データセットとは?種類・作り方・選び方をやさしく解説

AI用語

AIや機械学習を学ぶと、必ず耳にするのが「データセット」という言葉です。どんなに優れたモデルでも、学習に使うデータが偏っていたり不十分だったりすれば、正しく動きません。つまりデータセットは、AIの知識そのものを形づくる“土台”です。

とはいえ、ただ大量のデータを集めれば良いというものではありません。目的に合ったデータをどう集め、どのように整理し、どんな形式で扱うかによって、結果は大きく変わります。さらに、著作権や個人情報、ライセンスなど、法的・倫理的な配慮も欠かせません。

この記事では、データセットの基本的な仕組みや種類、作り方、選び方、そして実務での注意点を整理して解説します。読み終えるころには、自分の目的に合ったデータセットを安全かつ効果的に活用できるようになっているはずです。

📖この記事のポイント

  • データセットはAIの精度を決める学習用データの集合
  • 学習・検証・テストの3区分で構成し、再現性を保つことが重要!
  • 目的に合わせて種類・形式・量・ライセンスを選定する!
  • 入手はオープンデータ・自作・外注・AI生成の4手段がある!
  • 作成では前処理・アノテーション・分割の工程が欠かせない!
  • 法的・倫理的配慮を守り、日本語データを適切に活用することが鍵!
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監修者プロフィール
森下浩志
日本最大級のAI情報プラットフォーム「romptn ai」編集長。著書に「0からはじめるStable Diffusion」「0からはじめるStable Diffusion モデル・拡張機能集編」など、AmazonベストセラーのAI関連書籍を多数執筆。AIにおける情報の非対称性を解消するための社内研修や出張講義も行う。

データセットとは

データセットの定義と役割

データセットとは、AIや機械学習モデルの学習・検証に使うデータの集まりを指します。たとえば、猫と犬を分類するAIを作る場合、「猫の画像」と「犬の画像」を多数集め、それぞれにラベル(正解)を付けたものがデータセットです。モデルはこのデータから特徴を学び、新しい画像を見たときにどちらかを判断できるようになります。

つまりデータセットは、モデルにとっての“教材”です。どんなに優れたアルゴリズムでも、データの質が低ければ正しい知識を得られません。AIの性能を決めるのはモデルそのものではなく、「どんなデータを、どのように集めるか」にあります。

また、用途によって構成も変わります。画像・音声・テキストなどデータ形式が異なれば、前処理や保存形式、ラベル付けの方法も変わります。再現性を保つには、データ整形や分割、メタ情報(作成日・特徴量名など)の管理まで設計に含めることが大切です。

データベースとの違い

混同されやすい概念に「データベース」があります。どちらもデータを集めたものですが、目的と構造が異なります。

比較項目データセットデータベース
主な目的学習・分析のための素材業務システムでの利用・参照
内容教師データ・特徴量・ラベルなど顧客情報・在庫・取引履歴など
構造一時的・タスク特化型長期運用・更新前提
データ形式CSV・JSON・画像・音声など多様表形式(構造化データ)が中心
更新頻度静的(固定)動的(随時更新)

データベースが運用データ(業務システム向け)であるのに対し、データセットは学習用に切り出した実験データです。学習が終わった後に内容を変えると再現性が損なわれるため、基本的には固定して使います。

この違いを理解しておくと、「何を使い、どこまで固定すべきか」を判断しやすくなります。

データセットの種類と構成

学習・検証・テストデータの違い

AIモデルを正しく評価するために、データセットは通常、次の3種類に分けて使われます。

区分主な目的役割使用タイミング
学習データ(train)モデルがパターンを学ぶパラメータ更新に使用学習中
検証データ(validation)学習の過程を確認過学習の防止、ハイパーパラメータ調整学習中(都度)
テストデータ(test)汎化性能を確認未知データでの最終評価学習後

一般的な分割比率は 7:2:1(学習:検証:テスト) です。この構成により、モデルが学習データを“丸暗記”するだけの状態(過学習)を防ぎ、未知データにも強いモデルを作ることができます。

ただし、時系列データやユーザーごとのデータでは注意が必要です。たとえば売上予測などの時系列データをランダムに分けてしまうと、未来の情報が過去に混ざる「データリーク」が発生します。時間順やユーザー単位で分割ルールを設けることで、検証の正当性を保つことが重要です。

データ形式ごとの特徴と扱い方

AIで扱うデータは、目的によって形式が異なります。主な種類と特徴は以下の通りです。

データ形式内容の例主な用途注意点
画像データ写真・医用画像物体認識・分類画質やラベル精度のばらつき
テキストデータニュース・SNS・議事録自然言語処理(分類・要約・生成)表記ゆれ、日本語の形態素処理
音声データ会話・読み上げ音声音声認識・感情分析ノイズや話者の多様性
表形式データ売上・顧客属性・センサー値予測分析・回帰モデル欠損値とスケーリングの必要性
時系列データ株価・アクセスログ予測・異常検知時間順の保持とトレンド変動

複数の形式を組み合わせて使う場合、データ間の対応関係を誤ると学習が崩れます。ファイル名やラベルを統一し、メタ情報(作成年月日・特徴量名・クラスなど)を明確に記録しておくことが欠かせません。

データセットは、単なる“データの集合”ではなく、目的・分割・形式・管理ルールが一体となった構造物です。この設計思想を理解しておくと、次に説明する「目的別の選び方」がより効果的に行えます。

データセットの選び方 ― 目的別に見るポイント

AI開発では、目的に合わないデータセットを選んでしまうことが最も大きな失敗要因です。データ量が多ければよい、精度が高ければ安心というわけではありません。大切なのは「どのタスクで」「どんな制約下で」「どんな品質を求めるのか」を見極めることです。

用途別に見る比較ポイント

代表的な用途ごとの選定基準と、日本語で利用しやすいデータセットの例を整理すると以下の通りです。

用途重要指標注意点日本語データセット例
テキスト分類クラス数・件数・日本語比率ジャンル偏り・重複サンプルLivedoorニュースコーパス
要約・QA文の長さ・語彙の多様性構文の偏り・抽象度差YASO、JCommonsenseQA
画像認識枚数・解像度・ラベル精度クラス不均衡・撮影条件J-IMAGE
音声認識話者数・録音条件ノイズ・アクセント差JSUT
回帰・表形式特徴量数・欠損率外れ値・正規化の有無OpenML、日本統計データ

テキスト分類ならクラスのバランス、画像認識ならラベル精度、音声データなら話者の多様性、といった具合に、見るべき指標はタスクによって変わります。また、日本語タスクでは「日本語データがどれだけ含まれているか」も重要な品質指標です。

自分に合ったデータセットを選ぶ3ステップ

  • ① タスクを明確にする
    まず「何を予測・分類・生成したいのか」を定義します。分類ならカテゴリ数、生成なら入力と出力のペア構造を確認します。
  • ② 必要なデータ構造と量を把握する
    モデルの規模に応じて必要件数を見積もります。一般に、パラメータ数が多いモデルほどデータ量も多く必要です。
  • ③ 商用利用・品質・偏りをチェックする
    ライセンス表記(CC0、CC BYなど)や、性別・地域・年齢などの偏りを確認します。特に商用利用の可否は見落としがちな重要ポイントです。

この3ステップを意識しておくと、「後から使えなかった」「精度が出ない」といった再構築の手戻りを防げます。タスク・データ構造・法的条件を整理しておくことが、成功するAI開発の第一歩です。

データセットの入手方法

AIモデルの開発では、目的に合ったデータを「どこから手に入れるか」が成果を大きく左右します。入手方法は主に次の4つです。

  • オープンデータを利用する
  • 自作する
  • 外注する
  • AIで生成する

それぞれに利点と注意点があり、プロジェクトの規模やリソースに応じて最適な手段を選ぶことが大切です。

オープンデータセットの探し方

最も手軽なのが、公開されているオープンデータを活用する方法です。以下のようなサイトでは、研究・教育・商用利用向けに多様なデータが公開されています。

サイト名主な特徴利用時の注意点
Kaggle Datasets世界最大級の機械学習データ共有サイト。評価スコア付きで品質が高い。商用利用可否がデータごとに異なる。
Hugging Face Datasetsテキスト・音声・マルチモーダルなど最新データが豊富。英語中心で日本語は限定的。
Google Dataset Search研究機関や行政機関のデータを横断検索できる。外部サイトへの申請が必要な場合あり。
国立情報学研究所(NII)日本語・学術系データが中心。更新頻度が低いことがある。

利用時は、ライセンス条件を必ず確認しましょう。同じCCライセンスでも再配布や商用利用に制限がある場合があります。特に研究用データをそのまま商用目的に使うのは避けるべきです。

自作・外注・AI生成 ― 各方法の特徴

手段メリットデメリット向いているケース
自作自社ニーズに最適化でき、品質管理が容易工数・コストが高い社内データが豊富な場合
外注専門業者に任せられ、精度が安定依頼コストが高く仕様明確化が必要大規模アノテーションが必要な場合
AI生成(合成データ)データ不足を補える/スピーディ実データとの差異・バイアスの懸念データ拡張や補助的利用に最適

たとえば、顧客データや商品データを加工して学習に使うなら自作が最適です。画像アノテーションや音声ラベリングなど大量処理が必要な場合は外注が有効です。さらに近年では、AIが現実データを模倣して生成する合成データ(synthetic data)も注目されています。これはプライバシー保護やデータ拡張に有効ですが、あくまで補助的な用途として使うのが望ましいでしょう。

実務での判断ポイント

  • 再現性の確保:どこから取得したかを明記し、同じ条件で再現できるようにする。
  • ライセンス確認:商用利用や再配布の可否を必ずチェックする。
  • 品質とコストのバランス:完璧を目指すより、目的に合った“十分な品質”を重視する。

入手経路の特性を理解しておくことで、プロジェクトの規模・予算・目的に応じた最適な選択ができるようになります。

データセットの作り方 ― 5つの基本ステップ

データセットの作成は、単にデータを集めるだけでなく、「目的に沿って正しく整える」プロセスが重要です。以下の5つのステップを踏むことで、学習に適した高品質なデータセットを構築できます。

ステップ①:目的を定義する

最初に「どんな問題を解きたいのか」を明確にします。分類・回帰・生成などのタスクによって、必要なデータの種類や形式は変わります。

たとえば、

  • テキスト分類:ニュース記事を自動でジャンル分けしたい
  • 画像認識:製品の良品/不良を識別したい

このように出力を具体化しておくことが、データ収集・ラベリングの方向性を決める起点になります。目的が曖昧なままだと、後のアノテーション基準や評価方法がぶれてしまうため、最も重要な工程です。

ステップ②:データを収集する

目的に沿ってデータを集めます。収集経路は以下のように多様です。

  • 公開データ(Kaggle、Hugging Face など)
  • 社内データ(顧客情報、製品記録など)
  • 外部APIやスクレイピング
  • AIによる合成データやデータ拡張(augmentation)

ただし、著作権や個人情報保護には常に注意が必要です。生成データは現実の分布と異なる場合があるため、あくまで補助的に使うのが安全です。

ステップ③:前処理を行う

収集したデータは、そのままでは学習に適しません。欠損値の補完、不要な列の削除、文字コードの統一、画像サイズの揃えなどを行い、モデルが理解できる形に整えます。

  • テキスト:表記ゆれ(例:「AI」「AI」「エーアイ」)の正規化
  • 画像:明るさや角度のばらつき補正

処理ルールは必ず記録し、再学習時にも再現できるようにしておきましょう。

ステップ④:アノテーションを付与する

アノテーションとは、データに「正解情報(ラベル)」を付ける作業です。画像なら「犬」「猫」、テキストなら「ポジティブ」「ネガティブ」といった分類ラベルが該当します。

作業には Label Studio や CVAT などのツールが便利です。品質を保つには、複数人で同じデータをラベル付けし、整合率(アノテータ間一致度)を確認するとよいでしょう。

ステップ⑤:データを分割・検証する

最後に、データを学習・検証・テスト用に分割します。一般的には 7:2:1 の比率が使われますが、時系列データでは時間順を保つことが重要です。未来の情報が混ざると「データリーク」が発生してしまいます。

分類問題では、クラス比率を維持した層化サンプリングを行うと安定した評価が得られます。

よくある落とし穴と回避策

落とし穴問題点回避策
データリーク検証・テストに同一情報が混入ユーザー単位・時系列単位で分割
不均衡データ特定クラスが極端に少ないオーバーサンプリングや重み付け
ラベル誤りアノテータ間の認識違い二重チェックと基準表の共有
重複データ同一画像・文書が複数含まれるハッシュ値で重複検出・除去

こうした手順を一度整備しておくと、再学習や他プロジェクトへの転用も容易になります。データセットづくりは地道な作業ですが、ここを丁寧に設計することが最終的なモデル性能を左右する最大の要素です。

データセットの注意点 ― ライセンスと倫理面

AI開発では、精度や量だけでなく、法的条件と倫理的配慮を理解しておくことが不可欠です。特に商用プロジェクトでは、ライセンス違反や個人情報漏えいが企業リスクにつながるため、設計段階から意識する必要があります。

商用利用とライセンスの違い

公開データセットには、著作権や再配布に関するルールが定められています。代表的なライセンス形態と利用条件は以下の通りです。

ライセンス商用利用クレジット表記再配布備考
CC0不要完全自由に利用可能
CC BY必要出典明記が条件
CC BY-SA必要派生物も同条件で公開
CC BY-NC×必要非商用利用限定
独自規約要確認要確認要確認商用禁止のケースもあり

特に注意すべきなのは「Non-Commercial(非商用)」のライセンスです。研究や教育では利用できても、企業のプロダクト開発やサービス提供では違反になる場合があります。また、クレジット表記を怠るとライセンス違反と見なされることもあります。

利用前には必ずライセンス原文を確認しましょう。Creative Commons公式サイトでは日本語版も確認できます。独自規約の場合は、提供元の利用条件を必ず参照してください。

個人情報・プライバシーへの配慮

画像・音声・テキストなどのデータには、個人を特定できる情報が含まれていることがあります。これをそのまま学習に使用すると、プライバシー侵害となるリスクがあります。

  • 氏名・住所・メールアドレスなど個人識別情報を削除する
  • 顔やナンバープレートなどの画像をぼかす
  • テキストでは固有名詞を匿名化・要約する
  • 社内データ利用時は、同意書や利用範囲を明確にする

特に社内データをAI学習に利用する場合、契約や社内規定上の許可範囲を事前に確認しておくことが重要です。

データのバイアスと倫理的配慮

もう一つ見落とされがちなポイントが、データの偏り(バイアス)です。特定の属性に偏ったデータで学習すると、AIの判断にも偏りが反映されてしまいます。

これを防ぐには、次の工夫が有効です。

  • サンプルの多様性を意識して収集する
  • 出力結果を属性ごとに分析し、差異を検証する
  • 公開前に「想定外の影響」がないかを確認する

また、データセットの透明性を確保するために、データカード(データ概要書)や収集意図の明示を添えることも推奨されます。

ライセンス・個人情報・倫理の3点は、AIの信頼性を支える基盤です。法的に問題がないことだけでなく、社会的に受け入れられるAIを作る視点を持つことが、長期的な運用において最も重要です。

日本語タスクで使える代表的データセット

AI・自然言語処理の分野では、英語のデータセットが圧倒的に多く、日本語対応の高品質データはまだ限られています。しかし近年、研究機関や企業による日本語データの整備が急速に進み、実務でも使いやすい環境が整いつつあります。ここでは、代表的な分野ごとに主要な日本語データセットを紹介します。

分野別の主要データセット一覧

分野名称提供元商用可否主な用途
テキスト分類LivedoorニュースコーパスRONDHACKニュース分類、文書分類
要約生成YASO(Yet Another Summarization Objective)NICT△(研究中心)要約モデル学習
質問応答(QA)JCommonsenseQA東北大学×日本語QAタスク
音声認識JSUT(Japanese Speech Corpus)東京大学音声認識モデル学習
画像認識J-IMAGE DatasetNII物体認識・画像分類
感情分析RakutenレビューコーパスRakuten Instituteテキスト感情分類
文書理解JGLUERIKEN / 東北大学BERT系モデル評価用

(※商用可否は2025年11月時点の公開条件に基づく)

日本語データを扱う際のポイント

  • 商用利用の可否を必ず確認する:研究目的のみ利用可能なデータもあるため、ライセンス条件を事前に確認する。
  • アノテーション品質を確認する:特に感情分析や要約タスクでは、ラベル付けの主観差が精度に直結する。
  • 更新時期を意識する:古いデータでは語彙・文体が現代の用法と合わない場合があるため、必要に応じて自作データで補う。

日本語データの拡大が進む分野

  • チャットボット・要約生成:LLM向けにQA・要約ペアデータの公開が拡大中
  • 音声合成・ASR:JSUT・JVSなど多話者音声コーパスの整備が進む
  • 画像キャプション生成:日本語テキスト付きのCOCO-JPなどが登場

英語圏に比べるとまだ量は少ないものの、日本語特有の構文・語彙特性に対応したデータを整備することで、実務応用の精度は大きく向上します。オープンデータを活用しつつ、自社データを追加して補うのが理想的なアプローチです。

まとめ

  • データセットはAIの性能を左右する“知識の源”であり、単なるデータの集まりではない。
  • 学習・検証・テストの構成やデータ形式の違いを理解すると、精度と再現性が高まる。
  • 目的に応じた選び方と入手経路を意識することで、品質とコストのバランスを最適化できる。
  • ライセンスや個人情報、バイアスへの配慮は実務での信頼性を左右する。
  • 日本語タスクでは公開データを活用しながら、独自データの整備で精度を底上げできる。

AIの成果は、モデル構造よりもデータの質に強く依存します。どんな目的で、どんな形のデータを使うのかを意識することが、AI活用のすべての出発点です。データセットを正しく設計し、丁寧に扱う習慣を持てば、どんなプロジェクトでも安定した成果を生み出せるようになります。

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