人と機械が対話形式でコミュニケーションするプログラムであるチャットボットを、コールセンターでの顧客対応のツールとして活用したいと考えている方もいらっしゃるでしょう。
しかし、チャットボット導入にあたって次のような疑問を抱えるケースもあるでしょう。
- そもそも自社がチャットボット導入に向いているか分からない
- チャットボットをコールセンターに導入する効果・メリットが分からない
- コールセンター向けチャットボットの選び方が分からない
そこで、当記事では、コールセンターでのチャットボット導入の効果やメリット、コールセンター向けチャットボットの選び方・比較するポイント、実際の導入事例などについて解説します。
コールセンターでのチャットボット活用をお考えの方はぜひ最後までご覧ください。
コールセンター向けチャットボット導入の効果・解決できる課題
まず、コールセンター向けチャットボット導入の効果と解決できる課題について解説します。
チャットボットで解決できる課題①:顧客の自己解決のサポート
コールセンター向けチャットボットは、顧客が自己解決するために必要なサポートやよくある質問に迅速に応答できます。そのため、Webサイト上でチャットボットが稼働することにより、電話やメールでの問い合わせ数を削減し、企業の業務の効率化を進められます。
チャットボットと人間の応答を組み合わせることで、複雑な問題にも対処でき、問い合わせ数の削減効果が期待できます。これにより、スムーズで迅速な顧客サポートが提供され、業務の効率向上と顧客満足度の向上が実現されるのです。
チャットボットで解決できる課題②:営業時間外の問い合わせ対応
コールセンター向けチャットボットは、営業時間外や夜間における問い合わせ対応の課題を解決します。有人対応が難しい時間帯であってもチャットボットが自動応答することで、基本的な情報提供や顧客自身での問題解決を可能にします。
これにより、顧客は迅速かつ柔軟にサポートを受けることができ、顧客満足度向上につながります。また、チャットボットは24時間稼働できるため、営業時間外の問い合わせに対処することで、企業のサービス提供の範囲を拡大し、顧客とのコミュニケーションを強化できるといった効果もあります。
その結果、顧客がいつでも必要な情報を得られる環境が整い、全体的なサービス品質が向上します。
チャットボットで解決できる課題③:顧客対応の品質均一化
コールセンター向けチャットボットを活用することで、問い合わせ対応の品質均一化を進めることができます。
人間の対応の場合は担当者ごとに品質に差があるケースがあり、回答の内容や質が異なることが従来よくみられた課題でしたが、チャットボットは事前に定義されたスクリプトやルールに基づいて一貫性のある回答を提供します。
これにより、顧客が同じ問い合わせに対して異なる品質の対応を受けるケースがあるという問題を軽減できます。
品質の均一化により、企業は顧客満足度を向上させ、良好な顧客体験を提供しやすくなるのです。
コールセンター向けチャットボット導入のメリット
コールセンター向けチャットボット導入のメリットについて7つご紹介します。
コールセンター向けチャットボットのメリット①:24時間365日対応可能
コールセンター向けチャットボットの大きなメリットの1つ目は、24時間365日対応が可能な点です。友人での対応では時間帯の制約がありますが、チャットボットは常に稼働することができるため、顧客の問い合わせにいつでもすぐに対応することができます。
これにより、営業時間外や祝日、深夜などでも待ち時間を削減し、顧客がいつでも必要な情報やサポートを得ることができます。対応可能な時間帯の拡大は顧客満足度の向上に繋がり、迅速かつ柔軟なサービス提供が可能となります。
また、24時間365日対応可能であるため、時差のある地域や国からの問い合わせにも迅速かつ一貫性のある対応ができるため、国際的なサービス展開を行う企業にとっても強い味方となります。
コールセンター向けチャットボットのメリット②:問い合わせ対応業務の効率化
コールセンター向けチャットボットのメリットの2つ目は、問い合わせ対応業務の効率化です。
チャットボットは自動応答で基本的な問い合わせに対処し、有人対応が必要なケースのみ、担当者に転送される仕組みとなっています。
これにより、多くの割合を占める標準的な問い合わせにはチャットボットが対応し、カスタマーサポートの効率が向上します。効率化に伴い、従業員の人数削減やタスクの効率向上が期待できます。
また、チャットボットは問い合わせがあれば速やかに対応し、同時に複数の問い合わせに対応できるため、待ち時間が削減され、顧客満足度が向上します。
問い合わせ対応業務の効率化は、企業の運営コスト低減やスケーラビリティの向上にも貢献するでしょう。
コールセンター向けチャットボットのメリット③:顧客満足度向上
コールセンター向けチャットボットのメリットの3つ目は、顧客満足度の向上です。
電話やメールのみでの問い合わせと比較すると、チャットボットとのやり取りには即時性があり、顧客は迅速かつ効率的な対応を期待できます。これは、顧客が不満や問題をすぐに解決できることを意味しており、その結果として顧客満足度の向上につながります。
また、すでに触れたようにチャットボットは24時間365日対応可能であるため、顧客はいつでも必要な情報やサポートを受けることができます。この点からも、顧客が企業のサービスに信頼感を抱きやすくなり、結果として顧客満足度の向上につながります。
コールセンター向けチャットボットのメリット④:顧客接点の増加
コールセンター向けチャットボットのメリットは、顧客接点の増加です。
チャットボットは様々なチャネルで展開でき、企業のウェブサイトやソーシャルメディアなど、さまざまなプラットフォームで利用可能です。
これにより、顧客は自分が利用しやすい手段で企業とやり取りできるため、顧客接点が増加します。
企業は顧客との関係をより強化できるため、新たな顧客獲得の機会が増えます。これにより、企業はさらなる売上増加につなげやすくなります。
コールセンター向けチャットボット導入に向いている企業の特徴4選
ここまではチャットボット導入の効果やメリットについて解説してきましたが、どのような特徴のあるコールセンターがチャットボットの導入に向いているのでしょうか。
こちらで解説していきます。
チャットボット導入に向いている企業①:定型的な質問が多い
コールセンター向けチャットボットは、特に定型的な質問が多い企業に適しています。
例えば、商品の仕様、営業時間、配送状況などの一般的な疑問に対する回答は、チャットボットを用いることで効率的に対応できます。
その反面、チャットボットの性質上複雑な問い合わせに対応可能となるような学習が困難であるため、コールセンター向けチャットボットは、複雑な問い合わせへの対応には適しません。
そのため、質問が定型的で多い企業であれば、チャットボットの導入によって業務の合理化と効率向上を実現できます。
チャットボット導入に向いている企業②:問い合わせ数が多い
チャットボットの導入は、問い合わせ数が多い企業には特に効果的です。大量の問い合わせを人が処理するのは効率的でなく、顧客の待ち時間や対応の遅れが生じる可能性があります。
しかし、チャットボットを活用すれば対応を自動化できるため、同時に多くの問い合わせに対処できます。定型的かつ繰り返しの多い質問に対して速やかに対応できることにより、顧客の期待に応え、迅速かつ一貫性のあるサービスを提供できます。
問い合わせ数が大きい企業では、チャットボットの導入により人的リソースを効率的に活用し、労力を節約できます。これにより、企業は規模の大きなサービスを展開している状態であっても、高品質なカスタマーサポートを維持することができるため、総合的な顧客満足度の向上につながります。
チャットボット導入に向いている企業③:FAQの数が多い
FAQ(よくある質問)の数が多い企業は、チャットボットの導入に適しています。
大量のFAQがある場合、従業員がそれに一つずつ対応するのは効率的ではありません。しかし、チャットボットはこれらのFAQに基づいて即座に回答できます。
チャットボットは多様なテーマや情報に対し、顧客が持つ疑問に速やかにアクセスできるようにします。しかし注意点として、FAQの品質や適切なカテゴリ分けがうまくできていない場合、チャットボットは効果的に機能しない可能性があります。
FAQの量が膨大な場合や適切な整理が行われていないと、顧客が目的の回答に辿り着けない恐れがあるため、FAQの整理と適切なカテゴリ分けを行うことができる企業であれば、チャットボットを高い効果で導入できると言えます。
チャットボット導入に向いている企業④:データ解析に注力したい
データ解析に注力したい企業は、チャットボットの導入によって重要な利点を得られます。
チャットボットは顧客との対話データを自動的に蓄積し、それをデータ解析に活用できます。これにより、企業は顧客の傾向やニーズを把握し、サービスや製品の改善に役立てることができます。
また、チャットボットが自動で対応した際の大量の対話データを活用することで、企業は顧客からの意見やフィードバックを把握できます。データ解析を通じて得られる情報は、戦略の調整やビジネスプロセスの最適化に役立ち、企業は効果的な意思決定を行えるようになります。
これにより、企業はさらにビジネスを発展させることができるようになるのです。
コールセンター向けチャットボットの選び方・比較するポイント
実際にチャットボットを導入する際、何を意識して選べば良いのでしょうか。
ここでは、コールセンター向けチャットボットの選び方とそれらを比較するポイントについて説明します。
チャットボットの選び方①:自社の課題・目的にマッチしたツールを選ぶ
コールセンター向けチャットボットを選ぶ際には、まず自社の課題と目的を明確に把握し、それにマッチしたツールを選ぶことが重要です。
顧客対応や社内業務対応など、自動化したい箇所が異なる場合、最適なチャットボットは異なります。そのため、プロジェクトの特性や、ニーズにマッチした機能、機能に柔軟性があるかどうかを比較・検討することが重要です。
このように、自社の課題や目的にマッチするチャットボットを選ぶことで、効果的な導入と業務効率の向上を実現できます。
チャットボットの選び方②:有人対応への切り替えは可能かどうかで選ぶ
コールセンター向けチャットボットの選択において、有人対応へのスムーズな切り替えが可能かどうかは重要です。
この機能があることで、チャットボットが処理しきれない場合でも、顧客は人間の担当者のサポートを受けることができます。チャットボットの中には、このような引き継ぎ機能を持たないものも存在するため、事前に確認が必要です。
チャットボットの選び方③:導入・運用コストで選ぶ
コールセンター向けチャットボットを選ぶ際には、導入・運用コストを考慮することが重要です。初期費用や導入にかかる費用など、企業の予算に合わせて検討する必要があります。
初期費用を最小限に抑えたサービスを選びたいと考える場合は、価格体系が柔軟なサービスを選んだり、クラウドサービスを選ぶようにしましょう。
また、メンテナンスや運用にかかるランニングコストも確認し、運用フェーズでのスムーズな機能追加やアップデートが料金に含まれているかどうかも確認しましょう。
この2点を確認することで、長期的な運用におけるコストの予測が可能となります。
全体的なコストを把握することで、予期せぬ追加費用を回避し、効果的かつ経済的な導入・運用が実現できます。
チャットボットの選び方④:搭載AIの精度で選ぶ
チャットボットの選定において、搭載されたAIエンジンの精度は重要です。サービスやプロバイダーごとに、搭載されているAI技術やアルゴリズムには違いがあります。
選ぶべきチャットボットは、単なるキーワードマッチングだけでなく、ユーザーの発言の文脈を理解して処理し、自然な対話を実現できるAIエンジンを備えていることが重要です。
高い精度を持つAIエンジンは、ユーザーの質問やニーズを正確に理解し、適切な回答を提供しやすいという特徴があります。
そのため、企業は自社のニーズや期待に適したレベルの精度を持つチャットボットを選ぶ必要があります。これにより、ユーザーにとって使い勝手の良いチャットボットとなり、効果的なコミュニケーション手段とすることができます。
チャットボットの選び方⑤:連携可能なシステムで選ぶ
チャットボットの選定において、「連携可能なシステムで選ぶ」ことは重要です。企業は様々な外部システムや周辺業務とのシームレスな連携ができるチャットボットを選ぶことで、業務プロセスの効率化を実現できます。
例えば、CRM(顧客関係管理)システム、ERP(企業資源計画)システム、予約管理システムなどとの連携がスムーズに行われることで、チャットボットはより豊富な情報を利用してユーザーに適切なサポートを提供できます。また、連携可能なシステムが増えることで、顧客によりパーソナライズされたサービスを提供することも可能です。
このように、連携が可能なシステムがあることは、社内の業務プロセスの効率化を進め、従業員と顧客の双方にとってのメリットとなります。
したがって、チャットボットを導入する際には、既存のシステムとの連携がスムーズに行えるかどうかも重要な検討ポイントとなります。
コールセンター向けチャットボットの導入・活用事例
ここでは、コールセンター向けチャットボットの実際の導入・活用事例を紹介していきます。
コールセンターのチャットボット導入事例①:定型質問への対応「PKSHA Chatbot」(京葉銀行)
「PKSHA Chatbot」は、京葉銀行のコールセンターで活用されており、定型質問へ迅速かつ正確に対応します。
AI技術を活用し、顧客の要望に即座に答え、待ち時間を削減し、効率的なカスタマーサービス提供に成功しています。
コールセンターのチャットボット導入事例②:ゴミ分別案内用チャットボット(横浜市)
横浜市のゴミ分別案内用チャットボットは、市民に対し正確かつ分かりやすいゴミ分別情報を提供しています。
チャット形式でリアルタイムに質問に回答し、分別作業をサポートしてくれ、市民の疑問解消と正しいゴミ処理に貢献しています。
コールセンターのチャットボット導入事例③:クラウド対応ソリューション「Zendesk」(ソニーネットワークコミュニケーションズ)
ソニーネットワークコミュニケーションズが導入した「Zendesk」は、クラウドベースのサポートソリューションです。
効率的なチャットボット機能を組み込み、リアルタイムな顧客サポートとチームコラボレーションを強化します。
コールセンター向けチャットボット導入の注意点
コールセンターにチャットボットを導入することには多くの効果やメリットがありましたが、注意点もあります。
ここでは、コールセンター向けチャットボットを導入する際の注意点を2つご紹介します。
チャットボット導入の注意点①:導入後の運用ルールを定めておくこと
チャットボットの導入後、適切な運用ルールを定めておく必要があります。
例えば、有人対応時間を区切り、それ以外の時間はチャットボットが主体となるように調整するなどが考えられます。
運用ルールを工夫し、継続的な改善を行うことで、チャットボットの効果的な活用とスムーズな業務フローを確保できます。
チャットボット導入の注意点②:継続的な内容のチューニングを行うこと
チャットボットの導入後、継続的な内容のチューニングは不可欠です。
ユーザーからの質問やフィードバックに基づき、回答の精度を向上させるためには、FAQに新しい情報を加えたり、古い情報を削除するなどの対応が必要となります。
ユーザーのニーズやトレンドは絶えず変化していくため、チャットボットの回答も適切にアップデートしなければなりません。
これにより、ユーザーエクスペリエンスが向上し、チャットボットがより効果的に活用されます。
チャットボットを導入してコールセンターの業務の効率化を進めよう!
いかがでしたでしょうか。
当記事では、コールセンターでのチャットボット導入の効果やメリット、コールセンター向けチャットボットの選び方・比較するポイント、実際の導入事例などについて解説しました。
企業によっては、チャットボット導入への向き・不向きがあり、さらにどのような機能を備えたチャットボットが適しているかも異なってきます。
現在のところ、チャットボットはコールセンターにおける複雑な業務にこそ向いていませんが、チャットボットの導入によって定型的な業務の大幅な効率化が可能となるため、導入するか迷っているという方はぜひ導入してみてはいかがでしょうか。