石油業界でのAI活用事例5選!なぜ石油業界でAIが活用されるのか? | romptn Magazine

石油業界でのAI活用事例5選!なぜ石油業界でAIが活用されるのか?

AI×業界

近年活躍の幅を広げるAIですが、石油業界でも広く活用されています。

しかし、なぜ、そしてどのように石油業界でAIが活用されているかを知らないという方は多いかと思います。

そこで、当記事では石油業界での活用事例やCOVID-19による新型コロナウイルス感染症のパンデミック前後でのAI活用に対する取り組みについて解説しています。

ぜひ最後までご覧ください。

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従来から電力需要予測などで積極的にAI活用が進められていた

従来から電力需要予測などで積極的にAI活用が進められていた

新型コロナウイルスの流行以前から、エネルギー業界、特に電力部門では、AIを活用しようとする動きが見られました。この傾向は、電力自由化や再生可能エネルギーの開発が進展する中で特に顕著でした。

電力自由化の進行に伴い、電力市場はより競争的かつ動的なものとなってきました。このような環境下では、電力の供給と需要を効率的に管理することが極めて重要です。AIの予測分析機能は、これを可能にする鍵となり、電力需要の正確な予測や供給計画を最適化するものとして注目されました。

再生可能エネルギーの分野においても、AIは重要な役割を果たすと考えられました。太陽光や風力といった再生可能エネルギー源は、その性質上、発電量が不安定で予測しにくい面があります。AIによる高度なデータ分析と予測は、このような変動を考慮に入れた電力の安定供給をサポートするのです。

国内外の多くの企業は、エネルギー事業におけるAIの活用に着目し、その導入を進めていました。AI技術の導入は、エネルギー業界における効率性、持続可能性、そして信頼性の向上に大きく貢献することが期待されました。

参考:
国際エネルギー機関(IEA)が提供する分析 「AI and energy: the new power couple」
世界経済フォーラムの記事 「How AI will accelerate the energy transition」

石油業界でAIを活用するメリット

AIをエネルギー事業に活用する大きなメリットは、電力需要予測の効率化が挙げられます。

AIが電力データの詳細な分析を可能にし、それに基づいて運用パターンや発電効率が改善され、エネルギー資源のより効果的かつ持続可能な使用が期待されます。

具体的には、発電所の運用がより効率的になることで余剰電力の発生を減少させ、太陽光や風力などの再生可能エネルギー源の効率的な統合を促します。

つまり、電力需要予測が効率化されることで、発電量の最適化や電力コストの削減が可能となり、これにより消費者に対する電力価格の値下げも実現可能となるのです。

このようなメリットにより、AIはエネルギー事業において重要な役割を担い、持続可能な社会の実現に寄与していくのです。

石油業界各社でのAIを活用した取り組み

石油業界各社でのAIを活用した取り組み

ここでは、石油業界でのAIを活用した取り組みを3つご紹介します。

関西電力の取り組み

関西電力が提供する「SenaSon」というサービスは、AI(人工知能)を活用して分散型エネルギーリソースを効率的に制御することにより、省エネルギーとコスト削減を実現しています。

具体的には、建物内の電力需要や太陽光発電量を精密に予測し、それに応じて蓄電池の放電や空調設備などの稼働をリアルタイムで調整します。

このようなAIによる細やかな制御は、エネルギーの使用効率を高め、結果としてCO2排出量の削減にも寄与します。また、エネルギーコストを削減することで、顧客にとっても経済的な利益をもたらすことが期待されています。

丸紅の取り組み

丸紅が所有する英国の電力販売会社、スマートエナジーは、IoT(Internet of Things:モノのインターネット)やAI(人工知能)といった先進技術を利用して、太陽光発電やその他の再生可能エネルギー源からの電力を効率的に買い取り、さらには販売も行っています。

AIの導入によって、電力の需要が高い顧客に最適なタイミングで電力を供給し、利益を最大化することが可能になっています。

この取り組みの背景には、再生可能エネルギーに対する国際的な関心の高まりがあります。丸紅とスマートエナジーは、こうした環境変化を捉え、先進技術を用いて新しいエネルギーマーケットを形成しているのです。

清水建設の取り組み

清水建設は、中部大学との協力のもと、開発した電力需要予測システムは、最新の人工知能(AI)技術を駆使して、気象予測データや施設の利用予定データなどを分析し、翌日のピーク時の電力需要を高精度で予測することを可能にしました。

電力会社はこのシステムを利用して、過剰な電力供給や不足を避け、電力生成のコストを最適化することができ、消費者にとっても電力料金の削減が期待できます。

また、電力の過剰な供給や不足が原因で発生するエネルギーの無駄使いを減らすことで、省エネにも貢献しています。

COVID-19によってAI化・デジタル化の流れが加速

新型コロナウイルスのパンデミックは、石油業界におけるデジタル化とAIの導入を大きく加速させました。

パンデミックによりグローバルエネルギー需要は2020年に4%減少し、第二次世界大戦以来の最大の低下となりました。特に石油は、移動制限により交通用燃料の需要が2019年のレベルから14%減少しました。

これにより石油業界は、業務の縮小や一時的な停止が必要となり、需要の変動や再生可能エネルギーへの長期的なシフトへの対応が求めらました。

このような流れの中で、業務の効率化やコスト削減を実現し、事業の持続可能性を高める役割を果たすことがAIに期待され、さらに注目を集めました。

また、リモートワークやデジタル技術の普及により、物理的な制約を超えた作業が可能となるなど企業の運営方法にも変革が生じ、データ駆動型の意思決定やリスク管理の向上が、AIの導入によって実現されています。

このように新型コロナウイルスは石油業界におけるAI化とデジタル化の波を加速させ、新しい働き方やビジネスモデルの創出を促しています。

石油業界でのAI活用事例

ここでは、近年の石油業界での実際のAIの活用事例を5つご紹介します。

石油業界でのAI活用事例①:石油化学プラントの自動運転(ENEOS/Preferred Networks)

引用:日経クロステック

ENEOSとPreferred Networksによる共同開発による石油化学プラントは、AI技術を活用した自動運転を導入しています。

この取り組みは、プラントの日常運用をAIによって自動化することで、効率の向上と作業の安全性の確保を図っています。

AIは、石油化学プラントの複雑なプロセスを監視し、最適な運転条件を維持するための決定を行います。これにより、人間のオペレーターの負担が減少し、プラントの稼働率が向上する一方で、エネルギー消費の削減や環境への影響の軽減にも寄与しています。

ENEOSが石油化学プラントの運転をAIで一部自動化、PFNと共同で燃料コスト削減
 ENEOSはPreferred Networks(プリファードネットワークス、PFN)と共同で開発したAI(人工知能)システムを「ブタジエン抽出装置」に適用させ、手動操作よりも経済的で効率の高い運転ができるようになったと発表した。モデルの構築の肝は、過去数年分のセンサーデータと運転員の知見の組み合わせだ。

石油業界でのAI活用事例②:工場の高稼働・高効率操業の実現(コスモ石油/丸善石油化学/Cognite)

引用:COSMO

コスモ石油、丸善石油化学、そしてCogniteの協力により、石油化学工場の運用にAI技術が導入されています。

これらの企業は、AIを利用して工場の稼働率を高め、生産効率を向上させることに成功しました。AI技術を活用により、工場機器の故障予測や最適なメンテナンス計画の策定が可能となり、稼働中断のリスクを大幅に軽減することができました。

さらに、AIによるリアルタイムのデータ分析によって、生産プロセスの最適化が行われ、エネルギー使用の効率化や原材料の最適利用が実現されています。

コスモ石油、丸善石油化学、製油所/工場の高稼働・高効率操業を実現するために「Cognite Data Fusion®️」を採用
コスモ石油株式会社(代表取締役社長:鈴⽊ 康公、以下「コスモ石油」)および丸善石油化学株式会社(代表取締役社長:馬場 稔温、以下「丸善石油化学」)とCognite株式会社(代表取締役社長:江川 亮一、以下「Cognite」)は、石油事業、石油化学事業における収益力と競争力確保のため、データプラットフォーム基盤として「C...

石油業界でのAI活用事例③:石油化学プラント修理の効率化(三菱ケミカル)

引用:日本経済新聞

三菱ケミカルでは、AI技術を活用したプラント管理プロジェクトを展開しています。

このプロジェクトの主な目的は、プラントのメンテナンス効率を大幅に向上させることです。AIを用いることで、メンテナンス作業の計画立案や実施の効率化が可能となり、従来の手法に比べて時間とコストを節約できます。

また、AIのデータ分析能力を活用することで、プラントの故障予測やリスク管理も向上し、予期せぬダウンタイムを減らし、全体的な生産性を高めることが可能になります。

三菱ケミカル、プラント修理のムダ省く 作業動員2割減 - 日本経済新聞
三菱ケミカルグループは石油化学プラントの定期修理の必要性や作業状況をデータで可視化し、計画から働き方までムダを省く。検査や24時間操業のデータを分析し、機器の劣化を予測する。無線自動識別(RFID)タグやビーコン(電波受発信器)も駆使して、延べ10万人超の動員数を従来より2割減らした。2024年春には作業員への残業上限...

石油業界でのAI活用事例④:プラント腐食配管の外観検査システム(三菱ガス/ABEJA)

引用:三菱ガス化学

三菱ガスとABEJAによる共同開発のこのプロジェクトは、AI技術を活用して石油化学プラント内の腐食配管の検査を自動化しています。

この取り組みは、従来の手作業に頼っていた検査プロセスを大幅に効率化し、安全性の向上に貢献しています。AIによる自動化は、検査の時間を短縮し、人的リソースの削減によってコストを抑えることが可能になります。

さらに、AI技術の導入により、配管の腐食状況をより精密に分析できるため、プラントの安全管理が向上し、予期せぬ事故や停止のリスクを減らすことができます。

Human in the Loop Machine Learningにより プラント腐食配管の外観検査システムを構築 | 当社について | 三菱ガス化学株式会社
三菱ガス化学のニュースリリースをご覧いただけます。

石油業界でのAI活用事例⑤:セルフ式ガソリンスタンドでの自動給油許可システム(ELEMENTS/コスモ石油/タツノ)

ELEMENTS、コスモ石油、タツノの三社の協力により、AI技術を活用した自動給油システムがガソリンスタンドで実現しました。

このシステムは、AI技術を用いて車両の認識と給油プロセスを自動化することで、効率性と顧客の利便性を大幅に向上させています。車両がガソリンスタンドに到着すると、AIが車種を認識し、適切な燃料を自動で供給します。

これにより、ドライバーは給油プロセスを簡素化し、待ち時間を短縮するとともに、ガソリンスタンドの運営効率の向上にも寄与し、経済的な利益も期待されています。

引用:ELEMENTS
セルフ式ガソリンスタンドでAIが給油許可や監視を行う実証実験を実施 - 株式会社ELEMENTS(エレメンツ)
株式会社ELEMENTSは、この度、コスモ石油マーケティング株式会社および株式会社タツノと、セルフ式ガソリンスタンドにおける人手不足解消に向けたAI自動給油許可監視システム(以下「本システム」)の実証実験を実施しました。

まとめ

いかがでしたでしょうか。

従来からの電力需要予測の効率化に始まり、新型コロナウイルスの影響によるデジタル化の加速、そして現在のAI活用事例に至るまで、AIは石油業界の多様な側面で重要な役割を果たしているといえます。

効率化、コスト削減、安全性の向上など、石油業界の未来を大きく変える可能性のあるAIの活躍からますます目が離せません。