AIや機械学習によって注目される「データセンター」とは?
データセンターとは、大量のコンピューターシステムや関連機器を収容し、データの保存、処理、配信を行う場所であり、インターネットや様々なデジタルサービスを支える重要な施設です。
AI(人工知能)や機械学習の進展に伴い、膨大なデータを効率的に扱うために、データセンターの役割はますます重要になっています。
特に、分散型AIデータセンターやAIサーバーなど、最新技術を取り入れた施設が注目されており、これらのデータセンターは、AIの複雑な計算やデータ分析を高速で行うことができ、企業の競争力を高める上で必要不可欠です。
ChatGPTを開発したOpenAIのような先進的なAI開発企業も、その研究開発の基盤としてデータセンターを利用しています。
AIやDX推進の流れによりデータセンターの需要が拡大している
データセンターの需要が増加している背景には、AI(人工知能)の進展とDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進があります。データセンターは、大量のデータを保存し、処理するための施設で、インターネットや多くのデジタルサービスの基盤となっています。
AIの進化に伴い、大規模なデータ分析や機械学習のプロセスが重要になっています。これらのプロセスは膨大な計算能力を要求するため、強力なコンピューター設備を備えたデータセンターが必要不可欠です。
例えば、OpenAIやソフトバンクが運営するAIデータセンターでは、高度なAIアルゴリズムをサポートするための専用サーバーが用いられています。
また、DXの流れにより、企業は従来のアナログプロセスからデジタル化へと移行しています。これにより、データの保管と処理の需要が高まり、データセンターの重要性が増しています。
特に、分散型AIデータセンターは、データの分析と処理を地理的に分散させることで、効率化とリスク分散を実現しています。
さらに、さくらインターネットなどの企業が提供するAI対応データセンターは、企業のデジタル化を支える基盤となっており、その需要は今後も増え続けることが予想されます。
このように、AIの発展とDXの推進は、データセンターの役割を拡大させ、その需要を加速しています。
企業が選択可能なデータセンターの形態
データセンターは、デジタル時代における企業活動の心臓部とも言える存在です。
データセンターには、大切なデータの保管や処理を行うためのさまざまな形態があり、それぞれに独自の特徴があります。
ここでは、特に企業が選択可能な主要な形態である「ハウジング」、「ホスティング」、「クラウド」について、その概要とメリット・デメリットを簡単に解説します。
ハウジング
ハウジングは、企業が自身のサーバー機器をデータセンターに設置し、そのスペースを借りる形態です。この方式では、物理的なサーバーの管理やメンテナンスは企業側が行います。
- メリット
- 自社でコントロールできるため、セキュリティやカスタマイズ性が高い。
- 特定のアプリケーションやシステム要件に合わせた設定が可能。
- デメリット
- 初期投資が大きく、運用や管理に専門知識が必要。
- 物理的なスペースの制限や拡張の柔軟性に欠ける場合がある。
ホスティング
ホスティングでは、サーバー機器をデータセンターが提供し、企業はそのサーバーを利用します。設備の管理やメンテナンスはデータセンターが行います。
- メリット
- 初期投資が少なく、運用や管理の手間が軽減される。
- 高度なインフラが利用可能で、スケーラビリティ(拡張性)に優れる。
- デメリット
- カスタマイズの自由度がハウジングに比べて制限される。
- サービスプロバイダー依存度が高くなる。
クラウド
クラウドは、インターネットを通じてサーバーのリソースを提供するサービスです。物理的なサーバーの存在を意識せず、必要に応じてリソースを利用できます。
- メリット
- 使用した分だけの料金で済み、柔軟なコスト管理が可能。
- リモートアクセスが容易で、全世界どこからでも利用できる。
- デメリット
- インターネット接続に依存し、接続が不安定な場合にはアクセスに影響が出る。
- データのプライバシーやセキュリティに関する懸念がある。
AIの活用のために高性能サーバーを利用する際の課題・注意点は2つ
現代のビジネスにおいて、AI(人工知能)の活用はもはや必須の要素となっています。AIデータセンターなどで利用される高性能サーバーは、その強力な計算能力によりAIの様々な処理を支えています。
しかし、この高性能サーバーを利用する際の課題と注意点が2つあります。ここではその2つの課題と注意点についてご紹介します。
ラックを複数必要とする点
高性能サーバーを利用する際の課題・注意点の1つ目は「ラックを複数必要とする点」です。
高性能サーバーは、その性能の高さから通常のサーバーよりも多くのラックスペースを必要とし、これがデータセンター内のスペースの制約に直面することがあります。
また、十分なラックスペースを確保するためには、それに伴う設備投資コストが増加するという問題もあります。
これらの点を考慮し、事前に必要なラック数を正確に見積もり、スペースを有効に活用できるデータセンターの選択が重要になります。
特に、分散型AIデータセンターなど、新しい形態のデータセンターを検討することも一つの解決策となり得ます。
消費電力が大きい点
高性能サーバーを利用する際の課題・注意点の2つ目は「消費電力が大きい点」です。
これらのサーバーは、AIなどの複雑な計算処理を高速に行うために、多くの電力を必要とします。特に、AIデータセンターでの電力消費はデータセンター全体の運用コストに大きな影響を与える要因です。
電力消費の増加はコストの上昇をもたらすだけでなく、環境への影響も大きく、エコフレンドリーな運用がますます求められています。
このため、電力消費を抑えるための最新技術への投資や、エネルギー効率の良いサーバーの導入、再生可能エネルギーを利用するデータセンターの選択などが重要な注意点となります。
これらの措置により、高性能サーバーの利用に伴う運用コストの削減と環境負荷の軽減を図ることが可能です。
AIの活用によるデータセンターの動向・事例2選
AI技術の進歩は、多くの産業に革新をもたらしています。データセンターの分野でも、この技術の影響は明らかです。
ここでは、AIデータセンターにおける先進的な取り組みを行っている「さくらインターネット」「ソフトバンク」の2社の動向や事例を取り上げ、彼らがどのようにAIを活用しているか、これからどう進んでいくのかをまとめたものをご紹介します。
AIデータセンターの動向・事例①:さくらインターネット
- 現在予定している動き
さくらインターネットは2024年1月以降、大規模言語モデルなどの生成AI向けクラウドサービスの提供を開始する計画です。
経済産業省の支援を受け、130億円規模の投資を行い、NVIDIAの「NVIDIA H100 Tensor コア GPU」を2000基以上採用した合計2EFLOPSの大規模クラウドインフラを整備します。
この取り組みは、経済安全保障推進法に基づく特定重要物資「クラウドプログラム」の供給確保計画に基づいています。
提供は北海道石狩市にある石狩データセンターで行われ、水力発電を中心とした再生可能エネルギー電源100%のCO2排出量ゼロを目指します。
- 将来的な目標
代表取締役社長の田中邦裕氏は、AIの発展を加速させるためには、AI関連のコンピューティングリソースの抜本的な強化が必要であり、そのための大規模クラウドインフラの整備が重要と捉えています。
これにより、日本がAI分野での発展を加速できるよう、環境面にも配慮したサステナブルなデータセンターの構築を目指しています。
AIデータセンターの動向・事例②:ソフトバンク
- 現在予定している動き
ソフトバンクはNVIDIAと協業し、生成AIと5G/6Gに向けた次世代プラットフォームを構築します。このプラットフォームは、日本各地に新しく構築される分散型AIデータセンターに導入される予定です。
ArmベースのNVIDIA GH200 Grace Hopper Superchipを核とし、エネルギー効率の高いマルチテナントな共通サーバープラットフォームを用いて生成AIとワイヤレス通信向けのアプリケーションを提供することを目指しています。
- 将来的な目標
ソフトバンクは、超デジタル化社会を支える次世代社会インフラの提供を目指しています。これには、RANの最適化やAIを活用した設備パフォーマンスの向上が含まれます。
また、消費電力の削減、さまざまな生成AIアプリケーションの実装、リソースの共有のためのデータセンターの相互接続の実現も目標としています。
ソフトバンクは、自動運転、AI、拡張現実と仮想現実、コンピュータービジョン、デジタルツインなどの5G/6Gアプリケーションの実現を目指しており、NVIDIAとの協業により、生成AIをホストする通信ネットワークの構築を目指しています。
まとめ
AIの進化は、データセンターの世界にも大きな変革をもたらしています。
さくらインターネットとソフトバンクの事例からは、AIデータセンターがどのようにして先進技術を取り入れ、未来の社会を支えるためのインフラを構築しているかが明らかになりました。
これらの企業は、大規模な投資と技術革新を通じて、データセンターの運用を最適化し、エコフレンドリーな運用を目指しています。
また、AIデータセンターは、5G/6Gといった次世代の通信技術とも連携し、よりスマートで効率的なサービス提供が期待されています。
このような取り組みは、データセンター業界だけにとどまらず、私たちの生活やビジネスにおいても今後大きな変化をもたらすのではないでしょうか。