近年、AI技術は目覚ましい進化を遂げており、その中でも特に注目されているのが、GPT-4やGPT-4 Turboといった先進的なAIモデルです。これらのモデルは自然言語処理の能力が非常に高く、多くのユーザーがその利用価値の高さに注目しています。
そして、2024年1月31日に一般公開された韓国のスタートアップ企業、Wrtn Technologies社が提供する「リートン(wrtn)」は、これらの最先端のAI技術を無料で提供している点で大きな話題を呼んでいます。
この記事では、リートンがなぜ無料でGPT-4やGPT4-Turboを提供できるのかを解説します。また、リートンの概要、料金プランと機能、使用法の解説、リートンとChatGPTの比較についても深堀りします。
リートン(wrtn)とは
概要:リートン(wrtn)とは
リートン(wrtn)は、韓国発のスタートアップ企業、Wrtn Technologies社によって開発されたチャットボットサービスです。このサービスは、GPT-4およびGPT-4 Turboという先進的なLLMを核にサービスを提供しています。
リートンは、ユーザーが与える簡単な指示だけで、自然言語処理タスクを実行できるように設計されています。
GPT4-Turboも無料で使える?
注目すべき点は、リートンがGPT-4 Turboを含む全てのサービスを無料で提供していることです。
GPT-4 Turboは通常版のGPT-4よりも処理速度が高速で、より複雑なタスクを迅速に処理できるという特長を持っています。これにより、ユーザーは時間制限なく、高度なAIを活用することが可能になります。
料金プランと機能
リートンは完全無料で利用可能なサービスです。有料プランも用意されていません。この点が、GPT-4を利用するには月額20ドルの課金が必要なChatGPTと大きく異なる点でです。
リートンとChatGPTを比較したものが、こちらの表になります。
リートン(wrtn) | ChatGPT(有料版) | |
料金 | 無料 | 20ドル/月 |
モデル | GPT-3.5 GPT-4 Claude 2.1 PaLM2 SDXL | GPT-3.5(無料) GPT-4 |
利用制限 | 制限なし | 制限なし(GPT-3.5) 40回/3時間(GPT-4) |
プラグイン | × | 〇 |
ウェブブラウジング | × | 〇 |
高度なデータ解析 | × | 〇 |
画像生成 | × | 〇 |
GPTs | × | 〇 |
リートン(wrtn)はなぜ無料で使えるの?
リートンのよくある質問には、以下の記載があります。
なぜ無料でサービスを提供しているのですか?
当社は、「みんなのAI」というビジョンを掲げており、誰もが生成AI技術を身近に利用できる環境作りとサービスの提供を目指しています。 そのため、現時点では今後もリートンサービスに関しましては完全無料での提供を予定しております。
リートン・コミュニティ
この説明からは本当の理由を読み取ることはできません。しかし、一般的な無料サービスが採用しうるビジネスモデルや運用戦略に基づくなら、以下のような理由が推測されます。
- 広告収入:
初期段階では収益化よりもユーザーベースの拡大に重点を置き、無料でのサービス提供で市場でのプレゼンス確立を目指します。
そして、十分なユーザベースを獲得できてから広告モデルへ移行することが考えられます。
会員登録時に、広告・宣伝メールの受信への同意を求められたことから、広告モデルへの移行の可能性は高いといえます。 - コスト効率の高い運用:
クラウドベースのインフラ、自動化、エネルギー効率の高い技術など、コストを削減する運用体制を確立していることが考えられます。
スケールメリットの効果が高いクラウドサービスにおいて、この点は大きな理由になり得ます。 - データの活用:
ユーザーデータの分析やマーケティング目的での活用は、無料サービス収益を得る一般的な手段です。NVIDIA社のCEOが「データこそが現代の金である」と発言したことも記憶に新しい出来事です。
実際にリートン(wrtn)を使ってみた!
このセクションでは、リートンの基本的な操作方法および性能上の特性について解説します。
会員登録
GoogleログインまたはLINEログインが利用できます。あわせて、名前/ニックネーム、性別、生年、職業の入力が求められます。
基本的な操作
基本的な操作は、他のチャットボットと同様です。プロンプトを入力することで、AIモデルにタスクを指示します。この際に、使用するモデル選択を行うことができます。OpenAPIのGPT以外にも、AnthropicのClaude、GoogleのPaLM2、Stability AIのSDXLなどのモデル選択も可能です。
また、「AI設定」メニューを選択すると、「基本」「親切な」「専門的な」「共感できる」といった回答の文体指定、パーソナライズのための高度な設定が可能です。後者はChatGPTにおける「Custom instructions」に相当する機能と思われます。
以下では、リートンの性能上の特性について、ChatGPTとの比較で検証します。
情報の精度
最初に、回答の精度を比較してみます。モデルにGPT-4を選択し、次のプロンプトを投入します。
第二次世界大戦はいつ始まり、いつ終わったのですか?
リートンの回答は以下のとおりでした。
第二次世界大戦は1939年の9月1日にドイツのポーランド侵攻により始まりました。そして、終戦は1945年の8月15日で、この日に日本が無条件降伏を宣言し、正式な降伏文書は同年9月2日に調印されました。したがって、戦争は1939年から1945年までの約6年間続きました。
それに対して、ChatGPTのGPT-4で同じプロンプトを投入した回答は以下です。
第二次世界大戦は、1939年9月1日に始まり、1945年9月2日に終わりました。この戦争は、ドイツのポーランド侵攻によって始まり、日本が連合国に対して無条件降伏を受け入れたことによって終結しました。
いずれも正しい回答を得ることができました。事実ベースの解答精度については妥当な結果といえます。
情報の新しさ
次に情報の鮮度を評価してみました。こちらもGPT-4同士での比較です。
プロンプト:
リートンの利用料金は?
リートンの回答:
私の利用料金に関する具体的な情報は、私が提供できる範囲のものではありません。OpenAIやリートンの使用料についての最新情報を得るためには、公式ウェブサイトをご確認いただくか、OpenAIのカスタマーサービスに直接お問い合わせいただくことをお勧めいたします。私の知識は2021年9月までのものであり、それ以降の情報については把握しておりませんのでご了承ください。他に何かお手伝いできることがあれば、何でもお申し付けくださいね。
ChatGPTの回答:
「リートン」は無料で利用できるサービスです。2023年5月19日からベータ版がリリースされており、全ての機能を制限なく無料で使用することができます。リートンは、GPT-3.5やGPT-4など複数の生成系AIモデルを組み合わせた日本語に特化した生成AIサービスです。ユーザーフレンドリーなインターフェースを備えており、自然な会話ができる対話型インターフェースや、メール、キャッチコピー、ツイートの生成、英文記事の要約など、様々なビジネスシーンに対応するツール機能を提供しています。
GPT-4であれば2023年1月までの情報には対応しているはずですが、リートンの回答は予想外の結果でした。2021年ということはGPT-3.5レベルの知識量であるため、本当にGPT-4が使われているのかが疑われます。
ChatGPTはウェブブラウジング機能との合わせ技で新しい情報を参照しているようです。
出力情報のボリューム
次に回答に含まれる情報量を比較してみます。こちらも同様にGPT-4同士での比較です。
プロンプト:
ディープフェイク技術を使った画像ツールを利用する場合の注意事項を教えて
リートンの回答:
ディープフェイク技術を使った画像ツールを利用する場合には、以下のような注意事項を心掛けてください。 1. プライバシーの尊重: 他人の画像を無断で使用したり、誤った情報を拡散したりする行為は違法であり、倫理に反します。他人の同意を得てから使用するようにしましょう。 2. 法的規制の理解: ディープフェイク技術は、その使用方法によっては法律に触れる可能性があります。使用前には、国や地域の法律を確認し、適切に使用することが重要です。 3. 情報の真偽確認: ディープフェイク技術により生成された画像は、現実と見分けがつかないほどリアルなものが多いです。これらの情報を信じる前に、必ず情報源を確認し、情報の真偽を吟味することが重要です。 4. 技術的な理解: ディープフェイク技術は、一部の専門家でさえ完全に理解していない複雑な技術です。使い方を誤ると、予期しない結果を招く可能性があります。ツールを使う前に、その仕組みと可能性を理解し、適切な使用方法を学ぶことが必要です。 これらの注意事項を念頭に置き、ディープフェイク技術を適切に使用することで、新たな表現の可能性を探求することができます。ただし、その一方で、その技術がもたらす社会的影響や倫理的問題についても理解し、考慮することが重要です。
ChatGPTの回答:
ディープフェイク技術を使った画像ツールを利用する際には、いくつかの重要な注意事項を考慮する必要があります。 1. 倫理的配慮: ディープフェイクは、人の顔や身体をリアルに模倣できるため、これを悪用した偽情報の拡散、プライバシーの侵害、人格権の侵害などの問題が生じる可能性があります。他人の顔や身体を無断で使用することは、倫理的にも法的にも問題があります。 2. 法的な制限: 多くの国では、他人の肖像を無断で使用したり、虚偽の情報を拡散することに対して法的な制限が設けられています。ディープフェイクを利用する場合は、現地の法律や規制を遵守する必要があります。 3. セキュリティとプライバシーのリスク: ディープフェイク技術は、詐欺やアイデンティティ盗難などの犯罪に利用される可能性があります。自分の顔や個人情報をディープフェイクに利用する際は、セキュリティとプライバシーのリスクを考慮する必要があります。 4. 品質とリアリズム: ディープフェイクは非常にリアルに見えることがありますが、それが現実と異なることを認識し、視聴者に誤解を招かないようにすることが大切です。特に公的なコンテキストやニュースメディアでの使用には十分注意が必要です。 5. 社会的影響: ディープフェイク技術の使用は、社会に対して大きな影響を与えることがあります。特に政治的、社会的な問題に関わる場合、その社会的影響を考慮することが重要です。 ディープフェイク技術の利用は、技術的な進歩と共にますます容易になっていますが、その影響は広範にわたるため、倫理的、法的、社会的な側面を慎重に考慮することが求められます。
ChatGPTの回答には社会的影響への言及も含まれており、わずかながら情報量においてChatGPTが優るようです。
リートン(wrtn)とChatGPTではどちらが優れている?
本セクションでは、リートンとChatGPTの二つのサービスを比較し、それぞれの優れている点を探ります。
利用のしやすさ
UIが完全に日本語化されている点において、ChatGPTよりもリートンの方が優れているといえます。たとえば、日本の企業におけるAI導入率の低さは、使い方がわからない事が理由の一つにあげられています。そのため、日本語で利用できることは利用しやすさにつながります。
また、完全無料である点も利用ハードルを下げる要因になります。ChatGPTも無料で利用できる機能はありますが、「完全無料」と「一部機能は無料」の違いは小さくありません。
性能差
前セクションでも触れた通り、リートンが本当にGPT-4を使用しているのか、疑念が生じるケースがありました。もしリートンがGPT-4ではなくGPT-3.5を使用しているのであれば、その性能差は少なくないため、高度な用途においてはChatGPTを選ぶ理由になり得ます。
成熟度
サービスの成熟度においては、リートンより1年早くリリースされたChatGPTに分があります。特に急速な進化を遂げるAI領域での1年の差は非常に大きく、この差を埋めることは容易ではないでしょう。
また、いまのところリートンはベータ版であるために、動作上の不安定さも見受けられます。チャットをしている最中に、内部エラーが生じることが頻繁にありました。
リートン(wrtn)が無料で使える理由まとめ
いかがでしたでしょうか?本記事では、チャットボットサービス「リートン(wrtn)」について詳しく解説しました。
今回のポイントをまとめると、以下のようになります。
- リートン(wrtn)は最新AIモデルGPT-4, GPT-4 Turboを無料で利用できる。
- 将来的には広告モデルへの移行が考えられる。
- 日本語に完全対応しているため利用ハードルは低い。
- 性能面において本当にGPT-4を使用しているのか疑念がある。
リートンのサービス無料提供戦略は、AI領域における新しいビジネスモデルの可能性を示しており、AIの未来形を知るうえでも注目すべきサービスといえます。
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