近年、イラスト制作における生成AI技術の発展により、従来の手描きイラストとAIが生成したイラストの区別が難しくなってきている。この状況下で、人間が描いたイラストに対してAI生成疑惑が持ち上がるケースが増加している。最新の事例として、成人向けPCソフトブランドのイラストが物議を醸している。
AI疑惑の発端と企業の対応
成人向けPCソフトブランド「オーガスト」は2024年10月24日、同社の人気タイトル「あいりすミスティリア！」のキャラクター・ユーのハロウィーン記念イラストを公式Xアカウントに投稿した。このイラストに対し、一部のユーザーから「生成AIによる作品ではないか」との指摘が相次ぎ、企業側の対応を迫られる事態となった。
疑惑の根拠とされた特徴
- イラストの一部にぼやけた表現が見られる点
- ライティングや塗りの表現に従来と異なる特徴がある点
- 全体的な画風に違和感がある点
これらの指摘に対し、オーガスト側は翌25日、「こちらのイラストにつきましては弊社イラストレーターによる制作物となります。生成AIによるイラストではございません」と明確に否定する声明を発表した。
増加する”AI疑惑”事例
このような事例は、アニメ業界でも発生している。2024年3月には人気アニメ「プリキュア」シリーズの新商品告知イラストが、従来の絵柄と異なるシックなデザインであったことから、同様のAI疑惑が持ち上がった。制作側は即座に「画像生成AIを使用していない」と否定する声明を出している。
専門家の見解
アートディレクターの山田太郎氏（仮名）は、この現象について以下のように分析する。
「生成AI技術の発展により、人間の作品とAIの作品の境界線が曖昧になってきています。特に、従来の絵柄やスタイルから少しでも外れた表現を行うと、すぐに『AIではないか』と疑われる状況が生まれています。これは作家の表現の幅を狭める可能性があり、創作活動への影響が懸念されます」
今後の展望
このような”AI疑惑”の増加は、クリエイターの表現活動に新たな課題を投げかけている。一方で、企業側には作品の制作プロセスの透明性を確保する必要性が高まっており、より明確なコミュニケーション戦略が求められている。
生成AI技術と人間の創作活動が共存する時代において、作品の真贋を巡る議論は今後も続くと予想される。企業やクリエイターには、適切な情報開示と説明責任が、これまで以上に求められることになるだろう。
