近年、「業務の効率化を図るためにAIシステムを導入したい」「AIシステムの導入を検討している」という会社が増えてきています。しかし、いざAIシステムを導入したいと考えても、
- AIシステム開発を依頼するための費用はどのくらいかかるのか
- AIシステム開発に多額の費用がかかるのはなぜなのか
- AIシステム開発を依頼する際、費用を少しでも安くする方法はないのか
- AIシステム開発を依頼する際、どのような点に注意するべきか
などが分からず、なかなか導入に踏み切れないという方も多いのではないでしょうか。
この記事では、これらの疑問を解消し、会社にとって最適なAIシステムの導入につながる内容を多数解説しています。ぜひ最後までご覧ください。
AIシステム開発にかかる費用の相場は種類によって様々
AIシステムの種類は多く、種類によって開発依頼にかかる費用は変化します。
ここでは、数あるAIシステムの種類のうち、
- AIチャットボット
- AI音声認識システム
- AI需要予測システム
- AI外観検査システム
の4種類を例に費用の相場を解説します。
AIシステムの種類①:AIチャットボット
AIチャットボットは、自然言語処理を駆使してテキストまたは音声でユーザーと対話する人工知能プログラムです。文章生成や音声合成技術と組み合わせ、ロボット制御にも応用され、効果的なコミュニケーションやタスク実行を可能にします。
AIチャットボットの開発費用は、プロジェクトの規模や要件によって変動しますが、一般的な相場としては、50万円から200万円程度が見込まれます。ただし、これはあくまで一般的な目安であり、具体的なプロジェクトによってはそれ以上の費用がかかることもあります。
各要素の組み合わせや機能の複雑さ、特定の技術やプラットフォームの利用などにより価格が変わってきます。プロジェクトの具体的な要件を詳細に検討し、開発者や開発会社との相談を通じて正確な見積もりを取ることが重要です。
AIシステムの種類②:AI音声認識システム
AI音声認識システムは、機械学習や深層学習を利用して、音声データを文字データに変換する技術です。ユーザーの発話を理解し、テキストに変換することで、自動的なコマンド認識やテキストベースの処理が可能になります。
具体的には、文字起こしや議事録の自動生成や自動対応が可能になります。AI音声認識システムの開発費用の相場は100万円からスタートし、プロジェクトの複雑さや要件によってはそれ以上の費用がかかることがあります。
AIシステムの種類③:AI需要予測システム
AI需要予測システムは、機械学習を活用して売上や在庫の需要を予測し、最適化を図ります。過去のデータや外部の要因を考慮し、将来の需要を見通すことで、企業は適切な在庫レベルを維持し、生産・仕入れを最適化できます。
これにより在庫の過不足を防ぎ、生産効率や売上の最大化が可能となります。AI需要予測システムの開発費用は、プロジェクトの規模や複雑さにより変動しますが、おおよそ300万円から600万円程度が見込まれます。
AIシステムの種類④:AI外観検査システム
AI外観検査システムは、製造業において製造品の外観不良を機械学習やコンピュータビジョンを活用して自動的に検知するシステムです。高度な画像処理技術を組み込んだAIアルゴリズムが、製品の外観を詳細に分析し、色、形状、表面の欠陥などを検査します。
これにより、品質管理プロセスが効率的になり、不良品の早期発見と生産品質の向上が実現されます。AI外観検査システムの開発費用は、一般的に1000万円から2000万円程度が見込まれます。
AIシステム開発工程によっても費用の相場は異なる
AI開発依頼をする際には様々な工程があり、その工程によっても費用が異なります。
一般的にAI開発を依頼する場合には、
- ヒアリング
- コンサルティング・要件定義
- AI化の可能性検証
- PoC検証(プロトタイプ作成)
- AIモデル開発
- AIを活用するシステム開発
の工程を辿ることになります。
これらの工程それぞれで予算が異なるため、こちらで詳しくご紹介します。
AI導入の工程①:ヒアリング
AI導入の初期段階では、ヒアリングが行われます。企業の課題や問題点を把握し、これに基づいて戦略が構築されます。
ヒアリングは基本無料で提供され、このプロセスを通じて企業のニーズを把握し、大まかな方向性を確立して、効果的なAI導入の計画を進めていきます。
AI導入の工程②:コンサルティング・要件定義
次の工程はコンサルティングと要件定義です。
コンサルティングでは、企業のニーズとAI導入の可能性を評価します。この段階の費用は40万円から始まります。
次に、開発したいAIシステムを想定した上で、具体的な要件を定義し、データ整備や機能要件を明確にします。要件定義の段階での費用は最大で200万円までです。
これらの工程を通じて、プロジェクトの方向性が確立され、効果的なAI導入の計画が進むことになります。
AI導入の工程③:AI化の可能性検証
AI化の可能性検証とは、ビジネス課題やプロセスに対してAI導入の有益性を検証する工程です。コンサルタントがAIの適用可能性を分析し、AIモデルの作成が技術的に可能かどうかを確認します。
この工程の予算は40〜100万円程度で、教師データのアノテーションも含まれます。教師データの整備により、モデルのトレーニングに適したデータセットが整えられ、AI導入の成功に向けた基盤が構築されます。
AI導入の工程④:PoC検証(プロトタイプ作成)
PoC(Proof of Concept)とは、日本語では「概念実証」と訳される言葉で、サービスや製品に用いる技術やアイデアが実現可能か、得られる効果はどのようなものかを検証することを指します。
AIシステム開発を行う際に、開発の前にあらかじめ実現の可能性や効果を検証することが非常に重要であることから、ここでPoC検証を行います。
この工程では、AIのアプローチが実際のビジネス課題にどれほど適しているかを確認するためのプロトタイプを作成します。通常、この工程には100万円以上の予算が必要です。
PoC検証を通じて、企業は投資対効果を確認し、全体的なプロジェクトの進捗と成功の可能性を把握します。これにより、本格的な導入の前に戦略の修正や最適化が行われ、成功に向けた方針が立てられます。
AI導入の工程⑤:AIモデル開発
AI導入の工程において、AIモデルの開発は重要です。
AIモデルとは、入力したデータに対し、その入力に対する出力(結果)を導くための仕組みを指す言葉です。
AIモデルの開発では、まず、プロジェクトの目標や必要な機能を具体的に定義し、トレーニングに必要なデータを収集します。次に、タスクに応じた適切なアルゴリズムやモデルを選定し、エンジニアが実際のモデルを構築します。
構築されたモデルをトレーニングし、パラメータやハイパーパラメータを調整して性能を向上させます。そして、実際のデータで評価し、性能を検証し、必要に応じて修正や改善が行われます。
評価が終わったら、モデルを本番環境に展開し、実際の業務に適用することとなります。
モデルの稼働後は定期的な保守やパフォーマンスのチューニングが必要となってきます。これには月額80〜200万円前後×人月の費用がかかります。
このAIモデル開発の工程は、3ヶ月から半年かかるの一般的です。
AI導入の工程⑥:AIを活用するシステム開発
AIを活用するシステム開発は、ビジネスプロセスの効率向上や革新的なソリューションの提供に貢献します。エンジニアによる月額60〜200万円前後×人月の投資が必要ですが、これは専門知識やスキルに基づく高度な作業の対価です。
AIを駆使することで、自動化、予測分析、意思決定のサポートなどが可能となり、組織の生産性向上に寄与します。開発プロセスでは、アルゴリズム開発、データ収集・前処理、モデルトレーニング、システム統合などが行われます。
プロジェクトの規模や要件により異なりますが、適切な専門家やリソースの配置が成功の鍵です。 AIを取り入れたシステム開発は、競争力の向上や新たなビジネス機会の創出につながります。
【基本知識】一般的なAIシステム開発の費用の算出方法
AIシステムの開発費用の一般的な算出方法について、次に解説します。
AIシステムの開発費用の内訳は「人件費 + 諸経費」
AIシステムの開発費用は主に「人件費」と「諸経費」に分かれます。人件費はエンジニアやプログラマーの給与に関する費用で、スキルや経験により異なります。
諸経費には設備費やライセンス料が含まれ、開発環境や必要なツールの取得に使われます。これらの要素を加味し、プロジェクトの規模や要件に応じて適切な予算を計上することが重要です。
人件費の算出方法は「人月 × 人月単価 × 開発期間」
人件費は「人月 × 人月単価 × 開発期間」で算出します。1人月は1人が1ヶ月間働く作業量で、人月単価はその単価を表します。開発期間はプロジェクトの所要時間で、専門性やスキルの高さ、実績に基づいて人月単価が設定されます。
プロジェクトメンバーのスキルや実績が高いほど、人月単価は通常高くなります。
諸経費:データの収集と加工(アノテーション)
諸経費には、データの収集と加工に関連する費用も含まれます。特に機械学習プロジェクトでは、教師データ(学習用データ)のアノテーションに多くのコストがかかります。
アノテーションは、データに対してラベルや注釈を付け、モデルのトレーニングに使用可能な状態に整える作業です。アノテーションにはラベリングツールの利用料などがかかります。
また、高品質な教師データの作成は機械学習モデルの性能に直結します。
諸経費:開発するシステムの種類(ハードウェア・ソフトウェア)
諸経費には、開発するシステムの種類に関連する様々な費用が含まれます。ハードウェアの調達やソフトウェアのライセンス、開発環境の整備などの費用が挙げられます。
また、開発段階でのバグ修正、サーバートラブルへの対応、データのバックアップといった保守的な対策も諸経費に含まれます。これらの費用を適切に予算化し、プロジェクトの円滑な進行や品質の確保に役立てることが重要です。
AI開発の予算は高くなりがち!AI導入コストを決める要素とは
AI開発の予算は、一般的には高額になります。AI導入コストを決める要素について、次に解説します。
AI導入コストを決める要素①:AI開発期間やかかる工数
AI導入コストを決める要素には、AI開発期間と開発工数があります。AI開発期間は、プロジェクトを完成させるためにかかる時間を指し、通常は日数や月数で表されます。
開発工数はプロジェクトに投入される総作業量であり、開発者やエンジニアがプロジェクトに費やす総労働時間や人月として計測されます。人月単価はエンジニアの専門性やスキルの高さ、実績に基づいて設定されます。
プロジェクトの規模や複雑性が高いほど、開発に必要な期間と工数が増加し、AI導入コストが高くなります。
AI導入コストを決める要素②:開発するAIの種類や機能
AI導入コストを決定する要素には、開発するAIの種類や機能が大きく影響します。新しい機能やフルスクラッチでの開発は高い費用がかかりますが、特定の要件に合わせてカスタマイズされたシステムを構築できます。
一方、既存のモデルやプリトレーニッドモデルの利用は開発コストを抑えることができます。
AI導入コストを決める要素③:担当エンジニアのスキル感や人数
AI導入コストを決める要素には、担当エンジニアのスキルや人数があります。エンジニアのスキルレベルが高いほど高度な実装が可能ですが、その分コストも上昇します。
また、プロジェクトの規模や複雑性に応じて適切なエンジニアの人数を確保することが重要です。これらの要素をバランスよく考慮し、プロジェクトの成功に向けた適切なリソース配置がコストの効率的な決定に寄与します。
費用対効果を高めたい!AI導入にかかるコストを削減する方法4選
AI導入の費用対効果を高めるために、AI導入にかかるコストを削減する方法について解説します。
コスト削減方法①:補助金が使えないか確認する
AI導入のコストを削減する方法にはいくつかありますが、まず、補助金が利用可能か確認することが重要です。中小企業庁や総務省が提供する補助金などがあるので、これらを活用することで導入コストの一部を賄える可能性があります。
例えば、中小企業庁のものづくり補助金では新製品の開発や生産性向上のためのプロジェクトが支援され、AI技術の導入にも応用できます。また、総務省の地域デジタル基盤活用推進事業は、地方公共団体等によるデジタル技術を活用した地域課題解決の取組を総合的に支援します。
これらの補助金を活用することで、企業や自治体はAI導入の初期コストを削減し、技術の導入を促進することができます。
コスト削減方法②:AI導入の目的や欲しい機能を整理しておく
コスト削減のためには、AI導入前に目的と欲しい機能を整理することが重要です。具体的なAI導入目的を明確にし、必要な機能や範囲を絞り込めば、開発コストを最適化できます。
明確な目的があれば、不要な機能の追加や開発範囲の拡大を防ぎ、必要最低限の機能で効果的な導入を実現できます。
コスト削減方法③:スモールスタートで開発を進める
コスト削減のための方法として、スモールスタートとアジャイル開発手法の活用があります。スモールスタートは、最小限の機能から始め、段階的に機能を追加していくことで初期の開発コストを抑える方法です。
アジャイル開発は、継続的な改善と顧客のフィードバックを取り入れながら進めるため、柔軟性があり、適応力があります。これらの方法により、変更に柔軟に対応し、無駄な開発を避けることができ、効果的なコスト管理が可能です。
コスト削減方法④:SaaSプロダクトを活用してみる
コスト削減の有力な手段として、SaaS(Software as a Service)プロダクトを活用することが挙げられます。SaaSプロダクトは、クラウド上で提供され、ユーザーはインターネットを通じてソフトウェアやアプリケーションにアクセスし、サブスクリプションベースで利用するサービス形態です。
ハードウェアやインフラの心配が不要で、導入コストが安く、企業は必要なサービスや機能を柔軟に選択し、スケーラビリティやセキュリティの管理も提供元に委ねることができます。これにより、迅速かつ効率的な導入が可能で、継続的な利用においても適切なコスト管理が実現できます。
AI開発を依頼する上で失敗しないための注意点
AI開発を依頼する上で失敗しないための注意点がいくつかありますので、以下で解説します。
注意点①:システム開発会社の実績や強みを確認
システム開発会社の選定にあたっては、エンジニアのスキルレベルや実績を確認し、希望する要件ジャンルでの開発実績を重視することが大事です。会社のポートフォリオや過去のプロジェクト実績を調査し、同様の要件に対処できる経験があるかどうかを確認することで、信頼性や満足度を向上させることができます。
注意点②:予算を明確にしておくこと
AI開発を依頼する際には、予算を明確に設定することが重要です。具体的な開発要件や機能、期待される成果物を明確にし、それに基づいてコストの見積もりを取得することで、途中での予算超過や誤差を最小限に抑えることができます。
透明性を持った予算設定は、プロジェクトの成功に向けた信頼性を高めます。
注意点③:開発会社に丸投げしない
AI開発を依頼する際には、開発会社に丸投げするのではなく、積極的なコミュニケーションをとることが重要です。進捗状況を定期的に確認し、予算やスケジュールの逸脱がないかを把握することで、開発費用の余分な発生を防ぎます。
双方向のコミュニケーションはプロジェクトの透明性を高め、期待する成果物を効果的に実現する手助けとなります。
注意点④:複数のAI開発会社から相見積もりをとる
AI開発を依頼する際には、複数のAI開発会社から相見積もりを取り、比較検討することが重要です。競争的な見積もりと綿密な選定プロセスは、コストを最適化し、期待通りの成果を得る上で有益です。
AI導入の目的を明らかにし、最適なAI受託開発会社に依頼しよう
いかがでしたでしょうか。
この記事では、
- AIシステム開発を依頼するための費用の相場
- AIシステム開発に多額の費用がかかる理由
- AIシステム開発依頼のコストを削減する方法
- AIシステム開発依頼における注意点
について解説しました。
AIシステムを導入する際には、目的を明確にし、複数の会社の提案や実績を評価して最適な開発会社やツールを選定するようにしましょう。
この記事が最適なAIシステムの導入のお役に立てば幸いです。