Meta(旧 Facebook)が、英国のFacebookおよびInstagramユーザーの公開コンテンツを使用してAIシステムのトレーニングを行う計画を発表しました。この動きは、AI開発における個人データの利用に関する議論を再び活発化させています。
計画の概要
Metaは今後数カ月以内に、英国在住の18歳以上のユーザーがFacebookとInstagramで共有している公開コンテンツをAIトレーニングに利用し始めると述べています。対象となるのは、公開投稿、コメント、写真などです。
同社はこの計画について、「当社の生成 AI モデルが英国の文化、歴史、慣用句を反映し、英国の企業や機関が最新のテクノロジーを活用できるようになる」と説明しています。
ユーザーへの通知とオプトアウト
Metaは透明性を確保するため、以下の対応を行うとしています。
- 対象となるユーザーに対し、アプリ内で通知を送信
- AIトレーニングへのデータ利用を拒否するための異議申し立てフォームを提供
- すでに異議を唱えているユーザーのデータは使用しない
また、プライバシーを考慮し、以下のデータは使用しないことを明確にしています。
- 友人や家族とのプライベートなメッセージ
- 18歳未満のユーザーのアカウント情報
規制当局との連携
この計画は、英国情報コミッショナー事務局(ICO)との連携の結果として実現しました。MetaはICOのガイダンスに基づき、「正当な利益」の法的根拠を用いてこの取り組みを進めています。
ICOの規制リスク担当エグゼクティブディレクター、スティーブン・アーモンド氏は次のように述べています。
「生成AIモデルの訓練にユーザーの情報を利用する組織は、人々のデータがどのように利用されているかについて透明性を保つ必要があります。組織は、個人データをモデルのトレーニングに使用し始める前に、ユーザーが処理に異議を申し立てるための明確で簡単な方法を提供するなど、効果的な保護策を講じる必要があります。」
国際的な動向
MetaのAIトレーニングに関する取り組みは、各国・地域で異なる対応が取られています。
国・地域 | 状況 |
---|---|
英国 | 承認(今回の発表) |
ブラジル | 承認(最近同意) |
EU | 一時停止中(2024年6月時点) |
特にEUでは、デジタルサービス法(DSA)との整合性や個人データ利用の影響について、さらなる調査が行われています。
議論と懸念事項
この計画には、以下のような議論や懸念が挙げられています。
- プライバシーの問題:公開投稿であっても、AIトレーニングに使用されることを望まないユーザーもいる
- データの範囲:現在は公開データのみだが、将来的に拡大される可能性
- 規制とイノベーションのバランス:EUの規制に対するMetaの不満
- オプトアウト方式の妥当性:デフォルトで同意する仕組みへの批判
今後の展望
Meta の英国での AI トレーニング計画は、大手テクノロジー企業による個人データの利用とAI開発のバランスを探る試みの一つと言えます。今後、以下の点に注目が集まるでしょう。
- ユーザーの反応と異議申し立ての割合
- AI モデルの性能向上と英国文化の反映度
- 他の国・地域での同様の取り組みの展開
- プライバシー保護と技術革新のバランスに関する継続的な議論
Metaのこの動きは、AI技術の急速な発展と個人データ保護の必要性のバランスを取る上で、重要な先例となる可能性があります。各国の規制当局、プライバシー擁護団体、そして一般ユーザーの反応を注視する必要があるでしょう。