AI・機械学習業界でよく聞く「教師データ」と言う言葉。
意味を理解していない方も多いかもしれません。
この記事では、AI・機械学習業界における「教師データ」の意味についてわかりやすく解説します。
そもそも教師データとは
教師データとは、AIや機械学習のモデルを学習させるために使われるデータのことを指します。
このデータは、モデルが予測や判断を行うための「正解」や基準となります。
例えば、画像認識AIを訓練する際、教師データはラベル付きの画像(犬や猫などの写真とその正しいラベル)となります。
教師データはAIの学習において極めて重要な役割を果たします。
教師データと学習データ、訓練データ、検証データの違い
教師データ、学習データ、訓練データ(トレーニングデータ)はすべて機械学習において用いられますが、役割や使い方に違いがあります。
教師データはAIの学習のための「正解」データを提供します。
一方、学習データはAIが学習を行う際に使用するデータセット全体を指し、教師データも含まれます。
訓練データはその学習データの中でも特に、AIのモデルを訓練するために使用されるデータを指します。
そして、検証データはAIをチューニングして、最適な挙動を行うために使用するデータのことです。
ちなみに、近い言葉であるテストデータは、学習が完了したAIモデルの性能を評価するために使われます。
参考:機械学習における3パターン
機械学習は大きく「教師あり学習」、「教師なし学習」、「強化学習」の3パターンに分けられます。詳しくは、下記の記事にわかりやすくまとめてあります。
教師あり学習は教師データを使用してモデルを学習し、出力と目標値の間の差を小さくするように調整します。
教師なし学習は教師データがなく、データの構造やパターンを見つけ出すことに重点を置きます。
強化学習は、行動の結果による報酬を通じて学習を進めます。
機械学習の教師データに必要なデータ量
教師データの必要なデータ量は問題やモデルによりますが、一般的には多いほどよいとされています。
ただし、データの質も重要で、データが不適切だったり偏っていたりすると、AIの性能に悪影響を及ぼします。
大量のデータを集めることは一方でコストがかかるため、問題の性質に応じて適切なデータ量を見極める必要があります。
機械学習の教師データの作り方
機械学習に用いる教師データを作る方法は、以下の3ステップです。
- 課題を明確に定める
- 教師データになりうる元データを集める
- 教師データにアノテーションをしていく
それぞれのステップごとに解説していきます。
①課題を明確に定める
まず始めに、何を解決したいのか、どのような問題をAIに解かせたいのかを明確に定義します。
これは教師データの作成方向性を決定するために必要です。
問題の定義が明確でないと、どのようなデータを集め、どのようにアノテーションすべきかが不明確になり、効率的な学習が進められません。
②教師データになりうる元データを集める
次に、AIが学習を進めるための元データを集めます。これは問題の定義やAIの種類(画像認識、テキスト分析など)によります。
例えば、画像認識AIの場合、画像データが必要になります。この際、多様性と量のバランスを考慮することが重要です。
③教師データにアノテーションをしていく
集めたデータに対してアノテーション(ラベル付け)を行います。
アノテーションは、AIに何を「正解」とするかを教えるための作業です。この作業は手作業で行うこともあり、時間とコストがかかります。
アノテーションについては以下の記事で詳しく説明しています。
教師データを作成するときに重要なこと
教師データを作成する際、注意しなければならないのは以下の3つです。
- 過学習しないようにする
- セキュリティ対策
- データセットの偏りを防ぐ
それぞれ見ていきましょう。
①過学習しないようにする
過学習とは、AIが学習データに過度に適合してしまい、新しいデータに対する予測性能が低下してしまう現象を指します。
過学習を防ぐためには、学習データの適切な分割や正則化(正規化)といったテクニックが用いられます。
過学習については以下の記事で詳しく説明しています。
②個人情報等へのセキュリティ対策
教師データに個人情報が含まれる場合、それらを適切に管理し、保護することが非常に重要です。
データ保護の規定を遵守し、必要に応じて匿名化や偽名化などの対策を施します。
③データセットが偏らないようにする
教師データが一部の特性に偏っていると、AIはその偏りを学習してしまい、全体を代表する予測ができなくなる可能性があります。
したがって、データの収集段階で多様性を確保することが重要です。
教師データの著作権はどうなるのか
教師データの著作権は、そのデータの作成者または提供者が通常保有します。
ただし日本では、著作権法第三十条の四で著作者の許可をとることなく著作物を利用し、AIを学習させることが認められています。
著作物は、次に掲げる場合その他の当該著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させることを目的としない場合には、その必要と認められる限度において、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。
著作権法
学習させた後商用利用して良いか、に関してはグレーゾーンであり現在法整備が進められていますが、教師データとして利用する分には全く問題ありません。
まとめ
この記事をまとめると、
- 教師データはAIや機械学習のモデルを学習させるために使われ、モデルが予測や判断を行う基準となる。
- 教師データ、学習データ、訓練データはそれぞれ異なる役割と使い方がある。
- 教師データの必要なデータ量は問題やモデルに依存し、質も重要。
- 教師データの作成には課題の明確化、元データの収集、アノテーションの3ステップがある。
- 教師データ作成時には過学習の防止、セキュリティ対策、データセットの偏りの防止が必要。
- 日本の著作権法では、著作者の許可なくAIの学習に著作物を利用することが認められている。
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