カリフォルニア州知事ギャビン・ニューサムは、俳優やパフォーマーをAIによる不正利用から保護することを目的とした2つの重要な法案、「AB 2602」と「AB 1836」に署名しました。この動きは、急速に発展するAI技術がエンターテインメント業界に与える影響に対する懸念に応えるものです。
新法の概要
- AB 2602
- 俳優がデジタル版の代役の使用方法を正確に把握できるようにします。
- 企業が実際の俳優の代わりにデジタル版俳優を使用することを許可する契約条項を禁止します（弁護士または組合代表が関与している場合を除く）。
- AB 1836
- 芸能人が亡くなった場合、その「デジタルレプリカ」の制作や配布には遺族または遺産相続人の許可が必要となります。
- デジタルレプリカは、芸術作品における肖像の使用に関する例外規定の対象外とされます。
これらの法律は2025年に施行される予定で、カリフォルニア州労働連盟と全米映画俳優組合テレビ・ラジオ芸能人連盟（SAG-AFTRA）の支持を得ています。
背景と影響
この法案は、昨年のハリウッド俳優ストライキで浮き彫りになった、AIによる労働者の置き換えへの懸念に応えるものです。新法により、俳優はAIの使用に関してあいまいな契約条項がある場合、既存の契約を破棄することができるようになります。
SAG-AFTRAのフラン・ドレシャー会長は、「これは記念すべき日です。昨年私たちが懸命に戦ったAI保護が、カリフォルニア州法によって拡大されるからです」と述べ、この法案の重要性を強調しました。
国内外の動向
カリフォルニア州は、AIからパフォーマーを保護する法律を制定した米国内で先駆的な州の一つです。テネシー州も3月に同様の法律を制定しており、この分野での法整備が進んでいます。
国際的には、OpenAIなどの生成AI事業者と新聞社との間で訴訟や提携の動きが見られ、AI技術と著作権の問題が注目を集めています。
課題と今後の展望
新法の支持者は、これらの法律が責任あるAIの使用を促進し、イノベーションを阻害しないと主張しています。一方、カリフォルニア商工会議所などの反対派は、法律の執行可能性に疑問を呈し、将来的な法廷闘争の可能性を指摘しています。
ニューサム知事は、「AIとデジタルメディアがエンターテインメント業界をどう変えているのかという点では、我々は未知の領域を進み続けています」と述べ、労働者の保護と業界の発展のバランスを取ることの重要性を強調しています。
今後、AI技術の急速な進化に対応した法整備が必要となる中、カリフォルニア州の取り組みは他の州や国々にとってのモデルケースとなる可能性があります。引き続き、AIと法律の関係について注視していく必要があるでしょう。
