パナソニックホールディングス(HD)とPHP研究所は2024年11月27日、同社の創業者である松下幸之助氏(1894~1989年)の思考と声をAIで精巧に再現することに成功したと発表しました。
このAIシステムは、70歳代の松下幸之助氏の姿と声を再現し、質問に対して適切な回答を提供することができます。開発にあたっては、PHP研究所が保有する約3400万文字に及ぶテキストデータや音声記録を活用。さらに、東京大学・松尾研究室からスピンアウトした松尾研究所との協力により、高度な自然言語処理技術を実装しました。
11月27日に東京都内で開催された生誕130周年記念シンポジウムでは、このAIシステムのデモンストレーションが行われました。司会者からの質問に対し、AIは松下氏特有の話し方で「130歳という節目を迎えた今、改めて『人間道』を考え、よりよい未来を築くために、皆さんとともに歩んでいきたいと思うんであります」と応答。その精巧な再現性に、視聴した創業家の一人からは「こわいくらい似ている」との感想が寄せられました。
パナソニックHDは今後、このAIシステムを社内研修や経営理念の継承に活用していく方針です。特に、松下氏から直接指導を受けた人物の知見を追加学習させることで、「松下幸之助ならどう考えるのか」「どのような経営判断を行うのか」といった、より実践的な判断ができるAIシステムへと進化させていく計画です。
本プロジェクトを通じて得られた技術的知見は、同社の今後の製品開発にも活かされる予定です。創業者の思想をAIで継承・発展させる試みは、企業文化の継承における新しいアプローチとして注目されています。
このような取り組みは、歴史的な人物の知恵や経験を現代に活かす新しい可能性を示唆しており、今後の展開が期待されます。