BPO業界におけるAI・ChatGPTの活用事例を紹介!AI導入のメリット・デメリットも詳しく解説 | romptn Magazine

BPO業界におけるAI・ChatGPTの活用事例を紹介!AI導入のメリット・デメリットも詳しく解説

AI×業界

近年、AI技術の急速な発展により、ビジネスの在り方が大きく変わろうとしています。中でも注目を集めているのが、ChatGPTに代表される大規模言語モデルを活用したAIチャットボットです。BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)業界においても、AIやChatGPTの導入が進んでおり、業務効率化やコスト削減などのメリットが期待されています。

しかし、AIの導入には課題もあり、慎重に検討する必要があります。本記事では、BPO業界におけるAI・ChatGPTの活用事例を紹介するとともに、AI導入のメリットとデメリットについて詳しく解説します。これからAIの導入を検討している企業の皆様にとって、参考になる情報が得られるはずです。

本記事は、2024年4月時点での情報となります。

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現状のBPO業界の課題とは?

BPO業界には、以下のような課題が存在します。

課題①:人材の確保と育成ができていない

BPO事業では、大量の業務を処理するために多くの人材が必要とされます。しかし、単純作業が多いことから離職率が高く、優秀な人材の確保が難しいのが現状です。

また、スキルアップのための教育・研修にはコストと時間がかかり、人材育成も大きな課題となっています。

課題②:セキュリティとコンプライアンス問題

BPO事業者は、顧客企業の機密情報を扱うことが多いため、高度なセキュリティ対策が求められます。情報漏洩やデータ流出は、事業者の信頼を大きく損ねる可能性があります。

また、グローバルに事業を展開する場合、各国の法規制への対応も必要であり、コンプライアンス体制の構築が重要な課題となっています。

課題③:品質管理とサービスレベルの維持の問題

BPOサービスには、一定以上の品質とサービスレベルが求められます。しかし、大量の業務を処理する過程で、ミスや遅延が発生するリスクがあります。品質管理体制の強化と、継続的なサービス改善が必要不可欠です。

また、顧客企業との緊密なコミュニケーションを通じて、ニーズを的確に把握し、サービスレベルを維持・向上させていく必要があります。

課題④:技術革新への対応不足

AI、RPA、クラウドサービスなど、テクノロジーの進歩により、BPO業界のビジネスモデルは大きく変化しつつあります。これらの新技術を積極的に活用し、業務の自動化・効率化を図ることが求められます

一方で、技術導入には初期投資が必要であり、また、従業員のスキル転換など、変革への対応も課題となります。

課題⑤:グローバル競争の激化

BPO事業のグローバル化が進む中、海外の事業者との競争が激しくなっています。特にインドやフィリピンなど、人件費の安い国々の事業者は、価格面で競争力を持っています。日本の事業者は、高品質なサービスの提供や、高度な業務への特化など、差別化を図る必要があります。

また、グローバル市場での事業展開のためには、現地の文化や商習慣への理解、多言語対応なども求められます

BPO業界でAI・ChatGPTを活用するメリットとは?

BPO業界でAIやChatGPTのような技術を活用することには、多くのメリットがあります。以下にその主な利点を5つ紹介します。

メリット①:業務の自動化と効率化ができる

AIやChatGPTを活用することで、これまで人手で行っていた定型的な業務を自動化することができます。

例えば、問い合わせ対応や書類の分類、データ入力など、ルールベースで処理できる業務をAIに任せることで、大幅な効率化が図れます。その結果、人的リソースを高度な業務に振り向けることができ、生産性の向上につながります

メリット②:24時間365日の対応が可能

AIやChatGPTを活用したチャットボットは、休みなく24時間365日稼働することができます。これにより、時間や曜日を問わず、顧客からの問い合わせにリアルタイムで対応することが可能になります。人的リソースの制約がある中で、サービス提供時間を拡大できるのは大きなメリットです。

メリット③:多言語対応の強化につながる

グローバルにBPO事業を展開する上で、多言語対応は欠かせません。AIやChatGPTは、多言語の自然言語処理が得意であり、高い翻訳精度を持っています。チャットボットに多言語対応機能を組み込むことで、グローバル顧客とのコミュニケーションを円滑化できます。

また、AIを活用した自動翻訳により、マニュアルやFAQなどの各種ドキュメントを効率的に多言語化することも可能です。

メリット④:ナレッジマネジメントの高度化につながる

BPO事業では、顧客企業に関する様々な知識やノウハウが蓄積されます。これらのナレッジを体系的に管理し、適切に活用することが重要ですが、人的リソースに頼っていては限界があります。AIを活用することで、大量の文書データから自動的に知識を抽出し、ナレッジベースを構築することができます。

また、ChatGPTのようなナレッジ検索・応答機能を導入することで、従業員が必要な情報に素早くアクセスできるようになります。

メリット⑤:サービス品質の向上につながる

AIやChatGPTを活用することで、サービス品質の向上が期待できます。例えば、AIを活用した自動品質チェックにより、ミスや漏れを防ぐことができます。

また、ChatGPTを活用したチャットボットは、顧客の問い合わせ内容を理解し、適切な回答を提示することができます。

さらに、チャットボットとの対話データを分析することで、顧客のニーズや課題を把握し、サービス改善に役立てることもできます。

BPO業界でAIを導入するデメリットや注意点

BPO業界でAI・ChatGPTを活用するデメリットとしては、以下のような点が挙げられます。

デメリット・注意点①:導入コストと投資リスクが大きい

AI・ChatGPTの導入には、初期の開発コストや、システムを一体化させるためのコストがかかります

また、AIモデルの継続的な改善やメンテナンスにも費用が必要です。中小規模のBPO事業者にとっては、こうした投資が大きな負担となる可能性があります。

さらに、AIシステムへの投資に見合うだけの効果が得られるかどうかは不確実であり、投資リスクも存在します。

デメリット・注意点②:業務プロセスの変更と従業員の抵抗がある場合も

AI・ChatGPTの導入によって、業務体系が大幅に変更する必要が生じる場合があります。新しいシステムや手順への対応は、従業員にとって負担となり、抵抗を招く可能性もあります。

AI活用に向けた従業員教育やトレーニングにも時間と費用がかかります。業務の自動化によって、一部の従業員が職を失う可能性もあり、雇用への影響も考慮しなければなりません。

デメリット・注意点③:セキュリティとプライバシーのリスクが高い

AI・ChatGPTを活用するためには、大量の顧客情報をAIシステムに学習させる必要があります。これには、個人情報や機密情報が含まれる場合もあり、セキュリティ面のリスクが高まります。AIシステムへの不正アクセスや、情報流出が発生した場合、BPO事業者の信頼は大きく損なわれます。

また、AIの利用における透明性や説明責任の確保、プライバシー保護など、倫理的な課題にも配慮が必要です。

BPO業界でのAI活用の導入事例

以下でBPO業界で活用されているAIを紹介していきます。

導入事例①:AI-OCRサービス「eas」(株式会社うるるBPO/三重県)

引用:デジタル行政
導入企業名株式会社うるるBPO
事業内容データ入力サービスやスキャニングサービスを中心に、お客様の業務をサポートする事業
従業員数63名
AI導入前の課題非定型書類の処理がデジタル化における課題となっていた。
AI導入成果高精度かつ効率的にデータ化を行えるようになった。
参考:株式会社うるるBPO

三重県は、循環関連産業のDX推進に向けて、株式会社うるるBPOのAI-OCRサービス「eas」を導入しました。デジタル化の課題となっていた非定型書類の処理において、「eas」の活用により、高精度かつ効率的にデータ化を行えるようになりました。

  • 「eas」は、人力とAI-OCRの協働により、手書き文字の認識精度を99.98%まで高めることができます。また、クラウドワーカーによる確認・修正作業を組み合わせることで、1000枚程度の書類を平均1時間以内に処理できるなど、大幅な作業時間の削減を実現します。
  • さらに、「eas」は、レイアウトの異なる画像の自動分類や、情報ごとの画像分割にも対応しており、業務フローの構築支援も可能です。
  • 三重県は、「eas」の導入により、産業廃棄物処理業審査をはじめとした業務の効率化を図ります。これにより、循環関連産業に関わる事業者の利便性向上につなげていく方針です。AI-OCRを活用した業務改善は、自治体のDX推進において有効な手段の一つと言えるでしょう。

今後、デジタル化の波は様々な業界・業務に広がっていくと予想されます。紙媒体の書類が多く、非定型データの処理が課題となっている業務において、「eas」のようなAI-OCRサービスの活用が進んでいくと考えられます。自治体や企業は、業務の特性を見極めながら、適切なデジタル化ソリューションを選択していくことが重要です。

導入事例②:オンラインアシスタントサービス「フジ子さん」(BPOテクノロジー株式会社)

引用:PR TIMES
導入企業名BPOテクノロジー株式会社
事業内容オンラインアシスタントサービス「フジ子さん」のサービス運営
従業員数400名
AI導入前の課題深刻化する人手不足とDX人材の確保難という日本企業の課題を解決しようとしていた
AI導入成果業務効率化や働き方改革につながった
参考:BPOテクノロジー株式会社

BPOテクノロジー株式会社は、深刻化する人手不足とDX人材の確保難という日本企業の課題に着目し、オンラインアシスタントサービス「フジ子さん」を提供しています。このサービスは、企業のバックオフィス業務を必要な時にオンラインでサポートするもので、様々な実務経験を持ったアシスタントがチームで連携し、リーズナブルな料金で対応します。

  • 現在は主にヒトが中心となってサービスを提供していますが、将来的にはRX化を図ることで、ヒトとAIがCo-workerとして共働する形態へと進化させていく計画です。これにより、オンラインアシスタントを日本企業の事業運営における当たり前の選択肢にし、企業や働く人々の可処分時間を増やすことで、幸せを増進することを目指しています。
  • 海外ではオンラインアシスタントの活用が進んでいる一方、日本では利用経験のある事業者の割合がわずか3%にとどまっています。BPOテクノロジー株式会社は、この状況を変革し、日本におけるオンラインアシスタントの普及を牽引していきたいと考えています。
  • 同社の取り組みは、単なる業務効率化にとどまらず、働き方改革やワークライフバランスの実現にも寄与するものです。ヒトとAIの協働により、企業の生産性向上と従業員の幸福度向上を両立させる新しい働き方のモデルを提示しています。

今後、少子高齢化による労働力不足がさらに深刻化する中で、BPOテクノロジー株式会社のようなサービスへの注目が高まっていくことが予想されます。同社の挑戦は、日本の企業社会に新たな変革をもたらす可能性を秘めていると言えるでしょう。

導入事例③:法人の生成AI活用をサポート(株式会社ギブリー/PwCコンサルティング)

引用:Givery
導入企業名株式会社ギブリー
事業内容HRテック事業(Track)
マーケティングDX事業(DECA)
オペレーションDX事業(MANA|法人GAI)
従業員数180名
参考:株式会社ギブリー

株式会社ギブリーは、企業や行政機関における生成AIの導入・活用を支援するために、PwCコンサルティング合同会社との協業を開始しました。ギブリーは、法人向けChatGPT活用プラットフォーム「法人GAI」や「行政GAI」の提供を通して、国内で400社以上の生成AI活用を支援してきた実績を持っています。一方、PwCコンサルティングは、生成AIの専門タスクフォースを組成し、事業開発や社内活用、リスク管理に関するコンサルティングサービスを提供しています。

  • 両社の協業は、企業における生成AI活用の課題解決を目的としています。現状では、企業の生成AI活用は簡易的な環境構築とPoCにとどまることが多く、ユーザーの利用定着や具体的な効果創出に課題があります。この状況を打開するために、特定の業界や職種に最適化した生成AIの活用基盤を構築することが求められています。
  • ギブリーの生成AI領域における開発力と、PwCコンサルティングの業界知見とビジネス構築力を融合することで、両社は企業のニーズに深く多面的に対応し、業界・職種特有の業務における生成AI活用を促進します。具体的には、金融サービス、小売・消費財、ヘルスケア、製造業などの重点業界を定め、セールスマーケティングやサプライチェーン、研究開発といった業務機能に対して、安全で責任ある生成AIソリューションの開発を行う計画です。

この取り組みは、顧客の生産性向上や新たなビジネス創出、人材のデジタルケイパビリティの底上げに寄与することが期待されています。ギブリーとPwCコンサルティングの協業は、企業における生成AIの戦略的活用を加速し、ビジネスの変革をもたらす可能性を秘めていると言えるでしょう。両社の専門性を活かしたワンストップのサポートにより、企業のAI活用の障壁が下がり、より多くの企業が生成AIの恩恵を享受できるようになることが予想されます。

導入事例④:採用アウトソーシングサービス「Bellbiz BPO」(株式会社ベルシステム24)

引用:BellSystem24
導入企業名株式会社ベルシステム24
事業内容グループ戦略の立案 / グループ会社の統制 / グループ経営資源の最適配分
従業員数241名(グループ:10,920名)
参考:株式会社ベルシステム24

株式会社ベルシステム24は、長年のコンタクトセンター運営で培った採用ノウハウとAI技術を融合させた、コンタクトセンター特化型の採用アウトソーシングサービス「Bellbiz BPO」の提供を開始します。本サービスは、採用戦略の立案から入社手続きまでの一連の採用プロセスを一気通貫で担うもので、採用ノウハウの不足や効率的な採用活動を実施したい企業の課題解決を支援します。

  • サービスの中核となるのは、株式会社DUMSCOと共同で構築したAI予測モデル「業務マッチング型採用モデル」です。このモデルは、同社内に蓄積するHR領域のデータを活用し、ヒトと業務との最適なマッチングを実現します。また、専門人材によるコンサルティングも提供し、採用プロセスの効率化や長期継続人材の採用・定着を支援します。
  • 近年、労働力不足を背景に、企業のBPOニーズが高まっています。特に、一部の業務ではなく、戦略立案からコンサルティング、実務までのプロセス全体をアウトソースする需要が増加しています。コンタクトセンター運営企業においても、長期勤続人材の採用・定着が重要な課題となっていますが、リソースやノウハウ不足により、効果的な採用活動が実施できていない現状があります。
  • Bellbiz BPOは、こうした課題に対応するために開発されました。年間1万人の採用実績を持つ同社のノウハウとAI予測モデルを組み合わせることで、採用プロセスの一気通貫のアウトソーシングを実現します。サービスは、採用戦略の設計から母集団形成、応募受付・面接、入社対応までの4つのプロセスをカバーし、フルパッケージプランとスタンダードプランが用意されています。

今後、同社は本サービスのコンタクトセンター以外の業界への拡大を進めるとともに、HR-tech領域における新たなサービスモデルの創出にも取り組む方針です。労働力不足が深刻化する中、同社のサービスは企業の人材確保と業務効率化に大きく貢献するものと期待されます。

導入事例⑤:生成系AIによるコンタクトセンター業務効率化(アルティウスリンク株式会社)

引用:アルティウスリンク
導入企業名アルティウスリンク株式会社
事業内容コンタクトセンター事業、バックオフィス事業、ITソリューション事業、その他関連事業
従業員数58,000名
参考:アルティウスリンク株式会社

アルティウスリンク株式会社は、生成系AIを活用したコンタクトセンター業務効率化の実証実験を完了し、「ヒト」と「AI」を組み合わせた業務の”半自動化”環境を構築して一部の実業務へ導入しました。同社では、2022年よりSpeech-to-Text技術の導入を進めており、今回の実証実験では、電話応対をリアルタイムにテキスト化した上で、Microsoft AzureのAI言語モデルを用いて要約し、CRMシステムに連携する一連のプロセスを検証しました。その結果、後処理業務の大幅な工数削減に成功しています。

  • 本実証実験は、同社のデジタルコンタクトセンタープロジェクトの一環として行われたものです。同プロジェクトでは、「人」と「デジタル」、「AI」をバランス良く組み合わせたITインフラやサービスの次世代化に取り組んでおり、オペレーション業務の生産性および品質向上を目的としたコンタクトセンター運用のノウハウとデジタル技術の融合による業務変革を目指しています。
  • 実証実験では、プロンプトの影響度合い、業務効率化のための手順、言語モデルごとの要約性能、個人情報マスキングや文章量が要約精度に与える影響などを約2か月間にわたって検証しました。その結果、生成系AIによる通話要約は、人による対応と比較して大きく業務効率化が実現できることを確認し、後処理全体では処理時間が平均47.3%短縮するなどの成果が得られました。

アルティウスリンクの取り組みは、コンタクトセンター業務におけるAI活用の可能性を示すものであり、業務効率化と品質向上の両立を実現する先進的な事例と言えるでしょう。同社の技術とノウハウが、今後のコンタクトセンター業界のデジタルトランスフォーメーションを加速させていくことが期待されます。

まとめ

BPO業界でのAI・ChatGPT活用は、業務効率化やサービス品質向上に大きく貢献する一方、導入コストやセキュリティ面での課題も存在します。

AI導入のメリットを最大限に引き出しつつ、デメリットにも配慮しながら、戦略的に取り組むことが重要です。