建築業界でのAI活用事例5選!建築の仕事はAIに奪われるのか? | romptn Magazine

建築業界でのAI活用事例5選!建築の仕事はAIに奪われるのか?

AI×業界

様々な業界でAIを活用するケースが増えていますが、そのうちの一つに建設・建築業界もあります。

建築業界でAIを活用した場合、安全性や生産性の向上などの多くのメリットがあるため、すでに多くの企業が現場でAIを取り入れて作業を行なっています。

しかし、「いずれ建築関係の仕事は全てAIに奪われてしまうのではないか?」と不安に感じる方もいらっしゃるかと思います。

そこで当記事では、建設業へのAI導入の現状と課題、実際の導入事例、今後の展望について解説します。

ぜひ最後までご覧ください。

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現在の建築業界の動向・課題

建築業界は、いま大きな変革を迫られています。

2024年問題”と呼ばれる「働き方改革関連法」による労働時間規制の猶予期限が大きな理由です。

人口減少や少子高齢化による人材不足が深刻化する中、時間外労働や休日出勤の規制が厳しくなり、生産性確保が業界の最重要課題となっています。

そこで注目されているのが、AIやIoT、ビッグデータなどの先端技術の活用です。これらの技術は、建設現場のさまざまな工程を効率化し、生産性のみならず品質や安全性も向上させる可能性を秘めています。

政府も2017年6月に閣議決定された「未来投資戦略2017」の中で、「AIやロボットの活用であらゆる建設現場の生産性の向上(2025年までに2割)を目標とすること」を掲げています。

AIによって建築業界の人材不足をはじめとする課題解決は可能?

AIによって建築業界の人材不足をはじめとする課題解決は可能なのか

結論として、AIの活用によって建築業界の人材不足をはじめとする課題解決は可能です。

AIは単純作業や負担の大きい作業を自動化し、人間が関わる作業量が減ることで、人材不足は解消されます。実際にロボットの活用で単純作業を減らし、働き方改革に成功している企業があります。

また、AIは建築業界の人材確保にも貢献します。

AIは熟練技術者の知識や経験をデータ化し、若手や未経験者にも伝えることができます。他にもAIやロボットの導入で建築業界のイメージや安全性向上が進み、女性従業員の増加などのメリットも期待できます。

以上のように、AIは建築業界の人材不足をはじめとする課題解決に有効な手段です。今後も、AIの技術の進化と普及により、建築業界の変革が加速していくことが期待されます。

建築業界でのAI活用のメリット

建築業界でのAI活用のメリット

AIによって建築業界が抱える人材不足などの課題解決が進むと考えられています。

以下、AI活用で得られるメリットを解説します。

建築業界でのAI活用のメリット①:単純作業の自動化が可能

建築業でAIを活用するメリットの一つ目は、単純作業の自動化が可能になることです。

単純作業とは、繰り返しやルールに基づいて行う作業のことで、例えば、建築図面の作成やチェック、外壁の点検や溶接、資材の運搬や管理などが挙げられます。

これらの作業は、人間にとっては時間や労力がかかる一方、創造的なアイデアは必要としないため、AIやロボットにとっては得意な作業です。AIやロボットに単純作業を任せることで、人間はより創造的あるいは属人的な作業に集中できるようになります。

また、単純作業の自動化によって、人材不足の解消や作業の効率化、品質向上も期待できます。

建築業界でのAI活用のメリット②:作業の安全性の向上が可能

建築業でAIを活用するメリットの二つ目は、作業の安全性の向上が可能となる点です。

建築現場では、高所や狭い場所・重量物などの危険が多く事故や災害のリスクが高いため、安全性向上の対策が不可欠です。

たとえば、AI搭載のカメラやセンサーによる物体検知を使って、現場の状況や作業員の動きを監視します。その動きやさまざまな情報を分析して危険予知、事故の防止や早期発見につなげることができます。

他にも、AI搭載のロボットやドローンを使って、人間にとって危険や困難・複雑な作業を代行することで、作業員の負担やリスクを軽減することも可能です。

AIには工程や決まりを学習させ、ルール遵守を徹底することでより安全に作業を進めることができます。

建築業界でのAI活用のメリット③:生産性向上が可能

建築業でAIを活用するメリットの三つ目は、業務の生産性向上が期待できる点です。

建築業界は熟練技術者の高齢化による人材不足が深刻な問題となっています。これは、生産性の低下や技術の継承が困難になっていることを示します。しかし、AIを活用することで、熟練技術者の知識や経験をデータ化し、若手や未経験者にも伝えることができます。

例えば、建設機械にセンサーを設置してベテラン作業員の作業情報を収集し、AIに学習させてその手法を別の作業員に共有することが可能です。

他にも、前述した作業の自動化や安全性向上により、人と機械の仕事分担を最適化でき生産性向上につながります。

建築業界でのAIの導入・活用事例

実際に建築業界ではAIの導入・開発が進んでいます。

ここでは、AIが活用されている事例についてご紹介します。

建築業界のAI活用事例①:全ての戸建住宅工事現場へのWebカメラ設置(大和ハウス工業)

引用:大和ハウス工業株式会社

大和ハウス工業株式会社は、戸建住宅の全工事現場においてWEBカメラを導入(2022年2月17日より)しました。

工事状況や資材の運搬状況のデータを収集し、AIで解析しています。

今後は、工事現場での作業・工場での部材生産・物流倉庫からの部材輸送の進捗状況をデータベース化してAI分析することで、各工程の効率化を図ります。また、作業場や作業員の状況を検知し、危険予知や危険予防による安全管理に活用していきます。

全ての戸建住宅工事現場にWEBカメラを導入します|大和ハウス工業オフィシャルサイト
全ての戸建住宅工事現場にWEBカメラを導入します

建築業界のAI活用事例②:AI技術で高齢者施設の排便管理サポート(LIXIL)

引用:株式会社LIXIL

LIXILは高齢者施設向けに、入居者の排便管理ができるトイレの新機能「トイレからのお便り」を開発しています。

排便のタイミング・便の形・便の大きさを、AI 技術を活用し自動で判定・記録する仕組みです。

排便状況を施設のステーションで一括確認し、入居者の状態・心理に配慮しながら、便秘による腸閉塞や下痢による脱水症状を防ぐことを目指し、研究・開発が進められています。

LIXIL|ユニバーサルデザイン|リクシルの取り組み|トピックス|高齢者施設の排便管理をAI技術でサポートする「トイレからのお便り」
LIXILのユニバーサルデザインの取り組みの1つ「トイレからのお便り」についてご紹介します。

建築業界のAI活用事例③:労災防止のためのAI安全支援ツール「HAio」(平山)

引用:株式会社 平山

株式会社平山は労働災害を防止するAI安全支援ツール「HAio(ハイオ)」を開発しました。

過去の労災データ、過去・当日の環境、従業員個人の当日の状態をもとに、労災リスクを算出する仕組みで、人が機械を動かすような製造業の現場で主に活用されています。

従業員がアンケートや簡単な反応ゲームを毎日実施することで、その結果をAIが機械学習して数値化します。そのため、管理者・従業員自身が見過ごしてしまうような体調不良も検知して、労災防止の管理をサポートします。

HAio(ハイオ)- 労働災害を防止するAI安全支援ツール
HAioとは、AI(人工知能)による機械学習分析を活用した職場におけるゼロ災害を目指す保険システムです。

建築業界のAI活用事例④:ロボットの建設現場内自律移動システム「iNoh」(鹿島建設/Preferred Networks)

引用:鹿島建設株式会社

鹿島建設株式会社と株式会社Preferred Networks(自動ロボットを開発するベンチャー企業)は、建築現場のロボットが現場内を自律移動するためのシステム「iNoh(アイノー)」を共同開発しました。

AI技術を搭載したシステムにより、ロボットがリアルタイムに自己位置や周辺環境を認識し、日々刻々と状況が変化する現場内を安全かつ確実に移動できるようになります。

「iNoh」を実装した例として、AI清掃ロボット「raccoon(ラクーン)」が開発されました。首都圏をはじめ、順次建築現場に導入されています。

建築現場用ロボット向けにAI技術を搭載した自律移動システムを開発 | プレスリリース | 鹿島建設株式会社
鹿島建設株式会社のプレスリリースをご案内します。

建築業界のAI活用事例⑤:自律走行搬送ロボットシステム「T-DriveX」(大成建設)

引用:大成建設株式会社

大成建設株式会社は、自律走行搬送ロボットシステム「T-DriveX」を開発しました。

AIによる画像解析やマッピング技術を用いることで、建設現場特有の作業環境でも対応できるのが特徴です。

「T-DriveX」を搭載したロボットは、施工状況に応じて日々変化する建設現場において、資機材や障害物の位置を自ら把握して搬送できます。

また他にも、指定エリア内にある台車や資材をカメラによる画像解析で判別し、種別ごとに仕分けて別のエリアに自動搬送する機能もあり、人手不足を補うことが期待されています。

自律走行搬送ロボットシステム「T-DriveX」を開発 | 大成建設株式会社
自律走行搬送ロボットシステム「T-DriveX」を開発のページです。大成建設株式会社は「人がいきいきとする環境を創造する」というグループ理念のもと、自然との調和の中で安全・安心で魅力ある空間と豊かな価値を生み出し、次世代のための夢と希望に溢れた地球社会づくりに取り組んでいきます。

AI活用の未来:AIは建築業界で人間から仕事を奪う?

AIは建築業界で人間から仕事を奪うのか

AIの活用が広まってきた建築業界ですが、業務効率化が進む一方、「人間の仕事がAIに奪われるのではないか?」と不安に感じる方も多いのではないでしょうか。しかし、AIは完全に人間に取って代わるものではなく、上手に活用していくツールだと考えることが重要です。

現時点では、AIはデータをもとにした論理的予測を得意とし、創造力が求められる作業は得意ではありません

建築業界において、膨大なデータを分析し予測を行うことが機能として求められる一方、創造力(クリエイティビティ)も不可欠です。建築物は単なる機能のみでなくデザインの美しさや趣味趣向を取り入れる場合も多くあります。

建築デザインやクリエイティブな発想は、人間の得意領域です。理論的に説明できない創造力はAIの苦手な領域であり、この業務領域は人間が担当する必要があります。

結論として、AIの導入によって建築業界の仕事の一部が自動化されることは確かです。しかし、AIが完全に人間の仕事を奪うことはありません。むしろ、AIの活用によって、人間はより高度な業務に集中できるようになるでしょう。

AI活用の幅は広がり続ける

AI(人工知能)やロボットは、完全に人間に代わることはないとしても、建築の設計、施工、管理業務のさまざまな工程において、活用の幅が広がり続けることは間違いないでしょう。AIが人間の仕事を助ける、あるいは代替することで、安全性向上、効率化、改善などの多くのメリットをもたらしています。

AIと人間が分担して作業することにより、さまざまな建築業を同時並行して進めることができます。これは人材不足の対策であるとともにスピード・品質・安全性の改善の手段です。

AIは、建築業界で人間から仕事を奪うのではなく、人間の役割を変えるのです。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

当記事では、建設業へのAI導入の現状と課題、実際の導入事例、今後の展望について解説しました。

建築業界におけるAIの活用は日々進んでおり、今後もその活用は加速、幅を広げていくことでしょう。人材不足など課題が多いこの業界で、AIを使わない企業は淘汰されていく可能性すらあります。

しかし、現在のAIは創造性が必要となる作業は苦手であることから、建築に関する仕事が全てAIに奪われる心配は無いと言えます。

単純作業や危険が伴う作業など、人間よりもAIが得意とする業務からAIを導入・活用してみてはいかがでしょうか。