近年、業務効率化のための技術としてRPAが注目されています。
しかし、RPAを導入する際には、どの業務に適しているのか、どの業務には向いていないのかを正確に理解することが重要です。
本記事では、RPAに向いている業務と向いていない業務について具体的に解説します。
RPAとは
RPAは「Robotic Process Automation」の略で、繰り返しの業務を自動化する技術を指します。これにより、人間が行っていた繰り返しの単純作業をソフトウェアロボットが代わりに実行することで、業務の効率化やミスの削減を実現します。
RPAは、特定のタスクを自動化するためのスクリプトやツールを使用することなく、既存のITシステムと連携して動作します。そのため、システムの大規模な変更や導入コストを抑えつつ、迅速に業務の自動化を進めることが可能です。
特に、データの入力や転送、レポートの生成などの定型的な業務において、RPAの効果を最大限に発揮することができます。
RPAに向いている業務とは
RPAに向いている業務は、繰り返しの手続きが多いものや、ルールベースのものが挙げられます。
これらの業務は、人間が行うには時間がかかり、ミスのリスクも高いため、RPAの導入により効率化が期待できます。
また、RPAを導入することで、業務の品質も向上する可能性があります。
ここでは、RPAで自動化するのに向いている業務を4つ見ていきましょう。
型が決まっている作業全般
RPAは、業務フローやルールが決まっている定型作業を自動化するのに適しています。例として、「基幹システムから指定したデータをダウンロードし、特定のフォーマットに記入する」などの作業が挙げられます。
人間がこのような作業を行うとヒューマンエラーやミスが発生する可能性がありますが、RPAを使用するとエラーやミスを防ぐことができます。
複数のアプリケーションをまたぐ作業
複数のアプリケーション間での作業もRPAに適しています。
例えば、「メールで送られてきた商品情報が記載されているファイルの内容を、システムの商品登録マスターテーブルにコピーする」などの作業が該当します。
大量のデータ処理・分析
RPAは大量のデータ処理や分析を得意としています。
人の手では時間と手間がかかるような大量のデータ処理も、RPAを使用すると迅速に処理することができます。
データのスクレイピング
Webサイトからのデータ収集やスクレイピングもRPAの得意分野です。
例として、ニュースサイトの情報収集や競合商品の価格データの収集などが挙げられます。
RPAに向いていない業務とは
RPAに向いていない業務とは、判断力や創造力が求められるもの、変動が多いものなどが考えられます。
例えば、企画立案や戦略策定、顧客対応などの業務はRPAには向いていません。
これらの業務は、人間の経験や知識、感覚を必要とするため、RPAでの自動化は難しいとされています。
ここでは、RPAでの自動化に向いていない業務を5つ簡単にまとめています。
人の判断が必要な業務
RPAは都度の判断が必要な業務を行うことができません。
例えば、OCRで電子化したデータの正確性の判断や修正など、人の感覚や判断が必要な業務はRPAには向いていません。
ルールが頻繁に変わる業務
RPAは定型的な業務を自動化するため、ルールや仕様が頻繁に変わる業務は適していません。
変更があるたびにRPAの修正が必要となり、作業効率を下げる可能性があります。
例外が多い業務
RPAは例外が発生すると止まってしまうため、例外が多い業務は適していません。
すべての例外をRPAに組み込むことは困難です。
RPA化した場合に複雑度の高い業務
多くのシステムをまたいで動作する業務や、扱う画面数や入力する項目数が多い業務は、RPAの障害ポイントが多くなり、障害が発生する可能性が高まります。
変更頻度が高いシステムを扱う業務
RPAは画面のオブジェクトを特定するため、画面の内容が変わるとRPAがそのオブジェクトを判断できずに止まる可能性があります。
頻繁に変更があるシステムに対するRPAの適用は注意が必要です。
RPAで自動化する業務の選定方法
RPAを導入する際には、どの業務を自動化するかが重要なポイントとなります。
ここでは、RPA化する業務の選び方について詳しく解説します。
ステップ①:現在の業務の洗い出し
まずは、日常的に行っている業務を洗い出し、普段からどういった業務を行っているのかを明確にします。
この際、定型的なデータ抽出や決まりきったメールの返信など、RPAが得意とする単純かつ定型的な処理を特に意識して収集することが重要です。
ステップ②:自動化できそうな業務の選定
現行業務の洗い出しを行った後、その中から自動化が可能そうな業務を選定します。RPAはパソコン上で動作するため、パソコンを使用する業務であることが前提となります。
また、業務手順が明確に決まっている場合、RPA化が容易です。業務に関するマニュアルが存在するかどうかを確認することで、RPA化の適性を判断することができます。
ステップ③:自動化する業務の決定
自動化が可能そうな業務を選定した後、最終的にRPAの導入を検討する業務を決定します。
特に、単純かつ簡単な処理を繰り返す業務や大量のデータ処理を行う業務は、RPAの導入効果が高いとされています。これは、人が行う場合、同じ作業の繰り返しによる疲れやミスが発生しやすいためです。
RPAは疲れることなく、一貫して高速で正確な処理を行うことができるので、これらの業務には大きな効果を発揮します。
RPAを活用している身近な例
RPAは多くの業務を自動化することができ、特に定型的な業務の効率化に優れています。以下は、RPAを活用している身近な業務の例です。
請求書等の発行
請求書や発注書、見積書など、毎月定期的に発行する必要がある帳票はRPAでの自動化が適しています。
データをExcelやデータベースに集計し、それを基に帳票を発行し、さらにその帳票をメールやチャットで送付するプロセスを自動化することが可能です。
お問い合わせ対応
RPAは24時間365日稼働するため、顧客からの問い合わせに対して迅速に対応することができます。
特定の問い合わせパターンに対しては自動応答を行い、それ以外の問い合わせは担当者にエスカレーションするというハイブリッドな運用が可能です。
在庫管理
在庫管理はRPAによる自動化が非常に効果的です。
在庫数や出荷予定数を定期的にチェックし、その情報を担当者に通知することで、適切なタイミングでの発注や補充が可能となります。
日次・週次・月次レポート作成
定期的に発行するレポートの作成もRPAの得意分野です。
データの収集からレポートのフォーマット作成、さらにはグラフの生成までを自動化することで、効率的なレポート作成が実現します。
まとめ
RPAは、定型的な業務を効率的に自動化するための技術として、多くの企業や組織で導入が進められています。本記事では、RPAを活用している身近な業務の例として、請求書の発行、問い合わせ対応、在庫管理、そして定期的なレポート作成を挙げました。
RPAの導入により、これらの業務を高速かつ正確に行うことが可能となり、企業の業務効率化やコスト削減に大きく貢献します。今後もRPAの技術は進化を続け、さらに多くの業務での活用が期待されています。