工作機械へのAIの活用事例5選!自動化が進む背景と製造業の未来について解説 | romptn Magazine

工作機械へのAIの活用事例5選!自動化が進む背景と製造業の未来について解説

AI×業界

近年、AI技術は急速に発展しており、様々なジャンルでAIの導入が進んでいます。製造業においても例外ではなく、自動化のための技術開発が求められています。

しかし、どのような場面・用途でAIが活用されているかを知る機会はあまり多くはないのではないでしょうか。

そこで当記事では、製造業において自動化が進む背景と未来について、AIの活用事例を交えながら解説していきます。

ぜひ最後までご覧ください。

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AIとは

AIは「Artificial Intelligence(アーティフィシャル・インテリジェンス)の略称で、日本語では「人工知能」という意味です。AIとは、コンピュータに人間の言葉やデータを学習させ、人間が行う予測や判断などの知的行動を行わせる技術です。

身近で活用されている例としては、「Siri」や「Alexa」といった音声アシスタント機能や、ロボット掃除機などが挙げられます。

機械学習とは

AI技術の分野として、「機械学習」いう技術があります。機械学習は、コンピュータが大量のデータから傾向を学び、予測やデータの分類等を行う技術です。

例えば、AIに犬の写真を見せて、「これは犬です」ということを教えます。これにより、コンピュータは「犬」の特徴を理解して、新しく写真を見せたときに犬の写真かどうかを判断してくれます。

この方法は「教師あり学習」と呼ばれていて、このようにしてAIによる技術開発が進んでいます。

また、そのほかにも「教師なし学習」や「強化学習」といったAIの学習方法があり、広く活用されています。

AIができること・得意なこととは

AIは、数値の分析やパターンを見つけるのが得意です。

AIはビジネスにおいてはデータ解析や予測を行うことができます。例えば、市場動向や顧客の行動パターンを客観的に理解し、ビジネス戦略の立案や意思決定のサポートをしてくれます。

また、自動応答システムなど顧客サービスの自動化にもAIは活躍しています。さらに、生産物流、品質管理、リスク管理、セキュリティ強化など、あらゆるプロセスにおいて応用されています。

AIが苦手なこととは

AIが苦手なことの一つとして、人間の感情や倫理的な判断を理解することが挙げられます。ビジネスシーンでも、相手の感情が関わる場面は多くありますが、AIに相手の感情を適切に把握させることは困難です。

そのため、AIの能力の限界を理解し適切に扱うことが必要です。

製造業でAIを活用した自動化が進められる理由

製造業においても、AIによる自動化が進んでいます。その理由は大きく3つあります。

  1. 少子高齢化による人材不足
  2. 作業員・従業員への負担
  3. 企業の生産性・競争力の強化

この3つの理由について、それぞれ詳しく解説します。

少子高齢化による人材不足

現代の製造業では、少子高齢化による労働力の減少が非常に深刻な課題です。高齢化によって労働力が低下しているうえに、少子化により今後も労働人口が減少する可能性が高いです。

特に製造業においては、熟練の技術者の引退が大きな打撃となります。技術者の豊富な経験や知識が失われ、事業継続が困難となる可能性があります。

そのため、AIを搭載した工作機械の導入により、技術者の不足に対処する必要があります。

作業員・従業員への負担

近年の製造業は、作業員・従業員への負担が大きくなっている傾向にあります。これは、近年の製造業が「多品種少量生産」の傾向であることが要因の1つです。

多品種少量生産の場合、各製品の加工や取り替えの頻度が増加します。製造ラインや機械の設定の頻度が増えることは、現場への負担につながります。

そこで工作機械にAIを活用し、作業員や従業員の負担を軽減させる必要があります。

企業の生産性・競争力の強化

AIの導入で自動化が可能になると、人員確保が難しい時間帯や曜日でも稼働を続けられるようになります。このことを利用し、生産性や競争力を高めようとする企業は増加しています。

特に製造業では、人手不足や作業員の欠員は生産ラインの停止というリスクが生じます。しかし、AIを活用した工作機械を導入すれば、人間の代わりに機械による作業を継続して行うことができます。

これらのことから、各企業がAIを導入し生産性や競争力を強化するため、競争社会で勝ち抜くためには、AIを活用した自動化を推し進める必要があります。

AIを活用した工作機械の自動化のメリット

AIを活用して工作機械を自動化させるメリットは次のとおりです。

  • 一定の品質の確保・品質の向上
  • 人材不足の解消
  • 生産ラインの省人化による人件費削減
  • 生産性の向上

これらのメリットを詳しく見ていきましょう。

一定の品質の確保・品質の向上

AIを活用して工作機械を自動化させれば、機械が繰り返し同じタスクを正確に実行するため、作業ミスの防止になり、製品の品質が一定に保たれます。

さらに、従業員ごとの技量や経験による品質のばらつきもなくなるため、製品の品質の統一や向上につながり、顧客満足度も向上することでしょう。

人材不足の解消

従来の製造工程では、高度な技能や熟練した作業員が必要でした。しかし、AIを搭載した工作機械で作業を自動化すれば、人手不足の状況下でも生産を維持することができます。

このことから、AIの導入は製造業における人材不足のリスクを軽減し、生産性を向上させることが期待されます。

生産ラインの省人化による人件費削減

従来の生産ラインでは多くの作業員が必要で、人件費が大きなコストとなり企業の課題となっています。

しかし、AIを活用して工作機械の自動化をすれば、作業プロセスの一部を人間ではなく機械が行うことが可能になります。これによって、人件費を大幅に削減することができます。

生産性の向上

AI技術を用いて製造工程を自動化すれば、従業員が他の作業に時間を割けるようになります。作業員が手作業で行っていたタスクを、AIを搭載した工作機械に処理されることで、従業員の負担が軽減されるからです。

従業員はより高度な作業や品質管理などの業務に集中することができ、生産性が向上することにつながることでしょう。

AIを活用した工作機械の自動化のデメリット・注意点

AIによる工作機械の自動化は、メリットが多くある一方、注意しなくてはならないデメリットが2つあります。
・導入時の初期費用が高い
・機械の維持管理にも費用がかかる
この2点について解説します。

導入時の初期費用が高い

AIを搭載した工作機械の自動化を導入するためには、導入時に高額な初期費用がかかります。
機械本体の購入費用やAIシステムの導入費用だけでなく、コンサルティング費用、従業員へのトレーニング費用などの諸経費も想定しておくべきでしょう。

これらの費用を合わせるとトータルでかかる金額は高額になるため、企業は十分な資金計画を立てる必要があります。

機械の維持管理にも費用がかかる

AI搭載の工作機械の自動化には、初期費用だけでなく維持管理にも費用がかかります。AIを活用した工作機械は、定期的なメンテナンスや修理が欠かせません。また、システムのアップデートやソフトウェアの更新も必要となります。

初期費用とあわせて、維持管理のコストも導入計画にあらかじめ含めておくべきでしょう。

工作機械でのAI活用事例5選

実際に工作機械にAIを活用した事例はどのようなものがあるのでしょうか。ここでは、工作機械でのAI活用事例を5選にまとめました。

工作機械でのAI活用事例①:町工場発の製造AI「ARUMCODE」(アルム)

工作機械を動かすためのプログラム(形状や材質といった加工時の設定)はNCプログラムと呼ばれています。一品当たりの製造コストの50%は、このNCプログラム作業のコストと言われています。

アルム株式会社の「ARUMCODE」はNCプログラムの完全自動生成を可能とした製造AIで、大きなコストダウンを実現できます。

アルム(株)は製造業をAIと自動化で変革する。切削加工等の自動積算・自動NCプログラミングのAIメーカー
アルム(株)は製造業をAIとロボット自動化で変革する。切削加工、NC旋盤加工、マシニング加工等の自動積算・自動NCプログラミングのAIメーカー、ロボットシステム等の自動化メーカー。

工作機械でのAI活用事例②:加工中の振動抑制「Smooth AI Spindle」(ヤマザキマック)

工作機械の加工中に生じる振動のことを「びびり振動」といいます。びびり振動は加工面の品位を悪化させてしまうことにつながりますが、従来は機械オペレータの経験と勘に頼っているのが現状でした。

ヤマザキマザック株式会社の「Smooth AI Spindle」は、振動を監視し、AI適応制御により適切な加工条件を瞬時に調整することで、高品位な加工と生産性の両立を実現します。

AI で“びびり振動”を抑制、なめらかな加工面と高い生産性を実現する 「Smooth AI Spindle(スムースAI 主軸)」を開発

工作機械でのAI活用事例③:加工中の切りくず除去「AIチップリムーバル」(DMG MORI)

工作機械による自動化を行う際に生じる課題の1つとして、加工中に発生する切りくずが原因で、機械が停止してしまったり、加工不良を起こしてしまったりすることが挙げられます。

そこでDMG森精機株式会社は、「AIチップリムーバル」を開発し、AIを用いて切りくずの堆積状況を分析し切りくずを自動で除去することを可能としました。

AIチップリムーバル | 製品 | DMG MORI

工作機械でのAI活用事例④:AIによる機械の自己診断「OSP-AI」(オークマ)

従来、工具の突発異常や摩耗による損傷といった不具合は予測や見極めが困難とされていました。

この課題に対して、オークマ株式会社はAIによる機械の自己診断「OSP-AI」を開発しました。OSP-AIはAIが工具の異常を事前に検出し、損傷を回避する動作を実現しています。

OSP-AI AI機械診断機能/AI加工診断機能 | OSP suite | 技術・ソリューション Okuma Smart Factory | オークマ株式会社
機械要素の故障予知診断と、ドリル加工状態の自己診断を可能とするOSP-AIのご紹介です。

工作機械でのAI活用事例⑤:AIで瞬時に加工プログラムを作成「COMlogiQ」(HILLTOP)

HILLTOP株式会社が開発した「COMlogiQ」は、部品加工プログラムの完全自動化サービスです。3Dモデルのアップロードと、穴・公差指示の入力のみを人間が行い、NCプログラム・加工指示書はAIによって自動作成されます。

これにより、技術者の作業量を大幅に軽減することが可能となります。

COMlogiQ コムロジック | 部品加工工程の自動化システム | HILLTOP株式会社 ヒルトップ
AIを用いた自動加工プログラム作成システムと「HILLTOP SYSTEM」を連動させた、部品加工工程の自動化システムCOMlogiQ(コムロジック)のご紹介。

AIによって将来的に工作機械に関わる作業・仕事は奪われるのか?

AIは学習したデータに基づいて思考や予測、判断をする道具であり、新しいものを作る能力はありません。したがって、AIは業務効率化や生産性向上の手段として活用されるものの、完全に仕事を奪うわけではありません。

工作機械に関わる作業や仕事においても、AIが取り組める範囲は限られており、人間の創造性が必要な部分はAIで代替することは難しいでしょう。そのため、AIの力と人間の両方の力を駆使し、より効率的な生産を実現することが期待されます。

AIを活用できる範囲は拡大していく同時に、人間が持つ感性、倫理観が一層重要視されていくことが予想されます。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

近年の製造業においては、少子高齢化による人材不足や、従業員の負担が課題となっています。このような課題に対処するため、AI技術の導入が進められています。

今回紹介した事例のように、製造AIの部門は日々技術開発が進んでおり、今後も進歩していくことが予想されます。

工作機械にAIを組み込むことで、人材不足や作業員の負担を解決していけば、製造業全体がより発展していくことでしょう。