米国で、AIモデルの学習データの透明性を確保し、著作権者の権利を保護する新たな法案が提出されました。「人工知能ネットワークの透明性と責任(TRAIN)法案」と名付けられたこの法案は、クリエイターが自身の作品がAI学習に使用されたかどうかを確認する権利を保障するものです。
法案の概要
TRAIN法案は、著作権者が「誠実な信念(good faith belief)」に基づいて、自身の作品がAIモデルの学習に使用されたと考える場合、その記録の開示を請求できる権利を定めています。AI開発者は、この請求に対して、著作物の使用有無を特定できる十分な資料を提示する必要があります。開示を拒否した場合、法的には著作権で保護された作品を使用したと見なされます。
この法案を提出したピーター・ウェルチ上院議員(民主党)は、「著作権者が自身の作品のAI学習での使用を確認し、必要な場合は適切な補償を受けられる仕組みを確立することが重要」と述べています。
業界からの反応
本法案は、以下の主要団体から支持を得ています。
- アメリカレコード協会
- アメリカ作曲家作詞家出版者協会
- アメリカ音楽家連盟
アメリカレコード協会のミッチ・グレイジャー氏は、「この法案はAIの透明性を確保し、著作権者の正当な権利を保護するものだ」と評価。アメリカ作曲家作詞家出版者協会のエリザベス・マシューズ氏も、「創造的経済の未来は、人間のクリエイターの権利を保護する法律にかかっている」と支持を表明しています。
課題と展望
一方で、大規模AIモデルの学習データの追跡可能性という技術的課題も指摘されています。多くのAIモデルが大量のデータを無作為に収集している現状では、開発者自身も使用データを正確に把握できない可能性があります。
しかし、この法案は「AIのブラックボックス問題」に正面から取り組む試みとして注目されており、技術革新と著作権保護のバランスを図る新たな枠組みとして期待されています。今後、この法案を基点に、AIの開発と創作者の権利保護の両立に向けた議論が深まることが予想されます。