近年のAI活用は目まぐるしいほど急成長を遂げています。その顕著となった代表例が、Open AI社が発表したChatGPT(2022年11月)ですが、当時は人工知能(AI)は何となく分かっているけど、2024年現在ここまで浸透したのは驚きではなかったでしょうか。
総務省の調査によると、2022年の世界のAI市場規模(売上高)18兆7,148億円に対し、2027年には1兆1,034億7,700万円まで拡大すると予想されています。
こうしたAI流入の動向は今後も高まっていくことでしょう。また、企業も独自のAIソフトウェアの開発に力を入れており、NTTや日立、富士通などが参入にリソースを注いでいます。ところで、従来のソフトウェアとAIソフトウェアはどのような違いがあるのでしょうか?
この記事では、AIソフトウェアと従来モデルとの違いや、企業がAIソフトウェアを活用した事例について詳しく解説していきます。どうぞ最後までご覧くださいませ。
AIソフトウェアの開発
AIのソフトウェアを開発する為にはいくつかのプロセスを通る必要があります。
- 構造フェーズ:どのようなソフトウェアを開発するかという構想や、開発時の課題点などを見出し検討する
- PoCフェーズ:Proof of Concept(概念実証)で、学習させるためのデータを用意し、プロトタイプのAIに学習させるプロセス
- 実装フェーズ:PoCフェーズで使用したプロトタイプをもとに実装するAIを開発・設計のコーディングを行う
- 運用フェーズ:実務で運用するために試験で行ったプロトタイプのAIをPDCAを通じてチェックを行い、安定した働きを行うことが重要
どれも運用していく為には欠かせないプロセスですが、これはPDCAで分かるように計画(P)からスタートし、実践の為の設計図(D)を描き、問題がないか確認(C)、実際の運用(A)に繋げ、更なる改善の為もう一度Pに戻るサイクルは私たち人間が行っている事と変わりありません。
そのように、毎回計画と実践、見直しを繰り返すことにより精度の高いソフトウェアが出来上がってくるのです。下記の動画はシステム開発の手順を詳しく説明していますのでご参考に。
ソフトウェア開発における主な課題と解決策
ソフトウェア開発においてさまざまな課題点があります。綿密にプロジェクトをこなしていても大きな壁にぶつかる時があります。それは、私たちが普段勤先の会社で感じている課題点と似ているかもしれません。一体どのような課題に直面するのでしょうか。
経営陣からのガイダンスの欠如 | 明確な指示がない場合、混乱を招く恐れがある |
時間とリソースの見積りの難しさ | ソフトウェアのバグが発見された時など多くのリソースを取られる |
開発プロジェクトの明確な定義 | この製品が一体何を示すのか社会へどう還元していくのか目的が重要 |
顧客や利害関係者との誤解 | プロジェクトの適切な文書化の失敗 要件に対する誤解 |
資格のある才能を見つける | 経験のある新卒者を見つけにくい 資格ある労働者の不足 |
AIソフトウェアテストの重要性
AIソフトウェアテストの特徴として、情報学習の精巧な産物であり、大量のデータから学びタスク処理を自動的にこなします。さらに言葉の正確さや適切な情報利用だけでなく、文法や表現力、論理的な構造もテストの対象となります。
なぜこのようなテストをする必要があるのか、それはユーザーの体験向上にあります。テストを通じてバグやエラーを発見し修正を加えることで、ユーザーは安定して高品質なソフトウェアを利用できるようになります。ユーザーの満足度が企業の評判に繋がり、さらなる開発への情熱を注ぐことになります。
ソフトウェアの進化とともに、テストの重要性も一段と際立っています。ソフトウェアテストは信頼性の確保や品質向上に不可欠な要素であり、今後も重要性が高まることでしょう。
AIソフトウェアテストにおける課題とその解決
ソフトウェアテストにおける課題とは何でしょうか。それは、開発する際には個人ではなくチームで行うことが一般的であり、それぞれ役割を果たしたチームのプロセスを「統合」という形で再編成、見直しが行われるからです。
「統合」において四方の角度からソフトウェアの機能を見ることになり、きちんと動作できるかやプログラムバグが起きていないだろうかなどを検証する必要があり、真前段階のプロセスよりも慎重にならなければなりません。
よって、より多くのリソース(人・時間・技術・検証力)が重要であり、一部でも機能の損害やエラーが生じた場合ボトルネックになる恐れがあります。また、事例ですがVERISERVE株式会社では以下の課題がネックとなっています。
開発チーム単位で行うテスト自動化は開発技術に長けた人たちが行うためスムーズに進みますが、統合の工程では基本的にテストがメインとなるため、必ずしも開発に長けた人たちをアサインできるとは限りません。
大規模アジャイル開発におけるソフトウェアテストの課題と、その解決へのアプローチ|実績・強み|ソフトウェアテスト・第三者検証のベリサーブ
AIソフトウェアの企業における活用法
企業がAI搭載のソフトウェアを活用する方法は様々です。例えば、農家の生産量予測や、コールセンターの自動化、レジの自動商品識別などです。これらをうまく活用することにより生産性、流動性の上昇を図ることができます。さらに人材コスト、流通コストの削減にもつながる可能性があります。
●企業がAIソフトウェアを選択する基準
- 機能の適合性:AIソフトウェアが提供する機能がビジネスニーズに適合しているか検討します。データ分析などの特化した需要なソフトウェアがあれば選択する可能性があります。
- 拡張性とカスタマイズ性:将来的な成長や変化に対応できるか判断します。プラグインやカスタマイズが可能であれば長期的な利用価値につながります。
- ユーザビリティとトレーニングの容易さ:社員が使いやすく、かつトレーニング(学習)が容易であることです。
- セキュリティへの適合性:機密情報の取り扱いや法的な規則に対応するセキュリティ機能の有無が選択する判断材料となります。
●企業内でのAIソフトウェアの応用例(AI-OCRなど)
- AI-OCR(Optical Character Recognition)の活用:AI-OCRは、光学文字認識をもとにした技術で、文書や画像中のテキストを自動的に認識する能力を持っています。紙の文書をデジタル化しデータ入力の自動化や検索効率の向上につなげています。
- 契約書や請求書の処理:AI-OCRは契約書や請求書などの文書を高速化つ正確に読み取り、情報をデータベースに蓄積することが可能です。AI導入により従業員の作業効率がアップし、エラーのリスクが減ります。
- 効率的な情報検索:AI-OCRは大量のデータから必要な情報を素早く検索できる利点があります。企業はこれを活用して、迅速な情報アクセスを実現し、意思決定のプロセスを効率化しています。
AIソフトウェア市場の動向
AIソフトウェア市場は急速な成長を遂げ、様々な産業での導入が進んでいます。このことから企業がデータ駆動の意思決定や業務プロセスの自動化に対する需要が高まっている結果と言えます。
●現在の市場規模と成長予測
AIソフトウェア市場は約30億ドル=約4,440億円(2024年現在)に達し、年々拡大しています。市場調査によれば、今後もAI技術の進化や新たな応用領域の開拓により、2027年までに市場規模はさらに倍増すると予測されています。ITmediaの記事によると世界で約2510億ドル(約2.89兆円)に上ると言われています。この成長の背景には、機械学習、自然言語処理、ビッグデータ分析などの分野で進歩が挙げられます。
●主要なAIソフトウェア企業と製品
多くの企業がAIソフトウェア市場で競合しており独自の製品を提供しています。
- Google(製品:TensorFlow):Googleは機械学習のフレームワークであるTensorFlowを提供しており、企業や開発者のさまざまなAIプロジェクトに利用されています。TensorFlowは画像認識や自然言語処理(NLP)など、幅広く活用されています。
- Microsoft(製品:Azure Cognitive Services):MicrosoftはAzure Cognitive Servicesを通じて、顔認識、音声認識、感情分析などの機能を提供しています。これにより、企業は自社アプリケーションにAIの要素を組み込むことができます。
- IBM(製品:Watson):IBMのWatsonは機械学習と深層学習を組み合わせた総合的なAIプラットフォームで、医療診断や企業の意思決定支援など、高度なタスクに対応しています。
AIソフトウェアの開発事例
ここでは、実際に企業がAIソフトウェア開発の事例を3つ紹介します。ソフトウェア導入の際にお困りならばこちらの事例を見てから判断することをお勧めします。
開発事例①:富士ソフト
導入企業名 | 富士ソフト株式会社 |
事業内容 | ITソリューションテクノロジー |
従業員数 | 17,921名(2023年12月末現在) |
AI導入前の課題 | 作業者が経験と勘で選んだ類似語を検索キーワードに付加して文書検索を実施。作業者毎の検索結果の品質が一定にならない。 |
AI導入成果 | AIが単語の類似度を元に 検索キーワードの付加候補を提示。 |
富士ソフト株式会社では、サジェスト検索機能をAI導入によって類似する単語の検索を大幅に強化しています。経験の少ない社員でも検索のアルゴリズム化によってスムーズな単語検索が可能となりました。文書や社内広報など事務作業の効率化にも役立てられています。
開発事例②:LINEヤフー
導入企業名 | LINEヤフー株式会社 |
事業内容 | インターネット広告事業 |
従業員数 | 28,385名(2023年3月末現在) |
AI導入前の課題 | ITエンジニアの作業時間の圧迫 |
AI導入成果 | 一人当たりの作業時間の短縮 |
LINEヤフー株式会社では、2023年10月にプログラミングコーディングの強化を図るため、「GitHub Copilot for Business」というAIプログラマーを導入しエンジニア一人当たりの作業効率が約10〜30%向上しています。
開発事例③:Panasonic
導入企業名 | パナソニックホールディングス株式会社 |
事業内容 | 家電・空調・インフラ設備ソリューション |
従業員数 | 233,391名 |
AI導入前の課題 | プログラミング業務の時間や社内広報業務のリソース |
AI導入成果 | 業務効率化と生産性向上 |
パナソニックホールディングス株式会社では、2023年2月17日に国内の全社員にて「connect AI」を展開しました。プログラミングや社内言語(個人情報などは含めていない)などの業務効率化を目指すためにChatGPT(PX–GPT)の活用を推進しており、4月にはGPT4にアップグレードしているため更なる業務の改善や効率化に成功しています。
まとめ
- AIソフトウェアと従来のソフトウェアの違い
- AIソフトウェア開発の流れ
- 企業によるAIソフトウェア活用事例
企業の課題である業務の効率化や人材不足において現代ではAI導入とともに様々な点で解決が行われております。企業×AIの協働により、クリエイティビティな活動範囲が広まり結果的に生産性やコストの面で向上することでしょう。
また、全てをAIに託すのではなく、従業員の柔軟な思考や倫理的な判断基準を忘れずに保つことにより、持続可能で発展的な未来を築き上げるのではないでしょうか。
適切にAIを扱っていけばスペシャリストとして、業務を委託しても安心して活躍していけることでしょう。