グラフィック/映像領域におけるデジタル技術の浸透により、一部の情報を隠すための「モザイク」技術は一般的なものになりました。
しかし、今ではAIによるモザイク破壊が可能となり、隠された情報を復元する技術が進化しています。そこでは具体的にはどのような技術が使われ、どのような原理で動いているのでしょうか。
本記事では、まずモザイクの仕組みおよびモザイクの破壊・除去の基本的な概念から始め、AIがこれらの技術をどのように可能にしているかを解説します。さらに、市場に出回っている様々なモザイク破壊ツールを紹介していきます。
この先進的な技術がもたらす利点とともに、潜在的なリスクや倫理的な懸念についても考察します。
モザイク除去・モザイク破壊とは
モザイク破壊とは、モザイク加工により不明瞭になった元の情報を復元する技術のことを指します。
近年、AI技術の進化によりこのモザイク破壊が可能になってきました。特にニューラルネットワークと敵対生成ネットワーク(GAN)、インペインティング(Inpainting)といった技術を利用したモザイク破壊ツールが注目されています。
技術 | 概要 |
ニューラルネットワーク | 入力データから複雑なパターンを学習するAI技術 |
敵対生成ネットワーク(GAN) | 2つのニューラルネットワークが競争しながら学習する技術 |
インペインティング(Inpainting) | 欠損部分を補完する画像処理技術 |
これらの技術を連携させることで、モザイク加工された部分を補完し、本来の映像を復元することが可能となります。
モザイクの仕組みとは?
モザイクとは画像や動画に施される処理の一つで、映っている情報の一部を隠すために施されます。特定の領域をピクセル単位で塗りつぶすことで元の内容を不明確にして、プライバシー保護や法令遵守などの目的を果たします。
モザイク化は以下の3ステップで行います。
1. 対象領域選択
画像や映像内でモザイクをかける部分、例えば顔や個人情報が含まれる部分を指定します。この選択は手動で行われることもあれば、顔認識などの自動化技術で行われることもあります。
2. ピクセル化
選択された領域を小さな正方形や長方形のブロックに分割します。これにより、元の画像の詳細が失われ選択領域の詳細の識別が難しくなります。
3. 色平均化
ピクセル化された各ブロック内の色を平均化することで、元の画像の詳細をさらに隠します。これにより、対象領域の詳細情報が一層見えにくくなります。
こうしたモザイク化処理により情報を保護しますが、その効果は完全ではないためAIによるモザイク破壊が可能となっているのです。
AIのモザイク破壊の仕組みは機械学習と高解像度化
AIによるモザイク破壊の仕組みは、画像処理技術と学習アルゴリズムが主軸となります。大まかに分けると以下の2つのステップが必要です。
- 画像処理技術と学習アルゴリズム:機械学習
モザイク破壊AIツールは、敵対生成ネットワーク(GAN)を用いてニューラルネットワークで学習します。この学習により、モザイク化された情報を元の状態に近づけるための「補完」が行われます。 - 補完とインペインティングの役割:高解像度化
補完過程では、インペインティングという技術が用いられます。これは、既存の情報を元に欠損部分を埋める技術で、モザイク部分の復元に大いに寄与します。
以上がAIによるモザイク破壊の基本的な仕組みです。各ステップの詳細を以下に説明します。
画像処理技術と学習アルゴリズム:機械学習
AIによるモザイク破壊では、高度な画像処理技術と学習アルゴリズムを駆使します。
画像処理技術では、モザイク処理された画像から有用な情報を取り出しを行います。例えば、色相や輝度、モザイクのパターンなどを解析です。これにより、AIはモザイク化されたエリアの特性を理解します。
そして、学習アルゴリズムにより取り出した情報を基にモザイク化された部分の補完が行われます。ニューラルネットワークにより大量の画像データから学習した知識が活用されます。
これらの処理の組み合わせにより、モザイク化された部分を可能な限り正確に復元することが可能になります。
補完とインペインティングの役割:高解像度化
モザイク破壊のAIツールでは、補完とインペインティングという二つの技術が重要な役割を果たします。
補完は、モザイク部分を取り除いたときに空白になる部分を予測して埋める方法です。AIは周囲の情報を元に、欠損部分がどのような色やパターンであるかを推測します。
一方、インペインティングは実際に欠損部分を補う技術です。これはAIが学習した大量の画像データから最も適切な情報を抽出し、欠損部分に当てはめる手法です。
これら二つの技術の組み合わせによって、AIツールは高精度なモザイク除去を可能にしています。これらの技術は、低画質の画像をハイレゾ化する高解像度化技術にも使われており、両者をあわせて「高解像度化」とも呼ばれます。
モザイク除去・モザイク破壊ができるAIツール9選
モザイク除去や破壊に関するAIツールは、大きく分けて、オープンソース、有料ソフトウェア、オンラインサービスの3カテゴリーに分けられます。
1. オープンソース
名称 | 動作環境 | 料金 | 機能 |
DeepMosaics | Webブラウザ, Windows | 無料 | 画像/動画へのモザイク追加/除去 |
PULSE | Windows, Linux | 無料 | 画像の高画質化 |
Demosaic | Windows, MacOS, Linux | 無料 | アニメ調画像のモザイク除去 |
GIMP | Windows, MacOS, Linux | 無料 | モザイク除去を含む画像編集 |
2. 有料ソフトウェア
名称 | 動作環境 | 料金 | 機能 |
VanceAI | Windows | 5,200円/月〜 | 高画質化, 背景除去/生成, 写真修復, 他 |
JavPlayer | Windows | 1,200円 | 動画のモザイク軽減プレイヤー(レコーダー) |
Jihosoft Photo Eraser | Windows, MacOS | 19ドル | 画像のオブジェクト除去, 写真修復, 他 |
Inpaint | Windows, MacOS | 29.99ドル | 画像のオブジェクト除去, 写真修復, 他 |
3. オンラインサービス
名称 | 動作環境 | 料金 | 機能 |
VanceAI | Webブラウザ | 650円/100画像〜 | 高画質化, 背景除去/生成, 写真復元, 他 |
JavLens | Webブラウザ | 499台湾ドル/約56分の動画処理 | 動画のモザイク除去, 動画への字幕追加 |
VanceAI
VanceAIはAI技術を用いたオンライン写真加工サイトです。モザイク除去機能は謳っていませんが、画像の高解像度化機能を使用して不明瞭な画像を鮮明にすることができます。ユーザーフレンドリーなインターフェースと高速な処理速度が特徴です。
オンラインで画像処理をするにはポイント購入が必要ですが、買い切り制のWindows版ソフトウェアを使用することで無制限の画像処理が可能になります。
JavPlayer
JavPlayerは超解像を応用した技術によりモザイクを軽減する動画プレイヤー(レコーダー)です。大学等の研究機関が開発し公開している超解像ツールを、Windows用の実行ファイルにパッケージ化したものです。本ソフトウェア用にトレーニングされたモデルが付属します。
JavPlayerで生成した動画にはウォーターマークが挿入されます。これは、本ソフトウェアの開発者が「違法な配布を幇助した」と見なされるリスクへの対策とのことです。
DeepMosaics
DeepMosaiscsは、動画や画像へのモザイク追加/除去のためのオープンソースプロジェクトで、”semantic segmentation” および “Image-to-Image Translation” という技術に基づきます。
GitHubで公開されており、各種プラットフォームで動作可能な他、Windowsデスクトップ版も用意されています。
PULSE
PULSEは画像の画像を高解像度化のためのオープンソースプロジェクトで、高解像度化の過程でモザイク除去の効果が得られるソフトウェアツールです。このツールは、画像の細部を細かく復元することができます。
GAN(敵対的生成ネットワーク)を活用し、高解像度化した画像に再度モザイクをかけた結果と入力を比較することで、正確な高解像度化を実現しています。Google Colab上でデモを動作させることができ、実際の処理結果を確認することが可能です。
Demosaic
Demosaicはアニメ帳の画像に特化したモザイク除去のためのオープンソースプロジェクトです。
GitHubで公開されているものはPythonソースコードのみのため、動作させるためにはエンジニアスキルが必要になります。
Jihosoft Photo Eraser
Jihosoft Photo Eraserは画像中の不要なオブジェクトやウォーターマークなどを除去できる多機能ツールです。
モザイク除去機能や高解像度化といった機能は謳っておらず、除去したオブジェクト部分を周囲のテクスチャで埋める機能を基本としたソフトウェアです。モザイク除去の効果は限定的です。
Inpaint
Inpaintは画像中の不要なオブジェクトやウォーターマークなどを除去できる多機能ツールです。Jihosoft Photo Eraserなどと同様に、モザイク除去の効果は限定的です。
JavLens
JavLensは動画のモザイク除去および字幕付加に特化したオンラインサービスです。処理対象の動画は手持ちのファイルをアップロードするか、オンライン上のファイルのURLで指定します。処理には長時間を要するため、完了通知メールで処理結果のダウンロードURLを入手する方式が採られています。
利用にあたってはアカウント登録およびポイント購入が必要で、約56分の動画処理で499台湾ドル(約2,000円)という価格設定がされています。日本語化はされていますが非常に簡素なサイトのため、課金の判断は自己責任で行ってください。
GIMP
GIMPは歴史の古いオープンソースの画像編集ソフトウェアで、モザイク除去にも対応しています。多機能でありながら無料で利用できる点が魅力です。ドキュメント類も充実しており、ユーザも多いため使いこなすための情報も多数流通しています。
モザイク破壊ツールの使用上の注意と限界
モザイク破壊ツールの使用には、プライバシー保護と法律の観点において重要な注意点があります。第一に、モザイク処理が施されている情報は本来見るべきでないものであるということです。そのため、モザイク破壊行為は他人のプライバシーの侵害にあたる可能性があります。
法的観点においても、特定の情報の開示を禁じる法律や規則が定められています。例えば、個人情報保護法や著作権法などです。モザイク破壊行為がこれらの法律に抵触すると判断された場合、罰則の対象となる可能性があります。
下記表に、プライバシーと法律制約に関する主要な注意点をまとめました。
注意点 | 例 |
---|---|
プライバシー侵害 | 他人の顔や個人情報の露出 |
法的制約違反 | 個人情報保護法、著作権法等 |
また、現在のモザイク破壊ツールは、未だ完全にオリジナルの画像を復元することが難しいのが現状です。特に、モザイクの範囲やモザイクブロックが大きい場合、AIが補完する情報が不足するため類推への依存が大きくなるためです。
モザイク破壊ツールの技術は発展途上ですが、AIの学習能力が向上すればより複雑なオリジナル情報の復元も可能になるでしょう。また、高速化技術の進歩によりリアルタイムでのモザイク破壊が実現される日も近いかもしれません。
モザイク破壊ができるAIツールのまとめ
いかがでしたでしょうか?本記事では、モザイク破壊ができるAIツールについて詳しく解説しました。
今回のポイントをまとめると、以下のようになります。
- モザイクの仕組みおよびモザイクの破壊・除去の基本的な概念の解説
- モザイク破壊ができるツールにはオープンソース、有料ソフト、オンサインサービスとして利用可能なものが多数存在する
- モザイク破壊ツールの使用上にあたってはプライバシー侵害や法律違反に注意する
- 現状のモザイク破壊はオリジナル情報を完全に復元できるわけではない
これからのAI技術の進化により、モザイク破壊ツールの精度はさらに向上すると考えられます。それ故に、その使用には倫理的な配慮が不可欠です。これらの課題と向き合いながら、自らのクリエイティビティ向上のためにAIツールを活用していくことが望まれます。
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