AI・ChatGPTによる金融業界の活用事例を紹介!今後の動向やメリット・デメリットについても考察 | romptn Magazine

AI・ChatGPTによる金融業界の活用事例を紹介!今後の動向についても考察

AI×業界

AIは金融業界に革命をもたらしており、効率化、コスト削減、顧客サービスの向上など、多くのポジティブな影響をもたらしています。

一方で、倫理とプライバシーの問題、金融市場の不安定化など、ネガティブな影響も無視できません。

そういった様々な事例を以下で紹介して解説していきます。

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金融業界が抱えている課題

最初に金融業界が抱えている課題についてまとめておきましょう。

課題①:デジタル化とテクノロジーの進化に追い付いていない

主に、以下の2点の課題を抱えています。

フィンテックの台頭新興のフィンテック企業が伝統的な銀行業務に挑戦し、顧客体験を根本から変えています。この変化に適応するためには、既存の金融機関もイノベーションを促進し、デジタル化を加速させる必要があります。
ブロックチェーンと仮想通貨ブロックチェーン技術と仮想通貨の登場は、決済システム、資産管理、契約実行方法など、金融業界の基本的な側面を変革する潜在力を持っています。これらの新技術をどう統合し、規制するかは大きな課題です。

課題②:コンプライアンス問題

金融危機以降、規制はより厳格になり、金融機関はコンプライアンスコストの増加に直面しています。新しい規制に適応し、リスク管理を強化しながら、業務の効率性を保つことは大きな挑戦です。

課題③:サイバーセキュリティ対策

金融取引のデジタル化が進むにつれ、サイバー攻撃のリスクも高まっています。金融機関は、顧客の貴重なデータを保護するために、常に最先端のセキュリティ対策を講じる必要があります。

課題④:顧客の期待の変化

デジタルネイティブな顧客層が増える中、24時間365日のアクセス、パーソナライズされたサービス、シームレスなユーザーへの対応が求められています。金融機関はこれらの期待に応えるために、サービスの質とアクセシビリティを向上させる必要があります。

課題⑤:社会的責任

気候変動や社会的不平等などの問題に対する意識が高まる中、金融機関は環境や社会に対する影響を考慮した持続可能な投資や業務慣行を推進する圧力を受けています。

金融業界においてAIを導入するメリット・デメリット

続いては、金融業界においてAIを導入するメリット・デメリットについて解説します。

メリットデメリット
効率性の向上:自動化により、取引処理や顧客サービスが迅速になる。高い初期投資:AI技術を導入・統合するための初期コストが高い。
リスク管理の強化:AIによる分析で、不正行為の検出やクレジットリスクの評価が向上する。雇用への影響:自動化により一部の職種が不要になり、職業の再配置が必要になる。
顧客満足度の向上:パーソナライズされたサービス提供や24/7の顧客サポートが可能になる。プライバシーとセキュリティの懸念:顧客データの収集と分析に伴うプライバシー侵害のリスク。
新しい製品とサービスの開発:AIを活用して新たな金融商品やサービスを開発できる。技術的な障壁:AI技術の複雑さによる運用上の困難や専門知識の必要性。
意思決定のサポート:大量のデータからインサイトを抽出し、より良い意思決定をサポートする。倫理的問題:AIによる意思決定プロセスが透明でない場合、倫理的な懸念が生じる。
市場予測の向上:市場動向や顧客行動の予測が精度高く行える。規制への適応:AI技術の急速な進化に対する既存の法規制の遅れ。
オペレーショナルリスクの低減:エラーの可能性を減らし、業務プロセスを最適化する。依存性と脆弱性:AIシステムへの過度な依存がシステム障害時のリスクを高める。
競争力の向上:イノベーションにより市場での競争力を高める。技術の進化による陳腐化:導入したAI技術が迅速に陳腐化し、継続的な更新が必要になる。

金融業界におけるAIの導入は、効率化、顧客サービスの質の向上、リスク管理の強化など多くのメリットがありますが、同時にプライバシー、セキュリティ、倫理的な懸念、高い初期コストなどのデメリットも伴います。これらの課題に対処するためには、適切なリスク管理策の実施、規制への適応、そして継続的な技術更新が必要です。

AIが金融業界に与える影響とは

AIの進化は金融業界において、具体的な利益とリスクをもたらしています。例えば、AIは大量のデータを高速に処理し、リアルタイムでの市場分析や顧客の行動パターンの分析を可能にしています。これにより、金融機関は顧客に対してパーソナライズされたサービスを提供し、投資戦略を最適化することができ、業務効率と顧客満足度を向上させています。

しかし、これらの利点とは裏腹にAIによる高頻度取引やアルゴリズム取引が市場の急激な価格変動を引き起こし、市場の安定性を損なう可能性があります。

これに対処するためには、AIのアルゴリズムと動作原理についての透明性を確保し、市場の公正性と安定性を保つための規制と監視体制の強化が必要です。

金融業界におけるAIの成功事例

以下では金融業界におけるAI活用の成功事例を紹介していきます。

活用事例①:詐欺の検出(PayPal)

導入企業名PayPal Pte. Ltd.
事業内容オンライン、モバイル、アプリ、または対面で利便性の高い決済を提供
従業員数27,200人
AI導入前の課題業務効率化と生産性の向上:AIの導入によって、人間が処理していた業務をAIが代替できるようになり、業務効率化や生産性の向上、労働力不足の解消につながるだろうとされていた。
デジタル犯罪への対策:世界中でキャッシュレスが進む中、デジタル犯罪への対策も重要となっていた。
AI導入成果不正対策の強化:PayPalではAI(人工知能)などを活用した不正対策を強化している。高度な不正検知技術により、不正取引、アカウント情報の漏えい、その他違法行為や利用規定(AUP)違反を阻止するため、4億3,000万件以上のアカウントを24時間365日体制で保護。
パスキーによるパスワードレス認証の導入:PayPalはパスワードレス認証を推進するFIDOアライアンスの創設メンバーの1社であり、安心・安全な認証の実現に向けて取り組んでいる。
生成系AIの不正対策への組み込み:現在、ChatGPTなどの生成系AIが登場しているが、PayPalの不正対策に組み込む努力をしている。
参照:https://www.paypal.com/jp/webapps/mpp/corporate/corporate-info

金融業界におけるAIの利用は、詐欺の検出に革命をもたらしています。PayPalのシステムは、その典型例で、リアルタイムで取引データをスキャンし、異常な動きや疑わしいパターンを即座に特定します。


これは、ユーザーの安全を保護し、信頼性の高い取引環境を提供するための重要なステップです。AIの能力を活用して、詐欺の兆候を早期にキャッチし、ユーザーの資産とプライバシーを保護する取り組みが、業界全体で進められています。

活用事例②:最適な顧客サービスの提供(MasterCard)

導入企業名Mastercard Worldwide
事業内容クレジットカード
従業員数5,000人(2008年)
AI導入前の課題・自社内にAIについての理解が不足している
・AI導入効果が得られるか不安である
・AI導入費用が高い
AI導入成果・Mastercardは、最新のAI技術を駆使したインサイトにより、被害者の口座から資金が流出する前に、銀行がリアルタイムに詐欺を予測できるよう支援中。
・TSB銀行の試算によると、英国全ての銀行が当ソリューションを導入した場合、詐欺被害額を約1億ポンド(約1.3億ドル)削減することが可能。
・MastercardのAI技術を活用したサイバーセキュリティ・ソリューションは、過去3年間で350億ドル以上の詐欺被害を阻止している。
参照:https://www.mastercard.us/en-us/vision/who-we-are.html

顧客サービスの領域でも、AIはその価値を示しています。マスターカードの「KAI」は、AIが顧客サービスを強化し、個々の顧客にパーソナライズされたサービスを提供する例です。

KAIは、ユーザーの質問にリアルタイムで応答し、金融アドバイスを提供する能力を持っています。これにより、顧客は自分だけのパーソナルアシスタントを持っているような感覚を味わえ、より満足度の高いサービスを受けることができます。

活用事例③:リスク管理(BlackRock)

引用:BlackRockホームページより
導入企業名ブラックロック株式会社
事業内容グローバルに資産運用、リスク・マネジメント、アドバイザリー・サービスを提供
従業員数19,800名
AI導入前の課題生産性の向上:ブラックロックは、AI活用により生産性の向上が期待できるとみていた。
データの活用:一部企業が保有するデータの価値を分析し、それを解き放つことができるかもしれないと考えていた。
AI導入成果生産性の向上:ブラックロックは、AI活用により生産性の向上が期待できるとみており、その結果を得ている。
データの活用:新たなAIツールは、一部企業が保有するデータの価値を分析し、それを解き放つことができるかもしれないと考えていた。
投資のリターン:ブラックロックは、AIが市場に大きなリターンをもたらす「巨大な力」であると認識している。
参照:https://www.blackrock.com/jp/individual/ja/about-us/profile

金融リスク管理においても、AIはそのポテンシャルを発揮しています。BlackRockのAladdinは、リアルタイムで複雑な金融データを解析し、リスクと機会を特定するAIプラットフォームです。これにより、投資家は市場の変動や未来のリスクをより正確に予測し、賢明な投資決定を下すことができます

AIの進化により、リスク管理の精度と効率が向上し、金融市場の安定と成長が促進されています。

活用事例④:信用のスコアリング(ZestFinance)

参考:ZestFinanceのホームページより
導入企業名ZestFinance
事業内容金融サービス
従業員数社員 51 – 200名
AI導入前の課題・融資を行う事業者へのスコアリングの提供
・自社による個人融資事業「Basix」
AI導入成果・従来の信用スコアリングでは評価されないサブプライム層向けに、独自の機械学習エンジン「ZAML」を用いた融資ソリューションを提供。
・融資の承諾率を15%向上させ、デフォルト率を30%減少させる成果を達成。
・マイクロソフトとのパートナーシップを通じて、その技術を広く金融業界に展開している。
参照:ZestFinance

信用スコアリングにおいても、AIは革命を起こしています。ZestFinanceのZAMLは、従来の方法よりもはるかに正確な信用スコアを提供するAIプラットフォームです。これにより、貸し手はより正確な情報に基づいて貸し出しの判断を下すことができ、借り手にとっても公正な評価が得られます

AIの能力を活用することで、信用スコアリングの透明性と公正性が向上し、より健全な貸し借りの環境が実現しています。

活用事例⑤:不正送金対策のAIモニタリングシステム導入(住信SBIネット銀行)

導入企業名住信SBIネット銀行 株式会社
事業内容預金サービスや住宅ローン、投資・保険商品、クレジットカードやデビットカードなど
従業員数592名
AI導入前の課題業務効率化と生産性の向上:住信SBIネット銀行は、AI活用により生産性の向上が期待できるとみていた。
データの活用:一部企業が保有するデータの価値を分析し、それを解き放つことができるかもしれないと考えていた。
AI導入成果マーケティングの高度化:メール配信においてAIを活用したマーケティングの高度化を実施し、その効果を確認の上でマーケティング基盤に導入、運用を開始。ニーズを学習するAIだけではなく、配信を希望されないお客さまのご意向などもふまえて学習する全く別のAIを構築し、それぞれのAIが算出した評価基準を独自のロジックで最適化している。
不正送金対策の高度化:第三者による不正送金を防止するため24時間365日体制で振込のモニタリングを行っています3。AI技術を活用したモニタリングシステムの導入により不正送金を防止するためのモニタリング業務の高度化・効率化を実現。
AI技術を活用した住宅ローン審査:住宅ローンの取り扱いにおいて取組額3兆8,000億円を突破している。AI技術を活用した審査手法を導入することで住宅ローン審査業務の高度化を図り、より一層多様化していくお客さまのニーズにこたえている。
参照:https://www.netbk.co.jp/contents/company/about/organization/

住信SBIネット銀行は、不正送金対策として24時間体制で振込の監視を強化しており、その一環としてAI技術を活用しています。2020年から2021年にかけて、自社開発のAIを含む複数のAI技術による実証実験を行い、自社AIが最も効果的に不正取引を特定できることが判明しました。この結果を受け、モニタリングシステムへの自社AIの組み込みを決定しました。

このAIは最新技術を駆使し、不断の学習を通じて不正送金の検出精度と速度を向上させています。今後、この技術は不正送金を防ぐためのさらなる高度化を目指し、他の金融機関への提供も検討していることから、広範な不正取引対策に貢献することが期待されています。

活用事例⑥:AI稟議書検索システムの導入(京都銀行)

導入企業名株式会社京都銀行(The Bank of Kyoto,Ltd.)
事業内容投資信託や保険、証券、信託など様々な金融商品・サービスを扱い、結婚、マイホーム購入、出産、退職後の資産運用や税金対策など
従業員数3,383人
AI導入前の課題業務効率化と生産性の向上:京都銀行は、AI活用により生産性の向上が期待できるとみていた。
問い合わせ対応の負荷:京都銀行では、営業店からの問い合わせが月間数万件以上発生する状況になり、それへの対応が課題。
AI導入成果生成AI「ChatGPT」の試行導入業務の効率化、生産性向上、行員のAIスキル向上等を目的に、生成AI「ChatGPT」の試行導入を決定。これにより、行員は「ChatGPT」に質問することで、文章の作成や要約、プログラム・コード作成などをチャット形式で簡単に行うことが可能となり、情報収集、ドラフト作成などにかかる時間が削減でき、生産性の向上が期待できるほか、行員のAIスキル向上にもつなげている。
AIチャットボットの導入:京都銀行は、社内外の問い合わせ対応にAI動応答チャットボットを導入。これにより、問い合わせ対応を50%以上自動化でき、問い合わせ対応に要する時間を1日当たり60時間、年間では1万5000時間を削減できると見込んでいる。
参照:https://www.kyotobank.co.jp/about/company/outline.html

京都銀行は、業務の効率化とサービス向上を目的に、NTTデータと共同でAIを用いたシステムの実証実験に取り組んでいます。この取り組みの一環として、AI技術「corevo®」を活用した「稟議書添付資料検索システム」の試験運用を開始しました。このシステムは、担当者が入力した情報をもとに、過去の稟議書から類似の事例を高精度で検索し、提示することで、稟議書の作成時間を大幅に短縮することが期待されます。

京都銀行は、2017年に「生産性革新本部」を設立し、顧客の利便性向上を目指した生産性の向上に努めており、今後も最新技術を積極的に導入していく方針です。

活用事例⑦:マーケット情報をAIチャットボットで提供(三菱UFJモルガン・スタンレー証券)

導入企業名三菱UFJモルガン・スタンレー証券株式会社
Mitsubishi UFJ Morgan Stanley Securities Co., Ltd.
事業内容金融商品取引業
従業員数5,727名(2023年3月31日現在)
AI導入前の課題通話記録のモニタリング:全国の本支店、コールセンター、担当者が持つ携帯電話などで取り交わされるお客さまとの通話は1日に4万件以上、時間にして数千時間にも及ぶため、人の力のみでは全件の早期チェックや迅速な分析は困難なのが実情。
システムの老朽化:同社ではコールセンターのシステムが老朽化し、オペレーターが通常業務で扱うシステムは複数にわたり、煩雑な状況だった。
AI導入成果AIによる通話解析:三菱UFJモルガン・スタンレー証券は、営業員と顧客との通話記録のデータを人工知能(AI)で解析するシステムを導入。これにより、通話内容をテキスト化し、それをAIで分析することが可能に。顧客の意に沿わない取引につながりそうなキーワードをAIに学習させてリスクを定量化し、トラブルなどが発生した後のモニタリングではなく、未然防止に重点を置くことができた。
モニタリングシステムの導入:三菱UFJモルガン・スタンレー証券は、自然言語処理AI「KIBIT」と音声認識技術を用いたモニタリングシステムを導入。これにより、全通話内容のテキスト変換と解析を自動化し、モニタリング業務の網羅性と検証精度の向上を実現。
参照:https://www.sc.mufg.jp/company/profile/outline.html

三菱UFJモルガン・スタンレー証券は、AIチャットボットを活用した24時間対応のマーケット情報提供サービスを開始しました。このサービスは、国内外の株価、為替、市況に関する情報を提供し、顧客が簡単に最新のマーケット情報を収集できるように設計されています。

顧客は、「今日のダウ平均は?」や「値上がりした株価は?」などの質問をすることで、迅速に情報を得ることができます。また、AIチャットボットで提供できない情報が必要な場合、三菱UFJモルガン・スタンレー証券はフィンシェルジュと呼ばれる有人サービスも提供しています。この取り組みにより、顧客満足度の向上と問い合わせ対応の効率化が図られています

活用事例⑧:AI解析で保険金額を算定(東京海上日動)

導入企業名東京海上日動火災保険株式会社
事業内容損害保険業、業務の代理・事務の代行、確定拠出年金の運営管理業務、
自動車損害賠償保障事業委託業務
従業員数16,645人
AI導入前の課題複雑な業務内容:保険業界では専門用語を含む複雑な内容のやりとりも多く、実務における対話型AI活用には一定のハードルがあった。
AI導入成果対話型AIの開発:大規模言語モデルを用いて保険領域に特化した独自の対話型AIを開発し、保険実務における活用を進めている。このAIは、社員が行う文章・資料作成や情報検索、議事録・レポートの作成など日々の業務をサポートする。
業務効率化:生成AIを導入することで、一部業務を約50%省力化することに成功。具体的には、応対文面の作成業務において約50%の省力化が達成され、そのまま回答に利用された文の割合は最低でも61%以上であったとのこと。
不正請求の早期検知:契約の内容や事故の申告状況、気象情報等の外部データに関する情報から、AIが保険金の不正な請求を早期に検知する仕組みを開発。
参照:https://www.tokiomarine-nichido.co.jp/company/about/outline/

東京海上日動火災保険は、イスラエルのAirobotics社と連携して、ドローン撮影とAI解析を組み合わせた損害調査と修理費算出の新しい方法を導入しています。

この技術は主に、自然災害などで被害を受けた工場や倉庫の迅速な保険金支払いに貢献します。ドローンによる空撮とAIによる画像解析を通じ、損害状況の迅速かつ正確な把握と損害額の算定が可能になり、お客様へのサービス向上を目指しています。

活用事例⑨:入出金データから資金需要をAIで予測(常陽銀行)

導入企業名株式会社 常陽銀行
事業内容銀行業
従業員数3,122人
AI導入前の課題問い合わせ対応の負荷:FAQシステムを導入していたが、顧客自身が回答を探しにいく必要があるなど利便性に課題があった。
AI導入成果AIチャットボットの導入:AIチャットボットを利用した問い合わせ窓口をWebサイトに設置し、2024年2月から運用を開始。これにより、問い合わせ対応に要する工数を減らし、顧客満足度を高めることを目指す。
資金需要予測の実証実験:法人の資金需要を人工知能(AI)で予測する実証実験を始めた。これにより、従来の経験に基づく人の判断では気が付かない変化の検知が可能となる。
参照:https://www.joyobank.co.jp/kabunushi/corporate/history.html

常陽銀行はNTTデータとJSOLの技術を利用して、法人顧客の入出金データから資金需要を予測するAIモデルを開発しました。このモデルは過去のデータパターンを学習し、将来の資金需要を予測します。

さらに、JSOLのクラウドサービス「FinCast」を基に、企業の業況変化を早期に検知することもできます。この取り組みにより、顧客の資金調達ニーズを迅速に把握し、営業活動を強化することが目的です。

活用事例⑩:AIによる顔認証(セブン銀行)

導入企業名株式会社セブン銀行(英名:Seven Bank, Ltd.)
事業内容ATM運営事業
従業員数432人(役員、執行役員、派遣スタッフ、パート社員を除く)
AI導入前の課題・業務部門は現業で忙しく、AIをどう活用してよいかわからない状況。
・ATMの設置場所によってお客さまの層も違い、利用頻度も変わるため、非常に予測が難しい課題があった。
AI導入成果・ATMの出入金に合わせ、全国の各拠点から現金を補充・回収していたが、各ATMの日次入出金をAIで予測し、効率化を図る。
・コールセンターの顧客対応スタッフは電話応対に注力すべく、応対後の記録は比較的簡素にしていた。その結果、問い合わせの傾向がつかみにくかったが、問い合わせの音声をテキスト化したデータを自然言語処理にかけ、問い合わせ内容の分類を行うことができた。
・以前はスコアを基に行っていたATMの設置判断をAIが行うようになった。ルールベースでは設置できていなかった部分の利用件数を精緻に予測し、採算性が見込める場所に設置していくことができた。
参照:セブン銀行

技術革新、特にフィンテックの進展により、金融業界では業務のデジタル化が加速しています。顔認証やQRコード決済を可能にする次世代ATMの導入や、AIを用いた現金需要の予測と部品の故障予測により、効率化を図っています。

セブン銀行とNECは、このような技術を活用して、安全かつ信頼性の高い金融インフラを提供し、社会のニーズに合わせた新しい価値を創造し続けることを目指しています。

金融業界におけるAI活用のリスク

AIを金融業界に導入するメリットは大きい反面、世界経済への影響や投資家との対立などのリスクも忘れてはいけません。

金融業界のAI活用リスク①:AIの独占と世界経済の不安定化

Google, Amazon, Facebookなどの巨大企業が金融市場アプリケーション向けのAI開発を独占すると、世界経済が不安定になる可能性があります。AIは基本モデルやデータ・アグリゲーターから同じ信号を取得しているため、個々のアクターが同様の決定を下す現象を促進する可能性があるのです。

金融業界のAI活用リスク②:投資家との利益の対立

AIの金融業界での利用が進む中、投資家と金融機関や顧問の利益の対立が表面化しています。AIは効率的な投資判断をサポートするツールとして注目されていますが、その利用方法や最適化の方向性によっては、投資家の利益を損なうリスクも存在します。

例えば、AIを利用したロボアドバイザーが、金融機関の利益最大化を目的に設計されている場合です。投資家のリスク許容度や目標に合った最適な投資先を推薦するのではなく、金融機関の利益を最大化する投資先を推薦する可能性があります。これにより、投資家の利益が二の次になり、金融機関と投資家の利益の対立が生じるリスクがあります。

まとめ

AIの進化は、金融業界に多大な利益と効率化をもたらしていますが、その一方で、技術の独占や投資家との利益の対立など、新たなリスクも生まれています。

これらのリスクに対処し、AIの持続可能で健全な発展を促進するためには、適切な規制やガイドラインの整備、技術の透明性と公平性の確保が不可欠です。

これからの金融業界とAIの関係の発展には、これらの課題の解決が鍵となるでしょう。