AIのハルシネーションを防ぐ方法|誤情報を減らす実践ステップ

AI用語

ChatGPTやClaudeを使っていて、「それっぽいけれど間違っている」答えを見たことはありませんか?存在しない論文を引用したり、実際にはない機能を説明したり──。こうした現象は「ハルシネーション(hallucination)」と呼ばれ、AIが根拠のない情報をもっともらしく出してしまうことを指します。

AIの仕組み上、ハルシネーションを完全に防ぐことはできません。しかし、質問設計と確認の手順を工夫することで、誤情報の発生を大きく減らすことができます。本記事では、AIを安全に使うための質問テンプレート・検証ステップ・運用ルールを体系的に紹介します。

監修者プロフィール
森下浩志
日本最大級のAI情報プラットフォーム「romptn ai」編集長。著書に「0からはじめるStable Diffusion」「0からはじめるStable Diffusion モデル・拡張機能集編」など、AmazonベストセラーのAI関連書籍を多数執筆。AIにおける情報の非対称性を解消するための社内研修や出張講義も行う。

AIのハルシネーションとは?

生成AIのハルシネーションとは、実際には存在しない情報を、もっともらしい形で生成してしまう現象です。英語の“hallucination(幻覚)”の通り、AIが見えていないものを語るような状態です。

  • 存在しない書籍や論文を「出典」として挙げる
  • 実在しない製品や機能を説明する
  • 根拠のない数値や統計を作り出す

AIは正確さよりも「自然で文脈的に整った文章」を優先して出力します。つまり、文体が整っていても内容が正しいとは限りません。AIが“嘘をつく”のではなく、確率的に「ありそうな言葉の並び」を生成しているだけです。

なぜAIは“ありそうな嘘”をつくのか

  • 確率的生成の限界:自然な文章を優先するため、根拠がなくても整っていれば出力してしまう。
  • 学習データの偏りや更新遅れ:古い情報や偏ったデータを再利用してしまう。
  • 曖昧な質問や文脈不足:質問が広すぎるとAIが想像で補う。

この3点が重なると、誤情報が生まれやすくなります。とはいえ、仕組みを理解したうえで質問設計を工夫すれば、ハルシネーションの多くは抑えられます。

ハルシネーションを減らす質問設計のコツ

  • 前提条件を明確にする:対象・期間・観点を指定して、AIの推測を減らす。 例:「2024年以降にリリースされたChatGPT TeamとEnterpriseの違いを、料金・セキュリティ・利用範囲で比較してください。」
  • 根拠や出典を求める:「出典URLや日付を明記してください。不明な場合は“不明”と書いてください。」と指示する。
  • 曖昧な言葉を避け、質問を分割する:抽象的な質問より、1問1テーマで段階的に聞く。
  • モデルやバージョンを指定する:使用しているAIの名前・年を明示して整合性を取る。
  • 要約と再確認を組み合わせる:要約→再確認→整形の3段階で精度を高める。

用途別プロンプトテンプレ|そのまま使える4例

実務シーンごとに誤情報を防ぐテンプレートを用意しておくと便利です。

レポート・企画書作成

2025年以降に公開された〇〇業界の最新動向を3つ挙げてください。
各情報の出典URLまたは発表日を明記してください。不明な場合は「不明」と記載してください。

メール・社内文書

目的:新サービスの案内
文体:ビジネスカジュアル(です・ます調)
禁止事項:誇張・根拠のない主張
文字数:300字以内

比較表・資料作成

ChatGPT/Claude/Geminiの特徴を比較表で作成してください。
項目:料金・機能・特徴。各項目の出典URLを添えてください。

リサーチ・調査補助

「AIハルシネーション対策」に関する2025年時点の最新研究を3件挙げてください。
各論文のタイトル、著者、発表年、発表元を表形式で示し、出典URLを添えてください。

AIの誤情報を見抜く!3つの確認ステップ

ステップ内容
① 自己検証数字・日付・固有名詞を再計算・検索で確認する。
② 出典検証URL・発行日・発信元を確認し、一次情報かを判断する。
③ 交差検証別のAIや検索エンジンで同じ質問を再確認する。

この3段階をExcelやNotionのチェックリストに落とし込むと、検証作業を習慣化できます。

業務に組み込む安全運用ルール

  • AI出力は下書き:最終判断は人間が行い、生成版と最終版を分けて保存する。
  • AI+人の二段構え:AIが出す→人が検証→承認する流れを社内ルールに組み込む。
  • 出典・更新日の明記:「モデル名+回答日+出典URL」を残しておくと再検証が容易。
  • セキュリティ・プライバシー:個人情報・社外秘は入力禁止。無料プランや外部API利用時は保存ポリシーを確認する。

ハルシネーションを減らす習慣のつくり方

  • すぐ答えを信じず、一拍おく:「根拠は?」と一度問い直すだけで誤情報を防げる。
  • AIを考える相棒に:答えを求めるのではなく、対話で理解を深める使い方に変える。
  • 誤りを見つけたら修正版プロンプトを残す:再利用して、自分の質問力を高めていく。

よくある質問(FAQ)

Q1. AIが出典を示せない場合は、どうすればいいですか?

AIが「出典不明」または「出典を示せません」と答える場合、その情報は確認できない仮説と考えるのが安全です。再質問で「一次情報や公式サイトを確認して」と指示するか、自分で公式発表・一次資料を検索して照合しましょう。出典が確認できない情報は、原則として業務に使用しないのが確実です。

Q2. 社内データや機密情報を使ってAIに分析させたい場合は?

ChatGPTなど一般的な生成AIは、入力した内容が外部サーバーを経由して処理されるため、社外秘や個人情報の入力は避けましょう。もし社内データで分析を行いたい場合は、閉域環境で動作する社内専用AIや、検索併用型(RAG)を組み込んだ社内システムの利用を検討するのが安全です。

Q3. どのAIモデルが一番正確ですか?

正確さはモデルそのものよりも、「質問の設計」と「確認の手順」に大きく左右されます。ChatGPT、Claude、Geminiなど主要モデルの性能差は小さくなっており、最終的な品質はユーザーの使い方に依存します。どのAIでも、出典を求め・再確認を行う姿勢が結果の信頼性を高めます。

まとめ:AIと上手に付き合うための3つの心得

  • AIの答えは仮説として扱う:どんな回答も鵜呑みにせず、確認を前提に。
  • 質問設計と確認で誤情報は減らせる:前提を明示し、出典を求め、3段階で検証。
  • AIを正しく疑うことが最大のリテラシー:検証を前提に使うことで、安心して業務に活かせる。

AIを盲信せず、正しく疑いながら使うこと。それが、これからの時代に求められる“AIとの付き合い方”です。

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