米国の超党派の上院議員グループが、クリエイターの権利を保護し、AIによるコンテンツ利用を規制する新しい法案(通称:COPIED Act)を提出しました。
この法案は、AIの発展と創作者の権利保護のバランスを取ろうとする試みとして注目を集めています。
法案の概要
法案のは正式名称:Content Origin Protection and Integrity from Edited and Deepfaked Media Act(通称:COPIED Act)で、以下の3つを法案の主な目的としています。
- クリエイターのコンテンツを無断でAIの学習に使用することを禁止
- AIが生成したコンテンツの識別を容易にする
- 有害なディープフェイク(AI技術で作られた偽の映像や音声)に対抗する
法案の主な内容
法案の内容をざっくりまとめると、以下のようになります。
- AIツール開発企業に対し、2年以内にコンテンツの出所情報を付加する機能の実装を義務付け
- 出所情報が付いたコンテンツは、クリエイターの許可なしにAIの学習やコンテンツ生成に使用不可
- クリエイターに自身の作品の保護と利用条件設定の権利を付与
- 無断使用や出所情報改ざんに対する訴訟権を付与
- 国立標準技術研究所(NIST)に対し、コンテンツの出所情報や電子透かしに関する基準作成を要求
この法案は、俳優組合(SAG-AFTRA)や全米音楽出版社協会、シアトル・タイムズ、ソングライター・ギルド・オブ・アメリカなど、多くのクリエイター団体から支持を得ているそうです。
法案提出の背景
COPIED Actの提出は、米国でAIに関する法規制の動きが活発化している中で行われました。
- テッド・クルーズ上院議員によるディープフェイクポルノ対策法案
- チャック・シューマー上院院内総務によるAI戦略「ロードマップ」の発表
- 各州でのAI関連法案の急増(2023年2月時点で407件、前年比6倍以上)
- ジョー・バイデン大統領によるAI安全基準に関する大統領令(2023年10月)※
※ちなみに、ドナルド・トランプ氏が大統領に再選した場合、この大統領令は廃止すると宣言しています。
今後の展望
AIの急速な発展に伴い、クリエイターの権利保護と技術革新のバランスをどう取るかが大きな課題となっています。COPIED Actは、この課題に対する一つの解決策を提示していますが、今後の議論や修正を経て、最終的にどのような形で法制化されるか注目されています。
この法案が成立すれば、AI開発企業やプラットフォーム事業者は新たな対応を迫られることになり、クリエイターとAI産業の関係に大きな変化をもたらす可能性があります。
なお、コンテンツとAIに関する法規制については、日本でも活発に議論されています。
現時点では”グレーゾーン”に該当する物が多いため、そのあたりを法律ではっきりさせていく動きは加速していくでしょう。