの関わりに注力できるようになり、保育の質の向上が期待できます。

保育現場でのAI導入・活用事例

以下で保育業界で活用されているAIを紹介していきます。

導入事例①:顔認証AI解錠システム(創功エンジニアリング/F&Iクリエイト)

引用:Yahoo!JAPANニュース
導入企業名株式会社 創功エンジニアリング
事業内容1. 防犯・防災機器の販売、並びにシステム設計、制作、施工、保守管理
2. 監視システム、電気施錠システム(テンキー・カード式)の設計、施工、保守管理
3. その他の強弱電設備機器(情報機器・通信機器)の設計、施工、保守管理
4. インターホン設備販売施工、修理点検
5. LAN配線工事
従業員数10名
AI導入前の課題・従来の入園証では、偽造や紛失によるなりすましや情報の悪用といったセキュリティリスクがあった。
・保護者への説明や情報登録に関する園側の作業負担が大きかった。
AI導入成果・登録された保護者の顔認証により解錠するため、セキュリティが大幅に向上した。
・保護者自身がスマートフォンから情報を登録できるようになり、園側の作業負担が軽減された。
参考:株式会社 創功エンジニアリング

創功エンジニアリングとF&Iクリエイトが共同開発した保育施設の解錠自動化システム「MISIRU(ミシル)」が正式にリリースされました。このシステムは、顔認証AI搭載のリーダーと南京錠を連動させ、登録された保護者の顔を認識することで門扉の解錠を自動化します。

  • 「MISIRU」には、クラウドPBXを活用したオプション機能もあり、門扉認証カメラ、サーバー、園内事務所モニタ、スマートフォンなど、様々なデバイスを連携させることができます。これにより、来客時の遠隔解錠や、窓口対応のスマートフォンへの直接転送などが可能になります。
  • 従来の入園証では、偽造や紛失によるなりすましや情報の悪用といったリスクがありましたが、「MISIRU」では登録された保護者の顔認証により解錠するため、セキュリティが大幅に向上します。また、保護者自身がスマートフォンから情報を登録できるため、園側の作業負担も軽減されます。
  • さらに、「MISIRU」は幼稚園、幼稚園型認定こども園を対象にした園務改善のためのICT化支援事業補助金(文部科学省)の対象事業であるため、導入費用の軽減も期待できます。

この画期的なシステムにより、保育施設の安全性と利便性が大きく向上し、保育士の業務効率化にも貢献することが期待されます。「MISIRU」は、保育業界におけるAIとICTの活用事例として注目に値するでしょう。

導入事例②:AIによる事務作業の導入(小樽市)

引用:mamatalk

小樽市は、認可保育所の入所選考業務に人工知能(AI)を本格的に導入し、大幅な効率化を実現しました。これにより、職員の負担が軽減され、保護者への結果通知も早まるなど、保育サービスの向上につながっています。

  • 従来、入所選考は職員6人が丸2日かけて行っていましたが、AIの導入により作業時間は2分に短縮されました。申請書のデータ入力は手作業で行う必要がありますが、選考作業自体は大幅に効率化され、職員の残業も不要になりました。
  • また、作業スピードの向上により、保護者への選考結果の通知も3日程度早まりました。これにより、希望に添えなかった場合でも、保護者は次の対応により迅速に動くことができます。

小樽市は、道内でも保育所選考へのAI導入は珍しいケースであり、先進的な取り組みといえます。今後は、AI導入の効果を詳しく検証し、庁内のデジタルトランスフォーメーション(DX)化をさらに推進していく方針です。また、利用申し込みの際の申請書の電子化も検討されています。

この事例は、AIを活用することで、自治体の業務効率化と住民サービスの向上を同時に実現できることを示しています。小樽市の取り組みは、他の自治体にとっても参考になるでしょう。

導入事例③:AIカメラ導入でうつぶせ寝防止対策(アリスこどもの家幼稚園)

引用:FNNプライムオンライン

宮崎市の認定こども園「アリスこどもの家幼稚園」では、乳幼児の昼寝中の事故防止のため、AI技術を活用した見守りカメラを導入しました。このカメラは、乳幼児の顔の向きを常時監視し、うつぶせ寝が30秒以上続くとアラームで保育士に知らせる仕組みになっています。

  • この取り組みは、宮崎市内の別の保育施設で起きた、うつぶせ寝をしていた0歳児の死亡事故を受けて実施されました。事故を受け、宮崎県内の全ての保育園や幼稚園に対策の徹底が求められる中、「アリスこどもの家幼稚園」では、子どもたちの安全を確保するためにAIカメラを導入することを決めました。
  • AIカメラは天井に設置され、1台で同時に10人の乳幼児を見守ることができます。カメラが乳幼児の顔の向きを仰向け・左・右・うつぶせの4方向で識別し、うつぶせ寝が30秒以上続くと警告音が鳴ります。これにより、保育士は素早く対応することができます。
  • 「アリスこどもの家幼稚園」では、これまでも保育士が5分ごとに目視で乳幼児の顔の向きを確認していましたが、AIカメラの導入により、より確実な見守りが可能になりました。ただし、AIカメラに頼るだけでなく、今後も保育士による目視でのチェックを継続し、うつぶせ寝による事故を防ぐ体制を整えています。

この事例は、AIを活用することで、保育現場における子どもたちの安全確保と事故防止に役立つことを示しています。今後、他の保育施設でも同様の取り組みが広がることが期待されます。

導入事例④:ICTサービス「ルクミー」導入(ソラストグループ)

引用:Enterprise Zine
導入企業名株式会社ソラスト
事業内容医療関連受託事業
介護事業
こども事業
教育事業
スマートホスピタル事業
従業員数34,219名
AI導入前の課題・保育士が5分間隔で手作業で行っていた園児のお昼寝管理業務に多くの時間と手間がかかっていた。
・園児のうつ伏せ寝や体動静止状態を常に監視することが難しく、安全管理に課題があった。
AI導入成果・「午睡チェック」機能により、お昼寝管理業務が自動化され、保育士の負担が大幅に軽減された。
・”ボタン式センサー”の導入により、うつ伏せ寝や体動静止状態を検知し、保育士へ通知する体制が整い、園児の安全管理が強化された。
参考:株式会社ソラスト

ソラストグループのこころケアプランは、運営する16の保育園において、ユニファが開発・提供する保育施設向け総合ICTサービス「ルクミー」の本格運用を2023年5月より開始しました。「ルクミー」の導入は、保育サービスの質の向上と保育現場の業務負荷軽減を目的としています。

  • 「ルクミー」には、登降園管理、保護者との連絡帳、専用アプリを活用したフォト共有、帳票管理、シフト管理など、多岐にわたる機能が備わっています。特に、「午睡チェック」機能の導入により、これまで5分間隔で手作業で行っていた園児のお昼寝管理業務が自動化され、保育士の負担が大幅に軽減されました。
  • また、園児の衣類に”ボタン式センサー”を装着することで、うつ伏せ寝や体動静止状態が続いた場合には、専用アプリを通じて保育士へ通知される仕組みも導入されています。これにより、園児の安全管理体制がさらに強化されました。
  • ソラストでは、こころケアプランに先駆けて、2022年4月からグループ会社運営の保育園に「ルクミー」を導入しています。その結果、連絡帳機能の活用により保護者とのコミュニケーションが円滑になるなど、保育サービスの質の向上につながっているとのことです。

この取り組みは、ICTを活用することで、保育現場の業務効率化と保育サービスの質の向上を同時に実現できることを示す好例といえます。今後、他の保育施設でも同様のシステム導入が進むことで、保育業界全体のDX(デジタルトランスフォーメーション)が加速することが期待されます。

導入事例⑤:AIマッチングサービスの開発(富士通)

引用:ITmedia NEWS
導入企業名富士通株式会社
事業内容サービスソリューション
ハードウェアソリューション
ユビキタスソリューション
デバイスソリューション
従業員数124,000名
参考:富士通株式会社

富士通は、自治体向けに保育所の入所選考業務を支援するAIソフトウェアの提供を開始しました。このソフトウェアは、自治体が定める入所選考基準と保護者の希望を基に、わずか数秒で数千人規模の児童を各保育所に割り当てることができます

  • 従来、保育所への入所選考は、保護者の申請書提出、自治体職員によるシステムへの情報入力、優先順位や入所条件を考慮した手動での選考、結果の通知という複雑なプロセスを経る必要がありました。特に、保護者の希望に応えつつ公平性を保とうとすると、選考作業は複雑化し、10日以上かかることもありました。
  • 富士通のAIソフトウェアは、この入所選考業務を自動化します。「ゲーム理論」を応用したアルゴリズムを活用し、申請者の希望条件に基づいて利得を点数化し、なるべく多くの人が高得点になるような割り当てを実現します。また、選考結果の説明機能も搭載し、公平性を確保しています。
  • 30以上の自治体で実証実験を行った結果、約8000人の匿名化データを用いて数秒で保育所の割り当てを行うことに成功しました。2018年中に滋賀県大津市での導入が予定されています。

このAIソフトウェアの導入は、自治体業務の効率化と保護者の満足度向上に貢献することが期待されます。富士通の取り組みは、自治体のDX(デジタルトランスフォーメーション)推進の一例として注目に値するでしょう。

まとめ

AIやChatGPTの活用は、保育現場の業務効率化と保育の質の向上に大きく貢献する一方で、プライバシーの懸念やコスト面での課題もあります。AI導入のメリットを最大化し、デメリットを最小限に抑えるためには、慎重な検討と適切な運用が不可欠です。

保育業界におけるAIの可能性を探りつつ、人間らしさや倫理性を大切にしながら、バランスの取れた活用方法を模索していくことが求められます。