AIの電力消費量は一国分を上回る!?AIによる環境負荷について解説

AI×業界

あらゆるビジネスで活用され、社会に欠かせない存在になっているAI。

AIに関する技術は、生成AIも誕生し、驚異的なスピードで発展しています。

一方、AI技術が進歩し、様々なビジネスシーンでAI技術が使用されるようになるにつれ、電力消費量も比例して増加しており、この問題に注目が集まっています。

現時点でも、ある研究者の発表によると、1国分の電力量を消費しているとも分析されており、さらに、今後益々電力消費量が増加していくとも予想されています。

今回は、そんなAIによる電力消費と将来の需要予測、環境負荷とその対応策についてご紹介していきます。

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AI電力消費の規模はどのくらい?

AIの電力消費は、計算能力と計算規模により決定します。

生成AIの誕生により、これまでよりさらに電力消費量が増加しているとされています。

IEAによると、2026年の電力消費量は2022年から最大で2.3倍になるとの試算が示されています。

また、オランダの研究者による推定では、オランダ1国分の電力量を消費するとされ、技術が進化し、より使用が進むと電力量が1国分を上回る水準になると推定されます。

さらに、アイルランドでは、AIによる電力消費量の負担が国全体の5分の1を占めるようになり、冬の寒さを凌ぐため、一時的に給電を止める等の措置を講じる等、国によっては電力インフラに影響が出る事態になっています。

国際エネルギー機関(IEA)によると、2026年の電力消費量が22年から最大で2.3倍になるとの試算を示した。

伸びに拍車をかけるのが生成AIの普及だ。IEAによると米オープンAIの「Chat(チャット)GPT」で1回問答するときの消費電力量は2.9ワット時。一般的な「Google検索」の10倍に相当する。

オランダの研究者が23年10月に発表した推定では、27年までに出荷される生成AI向けサーバーは85.4〜130テラワット時の電力量を消費する。オランダ1国の年間消費量と同規模

欧州向けDCが集積するアイルランドでは電力需給が綱渡りとなっている。

21年から22年にDCの電力消費量が31%増加。

国全体の5分の1弱を占めるようになった。

国営の送電事業者はDC新設に厳しい条件を課す。今冬は逼迫に備えてDCなどに向け一時的に給電を止める緊急プログラムも準備した。

引用元:https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC26A090W3A221C2000000/

AI電力需要予測とその重要性

一方で、前述の国家レベルの電力インフラへの影響を加味して、電力需要予測やエネルギー供給の効率化、電力不足を踏まえた需給バランスの維持にAIが用いられています。

ここでは、上記について各々説明します。

まず、電力需要予測とは、将来の電力消費量を予測することです。

電力需要予測をすることで、電力供給計画を立てられるようになり、電力供給が十分である時期や電力不足が起きる時期に適切な対応をできるようになります。

精度の高い需要予測に基づき、電力供給をすることで、電力コストや環境負荷も低減することができます。

しかしながら、電力消費量は、気温、湿度、日照時間、季節や時間帯、社会経済的なニーズなど、様々な要素に影響されるため簡単に需要が予測できるものではありません。

そこで、AIを用いた電力需要予測が注目され、用いられています。

AIを活用することで、上記様々な要素について、大量のデータを高速に処理し、複雑なパターンや相関関係を学習することができるのです

例えば、AIは、電力不足の発生を上記要素を事前に学習、そして予測することで、電力使用量や使用する時間帯を分析することで、電力事業者に対して電力供給網の制御や管理を最適化するためのアラートを出します。

このように、AIは電力の需給バランスを維持するために使用され、重要な役割を果たすようになってきています。

電力供給の相とAIの役割

前述の電力の需要予測をする際に、「電力相」という指標が重要になってきます。

電力相とは、電力の供給と需要の関係を表し、安定共有のための重要な指標です。電力の供給量と需要量の比率で表されます。

電力相が高い状態は、電力の供給量が需要量を上回っていることを意味します。電力相が高すぎると、電力の余剰が発生し、電力のロスや価格の低下が起こります。

一方、電力相が低い状態は、電力の供給量が需要量に追いついていないことを意味します。電力相が低すぎると、電力の不足が発生し、電力の安定供給や品質が損なわれます。

そのため、電力相を適切な水準に保つことが重要となります。

しかし、これらの作業は、これまで人間の判断に依存することが多く、誤差や遅延が発生する可能性がありました。

そこで、AIによる電力相の適切な水準を保つための解決策が生まれるようになりました。

以下に事例を紹介します。

事例①:「AI電力需要予測ソリューション」(富士通)

  • ソリューション概要

需要予測業務は長年の経験で培った担当者のスキルによってバラツキがあるといわれており、誰もが正確に予測することは非常に難しい業務です。安定した電力供給を実現する上で、いかに精度良く需要予測を行うかが収益の鍵となっています。この課題を解決すべく、当社では電力業務特化AIを使用して高精度な電力需要予測ができるソリューションを開発しました。需要予測の質を高めることで、需給管理における損失をおさえ、収益の最大化が期待できます。

引用元:https://www.fujitsu.com/jp/group/kfn/services/list/demandforecast/

事例②:「AI を用いた高精度の電力需要予測システムを開発」(ウェザーニューズ)

 

株式会社ウェザーニューズ(本社:千葉市美浜区、代表取締役社長:草開千仁)は、当社独自の AI 技術を用いた「電力需要予測システム」を開発し、本システムを用いた「電力需要予測サービス」の提供を開始しました。本システムは、最新の気象予測や消費電力などの実績データをもとにAIが学習し続けることで、高い精度で電力需要を予測します。

精度検証によって本システムの有用性が高いことが認められ、大手新電力事業者のサミットエナジーでの採用が決まりました。4 月 1 日から運用が開始し、導入から 1 週間で、 電力需要予測の計画の効率化によるコスト削減と前日での 需要予測の精度向上が確認されました。また、予測精度の向 上によって調達量が最適化されることで、環境負荷の低減に もつながると考えています。

引用元:https://www.fujitsu.com/jp/group/kfn/services/list/demandforecast/

AIによる電力供給網の最適化と、再生可能エネルギー源の統合

さらに、AIによる電力相のバランスを保つためには、電力供給網の最適化と再生可能エネルギー源の統合に関する視点も欠かせません

「電力供給網」とは、電力発電所から電力消費者までの電力の流れを管理するシステムを指します。

電力の品質や安全性を確保するために、電力の発生、伝送、配電、消費の各段階で、様々な機器や制御装置が用いられて、電力網は運営されており、電力の効率的かつ安全な供給にとって重要な役割を果たします。

電力網を正しく運用するために、電力のロス、過負荷、停電や事故などのリスクを低減しつつ、電力の流れを適切に調整する必要があります。

このために、AIが用いられます。AIにより電力供給網の各機器や制御装置を基に、電力の流れをリアルタイムに監視、分析、制御することができるのです。

次に、再生可能エネルギー源とAIの関係について説明します。

太陽光をはじめ、再生可能エネルギー源の導入が世界中で加速しています。

太陽光や風力といったエネルギー源は自然条件によって発生するエネルギー量が変動し、予測困難な要素が多いです。

しかしながら、AIを用いることで、気象予測等のデータを基に、再生可能エネルギー源から得られる電力量を予測することができ、電力網への統合も実現できます

AI電力問題への対策

これまで、AI技術の電力消費に関する問題と需要予測などの手法について説明してきました。

ここでは、AI技術の電力消費に関する問題意識の高まりとその解決策に向けた取り組み、そして、持続可能なAI開発に向けたエネルギー効率の良いアルゴリズムとインフラの重要性について説明していきたいと思います。

AI技術の電力消費に対する問題意識の高まりとその解決策に向けた考え方として、「グリーンAI」
という考え方があります。

このグリーンAIとは、AIを活用して地球環境問題を解決する取り組みのことを指します。

具体的には、環境への負荷を低減するためのアルゴリズム開発やインフラ等を含む最適化技術を活用する取り組みを指します。

前者の省エネルギー化を実現できるアルゴリズムとは、データの処理や学習に必要な計算量や時間を最小限に抑えることができるアルゴリズム開発を指します。

一方、インフラの最適化技術とは、コンピューターやサーバーの性能や冷却などに関する技術や設備を最適化することを指します。

グリーンAIに取り組むことで、以下のメリットがあるとされています。

  • エネルギー効率の向上を見込むことができる
  • 持続可能な資源の活用を目指すことができる
  • 電力消費を含む環境問題への負荷軽減の可能性がある

一方で、グリーンAIを実現するためには、デメリットもあります。

  • プライバシーの問題
  • ビジネスや複雑な要因からなる現実への対処
  • 高度な技術が必要

メリットとデメリットを踏まえ、電力消費を含む環境負荷を考えたアルゴリズムとインフラの最適化が昨今、社会的に検討されています。

以上、AIの電力消費に関する問題と対策についてご紹介いたしました。

まとめ:AIの活用と環境問題への注目がますます高まる

これまで説明してきたように、AI技術の発展が進めば進むほど、電力消費問題も大きな問題になっていきます。

一方で、AIは、電力の効率的かつ安全な供給に貢献し、環境負荷低減にも用いられ、電力消費及び環境保全の両面に対して、大きな影響を与える可能性が高いです。

今後益々、AIによる技術進化が進むにつれて、環境保全のバランスも考えた運用に関する社会的な注目もより高まる可能性が高いです。

注目の高まりに伴い、エネルギー効率の良いアルゴリズムやインフラの開発と、再生可能エネルギー源を用いた運用のための未来を切り開く技術として、AIは、ますます重要な役割を果たすようになっていくでしょう。

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